![]() ↑発生したトリュフの一部/10月25日/妙高にて。 この時点で26個あった(これまでに5個ほど採ったので総数は30個位)。右端にあるのがナラガシワの落葉で長さ19センチ。その左下にあるのがナラガシワのどんぐりでやはりナラとカシワの合の子ふう。 そろそろトリュフが熟成してきたかなとまた前回のお宅を訪ねてみた。 見たところ、あまりサイズは変わっていないようだが、指で押してみると大きなものはすこし弾力が出てきた。はじめはこちこちで固い石のようであったのだ。ナイフで切ってみると霜降り模様の白の部分が減ってきて全体に黒が多くなってきている。丸のままではただ土臭いだけ(付着している土の匂い)であるが切った断面はきのこ臭がする。前回はきのこらしくない複雑な臭いがあったが今回は単純にきのこ臭いだけになっていた。 前回でオークをカシの木と訳すのは誤りであろうと書いたが、昔買った本を最近また読んでみたら次のような文があった。 ――「トリュフは落葉樹、とくにカシの木の下の水はけのいい土壌を好むようです」 カシの木は常緑樹だから明らかに矛盾した記述になっている。やはりナラかカシワと訳すのが正しいのであろうということの傍証になる事例になると思った。かつてはなんとなく読んでいたから気がつかずに見逃したが、今回の体験のあとでは見方がするどくなったような気がする。 トリュフに関して、これまでに本で得た知識はだいたい次のようである。 @カシの木(実はナラまたはカシワ)の樹下の地中にある。 A豚か犬にかぎ当てさせる。豚は本能で犬は訓練による。 B地上をハエが群がって飛んでいるので、それが目印になることもある。 C西洋人には芳香だが日本人には悪臭・異臭である。 Dマツタケは日本人には芳香だが西洋人には悪臭・異臭である。 E卵やバターや生パスタなどに芳香が移る。 F芳香がいのちで味はとくにない。香りが他の食材の風味を引きたてる。 Gフランスは黒トリュフ、イタリアは白トリュフの産地で各々こっちが一番だと言っている。 H缶詰や瓶詰などの保存品は香りがぐっと落ちる。 このほかに、10年ほど前にテレビで北イタリアでのトリュフ採りドキュメント番組を見たことがある。 主人公は会社をひと月だか休んで仲間と山小屋に泊まりこむというほどの極めつきの道楽らしく、見ていてうらやましかったのなんの。 採ったトリュフを薄くスライスして茹で上がったパスタにふりかけるのだが、顔をよせてその臭いを嗅ぐさまは 「猫にまたたび」 を連想させるような、まさにうっとり酩酊の表情であったのが忘れられない。 なにせ世界三大珍味のひとつという大層な物だからずっと興味関心があったが、これまでに実物を見たことも、もちろん食べたこともない。ここでやっと、厳密には西洋の本場物とは別種とはいいながらも、ご対面がかなったわけで、なんとなく一区切りがついたような気分がしている。 前号のあと、トリュフに関して以下のような情報が得られた。 @本品は欧州で好まれる本場のトリュフとは別種。 A本場トリュフは「はいた靴下の臭い」プラス「複雑で表現のできない臭い」がある。 B夏トリュフと冬トリュフがあって本品は夏トリュフのようだ。 C冬トリュフの方が食用として上質で高価である。 D本場トリュフは60万円/キロ位である(国産マツタケは4〜7万円/キロ)。 E調理の際にまだ未熟の、あるいは別種の安物トリュフを用いて 「トリュフオイル」 で香りを誤魔化すこと があるらしい。「マツタケの吸物」 みたいだ。 F未熟な物は容器に密封して冷蔵庫で保存しておくと熟成する(現在テスト中)。 最初のBのハエの件は、考えてみるとハエは腐臭とか糞臭にたかるもので、スッポンタケがそのいい例で 「トリュフは悪臭」 という状況証拠になるわけであった。この点もかつては気がつかなかったわけで、今回の体験のたまものといえる。 昔 「すっぱい葡萄の論理」 というのを聞いたことがある。 葡萄がなっていて欲しくてたまらないのだが位置が高くてどうしても採ることができない。そのときに 「どうせ、ひどくすっぱい葡萄だからいいんだ」 と欲望をすりかえて納得する心理をいっている。人生にはそんな場面も多々ある。 本場のトリュフはまさに 「高嶺の花」 である。これから先、自分の口に入ることはまずありそうもない。 そこで、こう言う。 「どうせ臭いものだから、いいんだ――」 |