バックナンバー CD-ROM案内 MAIL HOMEへ

第226号 ふたつの“マイタケ”2007年9月7日



 ↑トンビマイタケ(手前)、マイタケ(奥右)、シャカシメジ(奥左)/9月1日/妙高にて。

 9月1日。
 妙高で近年姿を見せなかったマツタケが今年は出るかもしれない――と予想して、早朝の林道を疾走した。最後に採れたのが3年だか4年前だったか、それ以来まったくお目にかかっていない。早い年は8月末に発生したことがあったし、今年は雨もよく降っているし、もしかして・・・といった予想、というよりもそうあって欲しいといった希望的観測を持ったわけである。まだきのこも少ない時季だし、ほかにどうしてもというようなアテもないといったこの頃の事情もあった。
 その道中にあるブナの林道を疾走中にキジ撃ちがしたくなった。
 「そのへんでウロウロしてろ」 と私は車を停めた。
 「なん分だ?」 と相棒。
 「30分だな」 と答えた。
 「ひえー、30分! またかー、早くしろよな」
 「あいよ・・・」
 こんな按配でキジ撃ちに向かったのだが私のトイレは昔からひとがあきれるほど長い。さすがに野外ではもう少し短縮になるが普段の日常生活では30分は日課であった。そのヒマをつぶすためになにか読む本がいる。そんなヘンな読書も楽しみのうちになっている。
 この日は腹具合がゴトゴトして短縮できないと言っていた。普段ではないから読むべき本の用意もないが仕方がない。森のなかではそれもいいだろう――。
 こうして30分後、車にもどった。
 「おい、見ろよ」 戻っていた相棒が大きなアイスボックスのフタをあけて見せた。
 「おお、ナント・・・・・・。やっぱし、オレのキジ撃ちは偉大だろうが・・・」
 かなり肉厚のマイタケが大小で2株、なかなかにいい香りを放っているではないか。
 2.3年に1度くらいで発生するミズナラである。しかし、この日はそれはまったく念頭にもなかった。道からそう遠くないのでよくひとにとられるので半分あきらめている存在であった。これまでに大きくなったモノを採取できたのは1度しかない。あとは出たばかりの芽出しを確認して翌週行くとからっぽという状況にあった。まだ小さかろうに・・・あと1週間は置かないと・・・と思うのだが、それができないのが山のキビシサというものである。
 今年はずいぶん早く出たようで、見えないテキも予想もしなかったに違いない。そんな油断と私のキジ撃ちが重なった幸運であった。そういえば、過去の1度も、10年ほど前だったが、8月末だったなと思い出した(記録をみたら平成9年8月31日)。妙高ではじめて採取できた記念すべきマイタケであったのだ。
 こうして思いがけない想定外の成果をあげたのでガゼン元気がわいてきた。
 このところの低調な状況とは気持が一変した。マツタケ峰に向かう車のなかで気持はおおいに高揚していた。なんだかマツタケもっこりが見えるような気がした。
 が、そう甘いものではなく、マツタケの方はマの字も見当たらない。
 ところが、その付近でまたまた相棒がマイタケを見つけた。今度は肉薄の小株だが、これまでに毎年通っていたコースにあるミズナラなのに今年はじめて見たマイタケであったから少し驚いた。
 そのあとは先回に出ていなかったトンビマイタケに車を走らせた。
 そこは毎年発生するタイプだが枯れブナの根元まで日当たりがいい環境にあり、そのために菌糸の成長がいいので休む年がないのであろうと考えている。ここだけが唯一、周年性というものがない。それが先回出ていなかったが今回はあった。わりと大きくなっていて、これでは先回は芽くらいはあったろうが見逃したわけで、それでもその時点では早すぎるし、今回はまだ食用になるとはいうもののやや遅いタイミングだし、これも週末だけの定期便では仕方がないなと思った。
 そして、若いトンビマイタケと成菌マイタケを同日に採取できたことは今までになかったなと気がついた。やはり気候がなにかヘンなのであろか。

 翌日の日曜は市内の公園にちょっと行ってみた。
 この前はナラタケモドキがあったが、またなにかいい被写体がないかなと考え、前日にはあまりシャッターを押す機会がなかったためにまだ3分の2は余っているフィルムを使い切りたくて散策してみた。
 その点でデジカメはいいなと常々思うのだが、単純にいえば予算がないのが決定的なのだが、“絵としての味わい”といった方面でイマイチの感じがしているのとで、踏み切れないでいるのであった。
 前日の高原ではシラカバの葉が散りはじめていたが、ここではサクラの葉がちらほらと落ちはじめていた。緑の芝生のうえに美しく紅葉した葉がすこし舞い降りている。蒸し暑いが、そこだけ見るとまるで晩秋のようであった。
 ふと見るとソメイヨシノの樹上3メートルほどにすっきりとしたきのこが見えた(表紙の写真で今号のみ)。
 サクラそのものが幹も枝も葉も元気そうだし、きのこを出す状態にあるような「老後」といったおもむきがない。つまり、木もきのこも「若々しく美しい」のがなにより印象的であった。
 ハテ、なにきのこであろうかと考えをめぐらすと「ベニヒダタケ」がぴったしに思えた。遠くてヒダの色もはっきりしないし傘の色もわからないのだが全体の風合いからそう判断した。
 きのこの上、50センチほどで太枝が折れていた。裏側にまわってみるとそのあたりからきのこのある裏側あたりまで腐食しているのがわかった。むしろこっちの方に出るのが自然な感じだなと思ったが、腐食部にはなにも見えない。たった1本のきのこのようだった。
 表側にまわって撮影をすますと棒でつついて落としてみた。傘はあざやかな黄色でヒダは肉色、傘径で6センチほど、ベニヒダタケとしてはわりと大型であった。遠目でも判断が正しかったことがなんとなくうれしかった。細かなことはどんどん忘れて全体としては「もうろう」としたあいまいな感じになってきたが、少しはまだしっかりした部分もあったようだ。
 いっときは秋の気配もあったが、このところ蒸し暑さが復活してきた。公園は蝉しぐれがうるさく、ミンミンだのジージーだのの大合唱だがツクツクボーシが大半を占めているように聞こえた。暑いけれどもやはり夏の終りなんだなと思った。