![]() ↑巨大シャカシメジ/10月8日/秋山郷にて。 ザルの直径40センチ。標準サイズ物が左に1株。 10月7日は笹ヶ峰にある環境省の施設(笹ヶ峰ビジターセンターの2階)で相棒と 「きのこ講習会」 の講師をした。4年前からだが去年までは妙高市の主催で今回からは 「妙高高原ビジターセンター」 と 「環境省妙高高原自然保護管事務所」 の共催になった。 ふたりとも “講師” といえるような気のきいた話しがきちんとできる柄ではないが、これだけ妙高地域で活動していれば自然のなりゆきというものかなとは思う。 去年までは 「きのこ鑑定」 だけだったが今年からは 「見る食う会」 のようなものにした。 鑑定のあとに私のスライドと相棒のビデオの映写に 「きのこ汁」 と 「きのこの粕漬け」 と 「きのこのピクルス」 付きという豪華版!?である。わしらが採り貯めしたきのこを相棒が調理したもので市販の空調促成栽培きのこではない。 それらは恐ろしくテマヒマがかかっているのだがそんな価値を分かって評価してくれるひとはまずいない。かつては柏崎市でもやったがどこでも同じなのは経験済みだ。それでもやるのだ――、という相棒の性癖と執念にはわしでもあきれて、アンタはエライ! イイヒトだ、とよく揶揄する。 鑑定の方はずいぶんと力が落ちたなと自分でも思う。2.3年前までは当日の1週間ほど前から図鑑をながめて復習していたが、このごろではそれもさぼってしなくなった。喉もとでひっかかって出てこない名前がふえるばかりだ。 でもそれでもいいのだ。シロウト相手だから名前や特徴にはあまり関心がなくて 「食が毒か」 を興味面白半分で知りたいわけで、それを間違うほどにはボケていないと思っているからだ。激辛だとか苦いとかウマイとかマズイとか1本でシヌとか腹痛だ下痢だとか、そういった直截的実用的説明をヨロコブのだ。 事後に地元地域紙の取材を受けた。今年の不作は何故かという点が中心の話しになったが、それにはだいたいこう答えた。 ――今年は史上最悪の不作で、今回採取されたきのこの種類も量もすくなかったが不作の原因は7月末までの低温にあると考えている。通常は6.7.8.9月と4ヶ月間の高温期で菌糸の成長が促進されるが、今年の場合は8月9月に高温になっただけで通常の半分の期間になった。 菌糸の成長適温は20℃から30℃の間で25℃あたりが最適温度になっている。地温は気温より夏期は3℃程度低い(冬期は3℃高い)ので気温でいえば23℃から33℃あたりが望ましく28度あたりが最適温度になる。これよりも高いほど低いほど成長は緩慢になる。つまり28℃あたりになる時間がどれだけあるかが豊作不作の鍵になる。 かつて栽培に関する文献で得たおぼろな知識なんかを野生きのこにそのまま応用した個人的見解だが、なんだかうまい誘導尋問にのせられて自白するみたいにしゃべらされているような感じであった。さすがに記者だなと感心した。 翌日の8日は秋山郷に行ってみた。 2週間前に相棒がひとりで行って 「カラッカラに山が乾いててナーンモナイ」 という結果だった。あれから2週間たったからもしかして、という希望的見通しでコウタケ獲得をめざしたのであった。 山道をたどり、しかるべき森までくると一息いれた。子供みたいにじっとしていられない相棒はその間もちょこまかと動き回っている。そのうち 「おい! 来て見ろよ!」 と大声をはりあげた。 なんだね、などと言いながら行ってみるといちめんの朽ちた落ち葉の上に灰色をした大株きのこがどーんとすわっている。一見、たぶんまだ県内では発見されていないあの巨大なニオウシメジのような、それの子供のようなものが見えた。 「こりゃあシャカシメジだぁ」 「こんなにデッカクなるもんかぁ」 「あー、あー、カメラ持ってくるんだったぁー」 「あー、あー、あー、ビデオ持ってくるんだったぁー」 天気予報は前日から 「寒冷前線が通過するので大雨・雷に注意」 などと告げていたが、その通りに当日は早朝から雨の中のドライブになった。雨はずっと小降りで現地に着いてもそうだったが、山に入れば 「雨と雷」 がくるだろうと機材はいっさい持たずに登ったのだ。 雨合羽を着て水と食料入りのリュックだけという、滅多にない軽装の山入り。こんなのはちょっと思い出せないほどの以前にカメラが故障して修理に出して以来ではないか。 山登りが辛くて、よく 「手ブラで登ってみたい」 と思うのだが、勝手だからそうすればいいのだが、しかしそれができない性分だからしょうがない。 この日はそれが実現したわけだ。 「天気予報に脅迫されて武器を捨てた」 という丸腰の状態であった。 お陰でいやはや体が軽いのなんの。ずんずんと足が勝手に前に動く感じでカメからウサギになった気分だ。相棒にもそれほど遅れをとらずに登ることができた。 秋山郷は動物の多いところだ。クマ、カモシカのウンコや体臭が方々にある。イノシシのウンコと寝た跡もあった。そんな中をウマシカ2人組が徘徊していく。しかし、山は信じられないような不毛だ。落ち葉ばかりできのこがまれ。かつてはベニテングタケの大楽園だったのにベの字もない。かわりにム(無)の字があたりいちめんだ。 おお、やっぱし機材の不携帯は正解だったではないか――というヨロコブべきかカナシムべきかの入り乱れた心境であった。 そこへ、このシャカシメジである。いっきに 「後悔」 の嵐が吹き荒れた。 雨はいぜんとして降るや降らずやの問題ない雨模様なのだ。こんなリッパなシャカシメジが 「 どうだどうだ」 と威張っているお姿を、ブナやミズナラの木々を背景にして、撮らしていただくことができたのに・・・。 ――こんなわけで、山を下りてから写したのが上の写真である。 壊さないように土のう袋にきっちりといれてリュックに背負い大事に運んできた。出すときには袋の下を切ってそっと出した。それでも山でずんと立っていたときのようなボリューム感は半減したようだ。 目的だったコウタケは皆無だった。 |