TOE小説
「セイファート高校」第40話
〜特別授業〜
『本日、特別授業により平常授業無し』
あさ、いつものように教室のドアをくぐったリッドたちが目にしたのは、そんな板書だった。
「特別授業だって・・・?」
「なんだろうね。」
「大方、ろくでもない授業になるんだろ?かったりぃ。」
と、リッドが朝からふて腐れかけた瞬間。
「じゃあリッド、貴方だけは特別に私とマンツーマンで授業をする?」
その声に凍りつくリッド。背後に、セルシウスが腕組みをして立っていたのだ。
「せ、先生、おはようございます!いやぁ特別授業、楽しみだなぁ!な、な!?」
冷や汗だらだら。セルシウスは溜息一つついて、教室に入る。
「この特別授業なんだけど・・・担当の先生が直接説明するわ。体育館へ集合して。」
「皆、おはよう。朝から急ですまぬな。」
全校生徒が揃っている体育館。壇の上には、レム先生。
「さっそく本題に移ろう。2年、3年は知っているじゃろうが、この学校には年に一度だけ現れる教師がいる。」
事情を知らない1年生と元ラディスロウ校生徒が、どよめく。
「その教師の名はリシテア。フォッグ先生の妻じゃ。残念ながら彼は出張で今日はおらぬが・・・。」
どよめきが大きくなる。
「では、これよりリシテア先生に授業について解説してもらう。先生、宜しくお願いします。」
そう言ってレムは壇を降りる。入れ替わりで登ってきたのは、鮮やかな黄緑色の服を身につけた女性。
エラーラが付いているため、セレスティアンであることが解る。
「ご紹介いただいたリシテアです。今フォッグとは別居中で、旅をしながら絵を描く悠々自適な生活を・・・。」
身の上をいきなり話し出したリシテアに対し、生徒たちは反応に困る。とりあえず生温かい笑みで答えるしかない。
「・・・ごめんなさい。特別授業の内容だけど、それは美術。これから皆さんには、風景画を描いてもらいます。
この集会の後に、一人一人に画材道具とスケッチブックを配布するから、学校を出て、好きな所で好きな風景を描いて下さい。」
一度は静かになった生徒たちだが、リシテアの言葉に再びどよめく。
「風景といっても色々よ。ラシュアンののどかな田舎の風景、逆にティンシアのような街中の風景・・・。
もちろん、海や川とか、草原とかでも。なんなら、この校内の何処かの風景を書いたっていいわよ?」
どこから取り出したのか、筆を指で回しながら語るリシテア。
「そうね、タイムリミットは・・・日没まで。それまでに最低一枚は完成させて。
生徒が主に行きそうな所には、予め先生方に待機していてもらうことにしてあるから、その先生に提出してくれればいいわ。
もちろん、描ける人は何枚描いてくれたってOK。私は各場所を転々とするわ。・・・みんなの力作、期待してるわよ。」
「ではこの後、一旦教室に戻るように。各自の机の上に、道具が置いてあるはずじゃ。それを持ち次第、好きな所へ行くがいい!」
生徒たちは、早速各々の教室へと戻る。
「絵か・・・。んなもん、描いた事ねぇぞ。」
「私もあんまりないなぁ・・・でも、何とかなるよ!イケるイケる!」
「どうだろうな・・・大体育会、でない分マシではあるが・・・。」
悩む(ファラ除く)ラシュアン3人組。そこに、後ろからメルディとコリーナが話し掛けてきた。
「みんな、どこ行くか?」
「私たち、2人でメルディさんが住んでる街アイメンの絵を書くことにしたですよ。」
「アイメンか・・・確かに綺麗な街だ。・・・僕もそこにして構わないか?」
「もちろんな!キールがいっしょ♪リッドとファラはどうするか?」
顔を見合わせるリッドとファラ。
「ラシュアンにしようかな〜って思ってたんだけど、アイメンもいいなぁ・・・。」
「・・・ファラ、俺はアイメンに行くぜ。」
「どうして?」
「考えても見ろ。ラシュアンで俺たちが絵なんて描いてる所を見られたら・・・笑い者にされかねないぞ。特にあの村長に。」
ラシュアンの村長カムラン。過去の悲喜劇以降、リッドたちとは折り合いが悪い。
「確かにそうかも・・・。じゃあ、私もアイメンにしよう!」
「ワイール!みんないっしょだな!」
一方。
「今年はどこがいいかな・・・。」
「去年は、確かシャンバールに行ったんでしたよね。」
クレスとミントだ。その後ろには、チェスターとアーチェ。
「もうあそこは嫌だよ?すんごく暑かったじゃん?」
「俺も嫌だぜ・・・日射病で倒れそうになったんだ・・・。」
去年を思い出しているのか、非常に萎えている2人。
「2人とも、それじゃ氷晶霊の山がいいかい?」
「クレスぅ・・・。」
「冗談だよ。じゃあ今年は・・・ミント、どこがいい?」
「そうですね、綺麗で静かな場所が・・・そうだ、水晶霊の河、なんてどうです?」
そのまた一方。
「風景画か・・・。下らん、校内で適当に描いて終わらせる。」
言わずとも解るだろう、リオンだ。だが、その後ろからスタンがやってくる。
「リ〜オン?」
「スタンか・・・何の用だ。」
「俺たち、レグルスの丘って所に行くことにしたんだ。リオンも来ないか?」
「断る。」
スタンの誘いを無下に断るリオン。だがしかし、その背後から歩み出たルーティの一言で動きが止まる。
「マリアンさんも行くって言ってたわよ?」
「なに!?」
マリアン。リオンの家(大豪邸)のメイドさんである。彼は、自分の技にその名前を付けるほど彼女が好きだった。
「・・・いいだろう、一緒に行ってやる。」
『やれやれ。マリアンさんの名前が出ると形無しですね。』
「・・・五月蝿い。」
更にまた一方では。
「今年はどこに行くか・・・。」
腕組みしながら考える、生徒会長マローネ。
「会長、去年は確か氷晶霊の山だったね?」
「あぁ。一昨年は火晶霊の谷に行ったな。」
レイスの呼びかけに答えるマローネ。・・・過去2年、過酷な場所ばかりである。
「今年はできれば静かな場所が好ましいのだが・・・よし、闇の洞窟だ。」
「海中かい・・・?今年もまた面倒な所だね。」
「そう言うお前はどうだ。場所は決めたのか?」
「あぁ、私はロエンとファロース山に行くよ。絵を描くついでに、いいツボを探してくる。」
レイスの喋りからは、明らかにツボの方がメインであると聞いて取れた。
「意外だ・・・ちゃんとした画材道具が用意されている。」
教室に戻ったキールが、机の上の道具一式を見て驚く。
下書き用の鉛筆に始まり、水彩絵の具に油絵の具、マーカーに色鉛筆と、写生にしては過剰なまでの道具があったのだ。
「皆に予め言っておくけど、それは全部リシテア先生の私物よ。本人は好きにして良いって仰ってたけど、なるべく壊さないようにね。」
セルシウスが言う。・・・なるべく、か?
むしろ、全て私物・・・総額何ガルドだろうか。
「じゃ、アイメンに行くな!絵を描くにいい場所、皆でさがそな!」
こうして、リッドたちを初めとする生徒たちは、エターニアへと散っていった。
続きます。
・・・物凄く久しぶりに書きました・・・。
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