第27話


「・・・う・・・。」

ライが目を覚ましたところは、『果て』の近くだった。

「目が醒めたのか。」
「・・・コウ。みんなは・・・。」

無言でコウは後ろを指差した。
フィーナ、クルク、シフリア。3人とも気を失っている。

「・・・一体、何があった?何故俺たちは、生きたままここにいる?」

コウがライに訊ねる。
ライの表情が、やや複雑になった。

「・・・それは・・・。」
「その口調からして、エレメントと何かあったんだな。」

コウの言葉は鋭い。

「・・・あとで話すさ。」




















十分ほどの後に、3人は目覚めた。

「・・・みんな、大丈夫か?」

ライの声に、ぼんやりとしていた意識もはっきりしたようだ。

「ライ・・・ここって『果て』だよね。どうして、私たちはここにいるの?」
「そうですね・・・エレメントに殺されたのではなかったのですか・・・?」

女性2人が疑問を投げかける。

「・・・近くの村へ戻ろう。その帰り道にでも話すよ。」



ライはその言葉通り、歩いてる途中で話し始めた・・・。

















あの後、エレメントは、僕に雷を放てと言った。

当然、そんな事をすれば弱っていたエレメントは消滅してしまう。それが嫌だったんだ。

「どうしてだ?エレメントはライの命を狙っていたのに・・・。」

まぁ、話を聞いてくれ。

そのときは、放っておいてもエレメントは消滅しそうだった。

そこで僕は一つ思い当たった策を試したんだ・・・苦肉の策ではあったんだけど。

「策?」

そうさ。僕の雷をエレメントに放って、エレメントを救う・・・という策。

「・・・矛盾してない?エレメントは雷を放って、自らを消滅させろ・・・っていったんでしょ?」

そう。エレメントはそこまで弱っていたんだ。ただ、浴びせた雷が「攻撃」ではない雷だったら・・・どうなる?

そのとき僕の放った魔技・・・ライトニングレイは、剣に雷を集めて一閃するものだ。

僕はそのときに集めた雷には・・・出来る限り「攻撃性」をなくすようにしたんだ。

「それで魔技を放って・・・どうなったんですか?」

どうにかエレメントは消滅せずに済んだ。そして・・・今はエレメントは、その身に雷を宿しているはずだ。

「雷を宿した・・・!?ライの魔技がエレメントに新たな力を与えたとでも言うのか!?」

そのとき、僕にはこの程度の方法しか思い浮かばなかった。

しかも、こんなのが成功する確率は凄まじく低いはずなんだ・・・運が良かったとしか言えないさ。

これでよかったのかどうかはは解らないけど・・・。

「でも、どうしてエレメントを助けようと思ったんですか?」





エレメントの魔技を受けてから、意識を取り戻すまで結構な時間だったはずだ。

どうして僕達を殺さなかったと思う?

エレメントは殺さなかったんじゃない・・・殺せなかったんだ。

「・・・どういうことだ?」

意識が戻ったとき、エレメントはどうしていたと思う?・・・泣いていたんだ。

「・・・泣いて、いた?」

そうさ。理由は、『人間を殺せるわけがない』。

でも、『雷』のエレメントが人間に仇をなすとエレメントは考えていたんだ。

人間である僕にそれが宿った以上、消滅させるには僕を殺すしかなかった。

殺さなければいけない。でも、殺せるわけはない・・・。

「エレメントが、人間を殺せない理由はあるのか?」

・・・この世界を作ったのは、他ならぬエレメントなんだ。

この辺に生えている草や木、動物・・・もちろん、人間だって例外じゃない。

「そうなのか?」

まぁ、「元」を作ったってことさ。

エレメントは、自らの創造物の行く末を見守っていた。・・・子供を見守る心境でね・・・。




















「戦闘の始めのうちは、それでも感情を殺して僕を殺そうとしたけど・・・みんなが来て、決意は揺らいだんだろうね。」

ライが、口を閉ざした。その場に沈黙が流れる。

「・・・でも・・・『雷』をその身に取り込んだということは、エレメントは雷は自分の子供にとって仇をなさないものだと解ったからだよね・・・?」

「まぁ、そういうことになるけど。」
「・・・自分の責任で自分の子供を亡き者にしなければならないなんて・・・悲しいですよね・・・。」

再び沈黙が流れる。さほど長くは続かなかった。

「結局のところは・・・。」

ライが口を開く。






「エレメントという存在も、所詮は「母親」だった、ということだよ・・・。」






この後、会話らしい会話は一言もないまま、ライたちはたどり着いた町の宿へと入っていった。






















翌朝。ライたちは宿を出て、町の外へと出た。

「で・・・ライ。これからどうする気だ?」

コウがライに問う。

「お前の旅の目的は一応果たされたわけだ。・・・これで旅を終えて、村へ帰るのか?」
「そうすると、このパーティも解散だな・・・。」

コウの言葉に、クルクも続く。
フィーナとシフリアは、ライが話し始めるのを待っている。

「旅は・・・止めないよ。」

ライは、ゆっくりとそう言った。

「コウ、僕の旅の目的はまだ完全に果たされたわけじゃないんだ。
『自分の目的を見つける』・・・これが、そもそもの旅のきっかけだったんだ。」
「自分の目的・・・か。」

「そうさ。もっとも、目的自体は見つかったわけだから、今度は目的を達成させるための旅だけどな。」
「・・・何なの?その目的って?」

フィーナが興味津々と行った表情で訊ねる。

「今、エレメントは『雷』を含んだ7つが存在している。『雷』ももはや例外じゃない。
つまりだ・・・。これからは、普通に『雷』のエレメントを持った人間が生まれてくるはずなんだ。
僕は、『雷』のエレメントを持つ一人の人間として、これから何ができるかを探す・・・。これが目的さ。」



「なるほど・・・お前らしい言葉だな。だが、道のりはこれまで同様険しいものになるんじゃないのか?」

コウは苦笑しながらも、ライに尋ねる。

「なに、これでも結構楽しみにしてるんだ。旅って、なんか僕にあっているような気がするんだよ。」

僅かに間があいた後に、ライは再び、今度は真面目な口調で話し出した。

「コウが言うように、確かに旅路は険しいものになるかもしれない。だから、みんなに同行しろとは言わないんだけど・・・。」

ライが他の4人を見渡すが、誰一人として口を開かない。初めから同行すると決めていたようだ。

「野暮だったか・・・。」

苦笑するライ。



「いいだろ?俺はどうせ放浪の旅してたわけだしよ。」

「母さんと・・・父さんに、もっとたくさん話できるようにしたいですし。」

「自分で楽しみって行ってるのに、付いていかないわけないよ。」

「まぁ、村に戻って宿を継ぐよりは面白そうだしな・・・。」





「解ったよ。それじゃあまず・・・どこに行こうか?」











彼らの旅は終わらない。

この物語が終わったとしても。






THE END

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