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第236号 雑木林のはじまり 2007年11月16日


 
 ↑表紙の木登り場面(今号のみ)の数時間前の撮影。11月10日の妙高にて。
 この地点の向こう側にある尾根方面を一回りしてから戻ってきて登った。広範囲をクマのように徘徊したあとなので相棒はかなり疲れがたまったようでサルにはなれないと冗談本気半分づつで言っていたが、ほらほらとけしかけてようやくサル化した。
 又の部分のナメコをきれいに片付けてからそこまでよじ登り、さらに右幹の上の又下まで這い登ってすっかりと掃除した。
 なんとも野趣的かつゲージュツ的な木登りでいつ見ても面白い。かつては 「50のガキ」 などと呼ばれていたが (彼がまだ50すこし前のころで、私だけだがそう呼んでいたのだが) あれから7.8年もたつのに、いまだもってガキの心と身体を失っていない。
 もっと前になるが平成5年ころの晩秋に (そのころに雑木林でナメコ・ヒラタケを発見した)、はじめて彼の木登りを目の前にしたときには感動した。木登りが得意だとは聞いていたが、それは木の枝々をつたっていくのが巧みなのだろうくらいに想像していたからだ。
 いきなり両手両足で幹に抱きつくようにして力強くズンズンとよじ登っていく有り様にはたまげた。
 抱きつけないような太い木ならどうするか。もし近くに細い木があればそれに登って体重をかけてしなわせて太い木の上の方にある枝に取り付く。まるでサルそのものであった。
 
 予報は雨で早朝の市内はそれを予感させるような重い雲がたれこめていたが何故か妙高に接近していくほどに天気が回復していくのがいつものパターンなのでそれほどに心配はしていなかった。
 やがて、うす明るい頸城(くびき)平野の田んぼのなかの道路を疾走する。
 並走するように雁の群れが編隊をつくって飛んでいる。どこかの北の国からやってきたのだろう。小さな群れもあれば、それらがいくつも連合したような大きな群れもある。サオ(横一列)になりカギ(V字型)になり低い空をゆったりと飛行している。
 野鳥の群れはたいがいただの集団といった感じだが、雁の群れはそれ自体になにか意味ありげに見えるものだ。それはたぶん、カギになったりサオになったりすることからくるのだろうが、はっきりとした 「集団としての意思や感情」 のようなものを感じとることができる。野鳥としての社会性物語性美学性が語られている編隊飛行だ、と思うのであった。
 先回はキャンピングカーのネズミ男に羨望をおぼえたが今度は渡る雁であった。あんなふうに自由に空が飛べたらどんなに気持いいことか。どんな山も谷もスイスイとひとっ飛びだ。山歩きでいつもヒーハーやってるもので、ついそんなことを考えてしまう。
 さらに考えてみたら向こう (雁) の方がこっちをうらやましいと思って見ているのかもしれないと思った。ただ座ってたまにちょっと手足を動かすだけで高速で移動できるのだ、ということに気がついた。気がついてもしょうがないけど。

 田んぼのはるか先に見えるはずの妙高山あたりは低い雲に覆われていた。今日は向こうも雨かなとすこし心配になった。
 広い眺めであった。山並みがはるか遠くにある。わが住む街・柏崎平野では山がすぐにせまって見える。合併後全域が上越市になった頸城平野は県内第二の広さであった。それでも新潟市を中心とした越後平野のほぼ10分の1。柏崎平野はその頸城平野のまた10分の1程度。そのぶん海も山も大変に近いという利点があっていいのだ。
 若いころには港で釣りもしたし山できのことりもした。なのに何故かきのこオンリーになってきたわけだがどっちに行くにしても車で10分も走ればよかったのだ。今ではどっちを向いても 「山」 という妙高や、そのすぐ先にある長野県の環境をうらやましいと思うのであった。
 妙高の山が近づいてきた。
 先回まではさらに高度を上げていったが今回からはそれほど高い山ではない雑木林である。紅葉のいい時季であった。
 折りしも空いちめんをふさいでいた重い雲が少しづつちぎれてきたではないか。おお、やっぱし、わしらの行くところいつもこうなるのだ、とうれしくなった。高い高い青空がのぞき山肌にはやわらかい陽光が差してきた。あたりの風景がいっきに明るくなった。
 どーだどーだと言ってる(言ってないけど)全面的に赤や黄色の葉っぱだの、半分おわった葉っぱだの、まだ緑を残した葉っぱだのがさわさわごちゃごちゃと混じっている。そんな中に分け入ってみると、あるある、ヒラタケもナメコもムキタケもあるぞ。

 山のあちこちに山芋のツルが枯れて色づいている。
 そのムカゴが採りごろであった。うっかり触るところころと落ちる。そっとつかんだり落ちたのを拾ったりたまに口に運んだりして集めた。ネバネバヌルヌルで美味い。山芋は拍子木に切ってナマで食うのが好きだがムカゴのネバヌルはそれと同じ味がする。苦労して掘らなくてもいいから有難い。今度はビニール傘でも広げておいて叩き落として集めてみよう。
 帰宅してからナメコとムカゴのネバヌル連合でビールをのんだ。ムカゴが山ではあまり感じなかった土臭さがほのかにあった。