問題解決学習とは
 
第1節 問題解決学習と学習過程
問題解決学習とは、古くはデューイによって提唱された生活経験主義教育論の中核をなす学習原理である。そこでは,学習は,子供たちが生活のなかで直面する具体的な問題にどう対処していくかという,問題解決行為そのものとしてとらえられる。教師が,生活の現実から離れた教室のなかで,講義を中心にして一方的に子供たちに一定の観念的な知識を伝達していくといった伝統的な授業形態とはまったく異なる革新的なものであった。子供たちが,自分の興味や関心に応じてのびのびと作業や討議を行いながら問題を解決し,そのなかで自主的に生活に必要な知識や技能を習得していくという形で,実践的な生活主体の形成をめざすこの学習理論であった。
 
問題解決の過程は、デューイは1910年著書「思考の方法」の中(表3-1-1)で5段階に分析している。
 
表3-1-1 問題解決の過程
・問題に気づく
・問題を明らかにする
・仮説(解き方)を提案する
・仮説の意味を推論する
・仮説を検討する
 
 
【参考文献】
1910「思考の方法」Dewey,john 植田清次訳
日本デューイ学会編「デューイ来日五十周年記念論文集デューイ研究」玉川大学出版部1969
 
また、ブランスフォード(johnD.Bransford)ら(1984)は、問題解決の認知過程を(表3-1-2)以下のように5段階に分けている。
 
 表3-1-2問題解決の認知過程
・問題を見分ける
・問題を定義し、表現する
・可能な方略を探究する
・方略に基づいて行動する
・振り返り、自分の活動の効果を評価する
 
【参考文献】
1994「あたまの使い方がわかる本」HBJ出版局 ブランスフォードら
 
第2節 中学校の学習指導要領と問題解決学習
平成14年度実施の新指導要領の改訂により、「生きる力」を重視した学習指導が進められている。その目玉として登場した「総合的な学習」では、以下のねらい(表3-2-1)を定めている。
 
 (表3-2-1)総合的な学習のねらい
・自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を
 解決する資質や能力を育てること。
・学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的
 に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること。
 
 
また、教科では以下のように配慮事項(表3-2-2)として、以下を定めている。
 
  表3-2-2  教科での配慮事項
・各教科の指導に当たっては、体験的な学習や問題解決的な学習を重視するととも
 に、生徒の興味関心を生かし、自主的、自発的な学習が促されるよう工夫すること。
・各教科の指導にあたっては、生徒がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報
 手段を積極的に活用できるようにするための学習活動の充実につとめるとともに、視
 聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。
 
 
「生きる力」を文部科学省は、審議委員会の答申で「自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力」、「自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心」としている。問題解決学習はこれまでの学習指導要領の中でも常に重視されてきたが、今回の学習指導要領であらためて強調されている。
 
第3節 問題解決学習と情報教育
 
情報教育は、カリキュラムについて2通りの実施方法がある。一つは情報教育のための教科を設定して、その内容を展開するもの。もう一つは学習目標や活動のリストと評価の観点だけを明確にして、それぞれの教科の時間などに展開できるようにしたもの、いわゆるクロスカリキュラムがある。
 
第15期の中央教育審議会の中間答申(1997,7)では、情報教育の体系的な実施という節を設け、小中高一貫の情報教育カリキュラムを実施できるよう教育課程を検討し直すよう提言した。これを受け文部省(当時)は「情報化の進展にともなう初等中等教育における情報教育の在り方に関する調査協力者会議」を組織し情報教育の明確化を図った。結果、情報教育の目標は3つの能力(情報活用能力、情報の科学的理解、情報社会に参画する態度)を小中高一貫でバランスよく育成することと規定された。
 
情報活用能力では、課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて、必要な情報を主体的に収集、判断、表現、処理、創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力を育成することを目標としている。これは問題解決学習の認知過程そのままと言っても良いものであり、問題解決学習は情報教育の一部であり、その一部も大変重要な部分であると言える。
 
答申を受け、新しい学習指導要領(平成14年実施)では、中学の技術・家庭科で【情報とコンピュータ】という領域が設定され、高等学校では教科「情報」が新設、選択必修化された。
 
中学校の技術・家庭科の情報とコンピュータの内容は、かつての学習分野である「情報基礎」の流れを受け継いでいることもあり、コンピュータリテラシーや情報の科学的理解の分野に重きを置いているが、情報通信ネットワークの指導の中で、情報を収集、判断、処理し、発信できることと内容を定めている。これは問題解決学習の認知過程であり、情報教育を意識したものと言える。
 
高等学校で始まった教科としての「情報」は、内容を見ると「コンピュータの授業」ではなく、問題解決学習の意味合いが大変強い。今田(2001)は著書の中で、以下のように述べている。
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教科「情報」は,コンピュータやソフトウェアの基本的な操作スキルを習得することだけが目的ではありません。情報機器操作の基本的なスキルの習得とともに,情報の科学的理解と情報社会に参画する態度を正しく身に付けさせることも求められています。生徒に「情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度」を,実習を通してバランスよく身に付けさせることが目標とされています。
 
さて,教科「情報」は,他教科と違い親学問というものがあまりはっきりしません。一応,「情報学」ということになるのでしょうが,先進的な実践事例等を拝見しますと,これはまさに「問題解決学」(?)かと思えるような状況です。それは社会が今日的な課題に対応できる情報活用能力を求めているだけでなく,学校現場においてもその価値を認めているということだと考えられます。特に問題解決能力は,生徒が卒業してから大切な能力として大きなビジョンのもとに取り組まれる場合が多いようです
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【参考文献】
・高等学校学習指導要領解説 情報編 平成12年3月 文部科学省
・今田晃一:Webページ版ポートフォリオ評価・自己成長記録の実践〜メタ認知育成をめざした総合学習の評価を求めて〜,「生きる力」を育むポートフォリオ評価,村川雅弘編著,pp233〜244,ぎょうせい,2001,3
 
第4節 問題解決学習と課題研究
課題研究は高等学校では職業教育を主とする学科(農業、工業、商業、水産、家庭、情報)において行われている。この学習は多くの場合次のような過程をたどる自主的学習をとる。
(1)課題設定(テーマの設定)
(2)研究の目的の明確化
(3)理論の研究
(4)研究方法の立案
(5)研究方法の実践
(6)研究結果の整理
(7)考察
(8)課題の整理
(9)研究発表
 
 
また、中学理科では課題研究が学習の工夫として明記されている。中学での総合的な学習においても、学習者が自ら課題を設定し解決をしていくことを求め、そのプロセスは、上記の高等学校の過程をたどることになり、問題解決学習の最終的な姿として、課題研究をとらえることができ、中学においても課題研究が今後ますます重要になってくるとこは安易に予想できる。
 
【参考文献】
高等学校指導要領 文部科学省
 
 
 
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