第40話「vsベリアル」
「喰らえっ!」
樹が、爆雷の角笛を吹く。特殊な甲冑を纏ったラヴァーが1体、カードに戻った。
「ストーン・バジリスク、そっちには『ブライアー・ピット』!」
その付近でラヴァー相手に暴れているストーン・バジリスク。勿論、樹が召喚した。
『おのれっ・・・!』
「・・・甘いな。」
こちらは、樹に攻撃を仕掛けようとしていたラヴァー。だが、その前にルインに蹴り飛ばされた。
「にゃろ・・・戦いずれぇ!」
「おいおい、へばるなよ!」
こちらは、背中合わせで戦っている炎とグラッド。
ラヴァーが相手では、炎が悪態をつくのも無理は無いだろう。
「ほら、炎、がんばんな!」
見かねたレーゼが、ストライキングを炎にかける。炎は水を得た魚のようにラヴァーへと突貫した。
「うらっ!」
『人間風情が・・・!』
ラヴァーは、迎撃しようと薙刀を構える。しかし、炎が早い。殴り飛ばされた。
「ハッ!」
更にその脇で、楓が大立ち回りを演じている。黄金の鎧と楯も身につけ、更に風スペルで自らを素早くしている。
『何だこの女!?』
ラヴァーの弓兵が、矢を放つ暇もなく楓の槍に弾き飛ばされる。
「スカイ・ワイバーン、『ホールド』!」
楓が叫ぶと、空中を旋回していたスカイ・ワイバーンが風の縄を放ち、ラヴァーたちを縛り上げた。
『ハッ・・・やるな、コイツら・・・俺も参加するぜ!喰らいな、『ファイアボール』!」
ニヤニヤしながら戦いを見ていたベリアルだが、ファイアボールでいきなり乱入してきた。
「・・・まずい!防御しろ!」
ルインが大声で叫ぶ。だが、心配は杞憂だった。
樹とレーゼが自分にサンド・カーテン、その他の4人は十分耐えられるからだ。
「・・・お返しだ!ストーン・バジリスク、あいつを吹っ飛ばせ!」
樹が命令を下す。それに応え、ストーン・バジリスクはラヴァーを振り切ってベリアルに突進する。
『たかが大蜥蜴が、俺に勝てるか!』
言いながらベリアルは、『ザーコイルの投げ矢』を放った。突撃するストーン・バジリスクにまっすぐ飛ぶ。
「ストーン・バジリスク、『エンデュランス』!」
更に樹がスペルを飛ばす。
「その程度で・・・俺は倒せねぇよ!」
ベリアルの気合。と同時に、手に持つ槍を掲げる。すると、その先端に先程のファイアボールとは比べ物にならない炎が収束した。
「・・・あれは・・・!」
『煉獄の大火で、焼け死ね!』
槍が振り下ろされ、炎が放たれる。その瞬間、ストーン・バジリスクが凶悪なまでに巨大な火柱に包まれた。
「ストーン・バジリスク!」
「『煉獄の大火』・・・!こんなに威力があるなんて・・・!」
やっと、炎が治まる。ストーン・バジリスクは既にカードであった。
『煉獄の大火』とは、炎の魔神であるベリアルの必殺技。能力は・・・今の通り。
『さぁ、次はどいつだ!?』
ニヤニヤ笑いながら、槍を構える。炎たちどころか、ラヴァーらまで動きが止まる。
『どうした!?怖気づいたのか!?ならこっちから攻めるぞ!』
ベリアルが、傍らに炎を纏った獣を呼び出し、それに跨る。
『行くぜ!』
「・・・上等だ!来てみろ!」
グラッドがレーヴァテインを構え、ベリアルを迎え撃つ。
『オラァッ!』
「うおおっ!」
ベリアルの槍と、グラッドのレーヴァテインがぶつかり合った。それだけで物凄い衝撃である。
「うあっ・・・!」
樹がたたらを踏む。
『ハッ!なかなかやるな!』
「チィ・・・なんて力だ・・!」
じわじわと、ベリアルが押す。グラッドはそれに抗えない。
「なら今のうちに『ウィンド・・・」
『やらせんぞ!』
ルインがウィンド・カッターを放とうとするも、ラヴァーたちが邪魔をする。
「やらせないのはこっちだよ!」
レーゼがそのラヴァーを跳ね除ける。だが、数が多い。
「ぐ・・・うっ・・・!」
グラッドの声だ。更に押し込まれている。
『・・・ここまでだな!』
ベリアルの乗っている炎の獣が、大きく口を開けた。
『受けな!『レッド・インパクト』!』
獣の口から、真紅の衝撃波がグラッドを襲った。グラッドは声も無く、吹き飛ばされる。
「がッ・・・くそっ・・・悪い・・・後は任せるぜ・・・!」
グラッドは倒れ、カードへと戻った。
「グラッド!」
炎が走り寄り、カードを拾い上げる。
「おい、グラッド!」
『大丈夫だ・・・。しばらく戦えはしねぇだろうが・・・。』
炎はそれを聞き、無言でカードをしまう。そして、ベリアルに向き返った。
「ベリアル!絶対、お前を倒すぞ!」
『ガキが・・・!いいだろう、来てみろ!』
ベリアルの余裕たっぷりの声。それを聞き、炎は何で攻めるか考える。そこへ、ラヴァーの相手をしながら樹が下がってきた。
「炎、グラッドは!?」
「あいつは大丈夫だ!今度は・・・俺があいつをやる!」
「そんな!どうやって!?」
「・・・さぁ。」
炎は樹の焦った声を聞き、考えるのを止めた。
「そんな難しく考えんなよ。俺に任せとけ!」
その言葉を聞き、樹の焦りも消えていった。
「解った。じゃ・・・任せるからね!」
そう言って、樹は炎の身体に1枚のカードを押し付ける。すると、炎の身体が・・・巨大化し始めた。
「なな・・・樹!なにやったんだ!?」
「『ジャイアント・グロース』!僕らはラヴァーを押さえるから!」
樹はそう応えて、ラヴァーに向き直った。炎も、改めてベリアルを見据える。
「行くぜ、ベリアル!」
『でかいなら勝てると思っちゃねぇだろうな!』
炎が走り出した。ベリアルも、槍を構えなおす。
『武器も無しで俺に飛び掛ってくるのか!?』
「武器なら・・・あるぜっ!」
炎は叫び、イグナ爆裂筒をばらまいた。たちまち、爆発が起こる。
『こいつっ・・・せこい手を・・・!』
腕で爆炎を払いながらベリアルがうめく。実はベリアルには火炎耐性は無いのだ。
「うおらぁっ!」
爆炎の中から、炎が飛び出て殴りかかった。
『へっ、甘ぇ!』
だが、ベリアルもその攻撃に冷静に対処する。攻撃を避けた。
『ハッハァ!残念だったな!』
攻撃を避けられ、つんのめった炎に容赦なく拳を叩き込もうとするベリアル。だがその時、頭上から声が聞こえた。
「ベリアル!」
叫んだ主は、楓。スカイ・ワイバーンに乗って、突撃してくる。
「楓!?」
『ハッ、させるかよ!』
ベリアルは、槍を楓の方へと向ける。
「・・・しまった・・・煉獄の大火・・・!」
煉獄の大火が迸り、楓とスカイ・ワイバーンを包んだ。
「楓!」
『残念だったな!』
ベリアルが高笑いする。だがその瞬間に、炎の中から黄金の槍が空を裂いてベリアルに襲い掛かった。
『何っ!?』
その攻撃は、ベリアルにとって全くの予想外だった。それでも、自らの槍で飛来物を何とか弾く。
「・・・今だ・・・喰らえっ!」
黄金の槍を弾いて体勢を崩しているベリアルの頬に、渾身の一撃を叩き込む炎。さすがに効いたようだ。
『・・・この野郎!』
炎を見るベリアル。刹那、真空刃がベリアルと炎獣をまとめて断ち切っていた。
『なんだとっ・・・!』
ベリアルは、薄れる意識の中で自らを死に至らしめる一撃を放った主を探す。そしてその目は、空に向けられた。
『あの・・・小娘か・・・!』
その小娘は、今は地面に向かって落下している楓。
『お前ら・・・ありがとよ・・・久々に・・・熱くなれたぜ!』
ベリアルはそう最後に言い残し、カードに戻る。そのカードは瞬時にして燃え上がり、灰も残らなかった。
『ベリアル様・・・!』
それに追従するように、ラヴァーたちも消える。ベリアルに召喚されていたのだろうか。
「楓!」
「どうにか・・・ならないかしら・・・!」
一方、落ちてくる楓は、既に黄金の装備を纏っていない。どっちにしても、このままでは死ぬ。
「・・・!」
「『グラヴィトン』!」
重力操作のスペルが掛かる。楓の落下速度が、落ちた。
「間一髪・・・だったね!」
「樹!ありがとう、助かったわ・・・。」
楓が着地する所に、炎と樹が駆け寄る。既に炎は元の大きさである。
「何とか・・・勝てたわね・・・。」
「ルインと、レーゼはどうした?」
「カードだよ。2人とも、まさに獅子奮迅!それで疲れたって。それにしても・・・」
と、ここで樹が楓を見る。
「何で無事なのか・・・って顔ね、樹。」
「え?あ、うん・・・。煉獄の大火、直撃だったよね。」
「スカイ・ワイバーンが、咄嗟に私を振り落としたのよ。その瞬間に、凄い火柱。その上昇気流で、無重力を味わったわよ。」
「じゃあ、ワイバーンは・・・。」
「今はカード。命の恩人・・・恩竜、かしら?」
ふふ、と楓が笑う。
「よし、じゃあ帰るか!ファイア・ドラゴンに乗ってけ!」
と言うが早いか、炎はファイア・ドラゴンを呼び出した。
「じゃ、乗せてもらうわね。」
「あ・・・流駆と麻耶は?」
沈黙が流れた。
「・・・空から探しましょ。何処かで足止めされてるかもしれないし。」
「・・・静かになったと思ったら、何か飛んでいくな・・・。」
こちらは、ラヴァ・イフリートを倒した地点で待機している流駆。麻耶はまだ目覚めず、リュカが見ている。デクスはカードだ。
「流駆、何が飛んでいったのですか?」
「ちょっと待て・・・あぁ、ファイア・ドラゴンだ。炎たちかもな。」
そのファイア・ドラゴンが流駆たちの真上まで飛んできて、止まった。
「どうやら、当たりのようですね。」
だが、降りてきたのはファイア・ドラゴンではなく、フェアリーだった。
『流駆?』
「その声・・・楓か?どうして降りてこないんだ?ベリアルは倒したのか?」
『それが・・・』
ベリアル戦のことを話す。
「なるほど・・・。」
『そういうわけで私たちはファイア・ドラゴンに乗ってるのよ。流駆と麻耶は、悪いけど自力で帰ってきて。』
「・・・は?自力?」
『えぇ。ファイア・ドラゴンは3人で一杯なのよ。後、そのフェアリーも連れてきてね。じゃ。』
楓の言葉が終わると、ファイア・ドラゴンは飛び去り、フェアリーはカードに戻った。
「・・・あいつら・・・。」
憎憎しげに呟く流駆。丁度その時、麻耶の意識が戻った。
「・・・リュカ、さん・・・。」
「気付いた?・・・どうやら、傷はもういいようね。」
起き上がる麻耶。右手の火傷は、完治していた。
「流駆さん、ラヴァ・イフリートは・・・。」
「あ、気付いたのか?あいつらなら倒したぞ。ベリアルは炎たちがやったってよ。」
「そう、ですか・・・。」
麻耶が俯く。流駆が怪訝な顔をする。
「どうした?」
「流駆さん・・・私は、役に立ってますか?」
「え?」
「私は迷惑を掛けてるんじゃないんですか?大怪我して、ベリアルの所までいけませんでしたし・・・。」
俯いたまま話す麻耶。流駆は呆れ顔で応える。
「・・・いいこと教えてやろうか?」
「いいこと?」
「俺が今まで炎と楓にかけられた迷惑に比べれば、これは迷惑のうちに入らねぇよ。」
沈黙する麻耶。
「解ったら帰ろう。あいつら、俺たちのことおいていきやがった・・・。」
「あ、はい・・・。でも、どうやって?私はドラゴンみたいなユニットいませんよ・・・?」
「まぁ、俺もドラゴンはいないんだけど・・・。『ホルス』がいるからな。」
と、流駆がホルスを召喚した。
「日も傾いてるし、とっとと帰るぞ。あ、リュカはカードになってくれないか?」
「狭いものね。解ったわ。」
カードに戻るリュカ。そのまま、流駆のデックへと入り込む。
「乗ったか?じゃあ行くぞ。」
「はい。・・・流駆さん、ありがとうございます。」
ホルスが、飛び立っていった。