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第227号 消えたカメラ 2007年9月14日



 ↑オオイチョウタケ/9月9日/妙高にて。

 ――アレーッ、カメラがないぞ! と気がついてはっとした。
 オオイチョウタケを前にしてバンド付きの三脚とショルダーバッグを肩から下ろした直後だった。
 「ポーチ」というのかな、ベルトで腰に締めて下腹に保持するバッグだけれど、それの止め具を外そうとして腰の後ろに手を回したが、その止め具が手に当らない。あれっと思って下腹をみるとポーチがない。
 もう下ろしたんだっけ、と思い直してあたりを見回した。立ったりすわったりして下腹とすでに下ろしてある荷物のあたりに何度も視線をはわせたが、どこにもない・・・。
 ハッとしてヒヤッときて血の気がひいたように感じてすわりこんだ。途中の林内で気がつかないうちにベルトでも外れて落としたんだ――! ある程度に大きいし重いものだし、ちょっと信じられないことだが、そうだったとしか考えられなかった。
 こりゃもう逆をたどって探すなんて、森藪のなかでは不可能だ! なんとも取り返しのつかないボケをやっちまったもんだと、するどく絶望的な気持になった。
 ・・・・だが、待てよ、最初から携帯して来なかったってことはないかな・・・そんなバカな、1時間くらいは歩いたけれど、それで保持してないことに気がつかないなんてあるわけないが・・・でも・・・その間に、シャッターチャンスは一度もなかったな。つまりカメラを取り出してないのは確かだ・・・ということは、もしかして、はじめから持ってこなかった・・・そうだといいんだか、そうであってくれ・・・。
 というようなことを必死にぐるぐる考えてようやく立ち上がった。朝のうちは快晴だった空がいつの間にかどんよりしてきていた。
 幸いだったのは、一回りしての戻り道だったことだ。車までは300メートルくらいのものだった。
 おおいなる不安とちょっとの期待。もしなかったらどうするか、来たコースを戻って探すべきか、しかし林内だから藪でムリだしなあ、時間もないし、でも買ったら高いしなあ買えないなあ・・・。そんなあれこれで頭をごっちゃにして、とぼとぼと歩いていった。
 車まで来た。おお、なんとなんと、四角いガラス窓のむこうに、バッグがちゃんとそこに、いつもの席にすました顔で鎮座している。ヤッターあ、ウレシ〜。一瞬で頭のなかは晴れ晴れの青空になった。
 うれしかったけれども、同時に自分のアホさ加減が心配にもなってきた。まったく気がつかないで1時間も歩いていたわけで、もしかしてこれが「モウロク」というか「ボケ」というイヤなものの徴候か、と。
 しかし、以前にも同じような出来事があったことを思いだして強引に安心回路に逃げ込んだ。
 柏崎市の在にある雪の雑木林を下りるときに肩からつるした三脚がいつの間にか脱落していたことだった。右にはバッグで左には三脚というバランスだったのでそれが崩れればじきにわかりそうなものだったのに。そのときはもう登り返すのがいやであきらめたのであったが。
 あのとき、5年前だったか、あれと今とおなじようだから、まあいいか・・・。
 足どりもかるく引き返した。周回コースのいちばん遠い地点でなくてよかったなとつくづく思った。
 ほっとして撮影後に周囲を探すと上の写真のような小群れが2つ見つかった。そんなして草をかき分けていたら鼻がムズムズイガイガしてきた。持病のアレ鼻症状がでて猛烈なクシャミの連発で困ったが野山ではあたりかまわず噴射できるのが痛快ではある。辛くもあるが。不思議なものでつつーっと鼻水が連続で出てくるのに鼻の奥が乾いてカサカサガラガラしているのだ。
 相棒にはそんな体質はなさそうなのが面白くないので、はやく同じ 『新潟アレ鼻レックス』 のメンバーになれと言っているのだが。

 その間に、相棒は別コースをたどっていた。
 先回にマイタケをゲットしたものだから今回はすっかりその気になっていた。私はまだ早い、あってもまだ芽だよといって別行動になった。そのルートは登りがきつかった。まだいつもの体力が戻っていない私にとってはその登りがムリのようでもあったので敬遠したのであった。
 やがて合流すると相棒は憮然とした表情で車にいた。すこしのブナハリタケとハンノキイグチがあった。労多くして「くたびれ儲け」になったも同然のようなかなしい収穫であった。お前の方もなにもないだろうといった顔つきだったので
 「へっへっへ、ホラッ」 とすこし膨らんだ袋をつき出してみせた。
 「なんだ?」
 「ホラホラッ」 とさらにじらせて袋をぶらぶらさせた。
 「なにい、ゴミだろ?」
 「へっへっへ、オオイチョウだよ」 袋をあけて見せた。
 「おお、そんなもんがあったのか」
 相棒よりははるかにラクなコースで美味なきのこが採取できた。おかしなアクシデントはあったけれども。高原のせいかオオイチョウタケは大きくなっても茎はコチコチとしてしっかりと固かった。平野部だと昼間は気温が上がるためか茎の中は虫食い跡だらけになってフカフカになるのが多い。
 平野部では杉か竹の林でしか見たことがないが妙高では草地ばかりである。妙高には竹はないが杉はたくさんあるのに。もっとも、杉林にはめったに入らないからわからないでいるかもしれない、と思った。