愚痴りながらも、少年は着替えが終わるとすぐに外へ出た。
この少年の名はリッド・ハーシェル。
彼は今日から、「私立セイファート高校」という学校の生徒となるのだ。
因みに外見は、赤い髪に木製のチョーカー、地味な色合いの服。
彼の住む村ラシュアンの名産品「ラシュアン染め」の服である。
「おはよう、リッド。いよいよ今日から学校だね!」
「・・・俺に勉強させて、何になるってんだよ・・・ったく。」
リッドが家から出てくると、彼に話し掛けてくる少女がいた。
先程、家の外から大声でリッドに叫びかけた少女だ。
彼女はファラ・エルステッドといった。リッドとは幼なじみである。
彼女もまた、セイファート高校の一員となるのだ。
外見は緑色の髪、首にリボンをつけていて、やはりラシュアン染めの衣服を身につけていた。
「ところで、キールは?」
「え?もう転送装置まで先に行っちゃったよ。」
「・・・あいつ、そんなに勉強したいのか?らしいといえばらしいけど・・・。」
リッドとファラは、町外れの転送装置へやってきた。
これを使えば、この世界―――エターニアのどこへでも一瞬で行くことができる。
・・・ほんとは大きな街だけだけど、許してください(爆)
「・・・で、セイファート高校ってどこにあるんだっけ?」
「・・・リッド、まさかセイファート高校の場所を知らないなんて言わないよね?」
「腹がふくらまねぇもんには興味ねぇんだよ!」
間抜けなやり取りである。
「・・・セイファート高校はオルバース界面にあるの。わかった?リッド。」
「わかったよ、早くしようぜ。いきなり遅刻なんて洒落になんねぇよ。」
ファラは呆れながらも、セイファート高校の座標を入力する。
2人がカプセルに包まれる。次にカプセルが空いたときには、そこには誰もいなかった。
「うひゃ、結構混んでるな〜。」
「席は自由みたいだけど・・・どこか座れないかな?」
入学式の会場である体育館に入った2人はあたりを見回す。
すると、どこかから2人を呼ぶ声が聞こえてきた。
「・・・リッド!・・・ファラ!・・・こっち来るがいいよ!・・・」
「!あの声は・・・!」
「メルディ、だな。」
2人は、声のした方向へと向かった。
「リッド!ファラ!」
「2人とも、やっと来たか。」
2人が声のもとにたどり着くと、そこには褐色の肌をした少女と青い髪の少年がいた。
「メルディ!それにキールも!」
ファラが声を上げる。
「・・・キール、どうして先に行ったんだよ。」
「寝坊したお前が悪いんだろ。」
先程からキールと呼ばれているこの少年、本名はキール・ツァイベルという。
リッド、ファラとは幼なじみである。
だが身に纏っているのはラシュアン染めの服ではなく、
ミンツという街にある大学の学生服だった。
「だいたいよ、お前はミンツ大学に行ったんじゃなかったのか?」
「・・・追い出されたんだよ・・・何故か・・・。」
ということで、ここに入学することになったらしい。
「メルディは嬉しいよ。みんなとおんなじ学校に通えるからな♪」
この褐色の肌の少女、名はメルディ。
額にはエラーラと呼ばれる発光レンズがついている。
彼女がセレスティア人である証拠だ。
だが、着ている服は何故かラシュアン染め。元々はファラの服であった。
リッドたちとは、ちょっとしたきっかけで仲間となった。
「え〜、皆さん、静粛に。これより、第X回セイファート高校入学式を行います。
まず始めに、校歌斉唱。全員、起立!」
ガタガタとうるさい音を立てて新入生達が立ち上がる。
校歌が流れ出すが、流石に完璧に歌える新入生はほとんどいない。
「歌えないんじゃダメだよう〜。」
と、メルディは言いつつも、足は音楽に合わせてステップを取っている。
因みに、決してアップテンポな曲であるわけではない。
「・・・リッド、歌えないんなら歌うな。うるさい・・・。」
「・・・悪かったなぁ。」
リッドはどうにかして歌おうとしていた。しかし、彼は歌は上手ではない。
「・・・リッド以外にも何か・・・変な声というか・・・音程が・・・。」
ファラが周りを見渡す。程なくして、声の元凶を見つけた。
歌っていたのは、茶色の髪の少女であった。
何故かリュートを背中に背負っている。
それから少しして、校歌斉唱が終わった。
「全員、着席。続いて、校長先生から祝辞を頂きます。マクスウェル校長、お願いします。」
司会の言葉を受けて、灰色の服を来た老人が壇上へ立った。
「え〜・・・新入生の皆さん・・・入学おめでとう・・・。」
何故か言葉が途切れ途切れだ。
「・・・はて・・・次は何を言うんじゃったかのう・・・?」
どうやら、老人特有の痴呆症、俗世間的に言えば、ボケているようだ。
「・・・マクスウェル校長、ありがとうございました。降壇してください。」
どうやら、なかったことにするようだ。
「続きまして、ゼクンドゥス教頭よりお言葉を頂きます。教頭、登壇してください。」
次に壇上に立ったのは、シンプルな服装の金髪の先生。若そうだ。
何か球状のものが彼の周りを回っているが・・・。
「私が教頭のゼグンドゥスだ。時間がもったいないので、これで終わりとする。」
教頭はそう言うと、さっさと降壇してしまった。
新入生達、唖然。
「・・・最後に、生活指導の先生からお話があります。レム先生、お願いします。」
今度壇上に上がってきたのは、どこか光り輝いて見える女性の先生だ。
よく見ると、背中から翼が生えている・・・。
「わらわが生活指導のレムじゃ。
生活指導とは言っても、この学校では、基本的に俗世間の常識は通用しない。
だから特に何か話す必要もない。まぁ強いて言うなら、酒と煙草は禁止じゃ。」
生徒達、動揺。
「これにて、始業式を終了します。この後、各クラスでホームルームがありますので、各教室へ向かってください。」
司会の声が響き、始業式が終わった。だが、すぐに動けるような新入生達はごく少数だった。
「・・・俺に平穏な暮らしはないのか・・・?」
「・・・やっぱりミンツ大学に戻りたい・・・。」
「大丈夫だって。イケる、イケる!」
「ワイール!おもしろそうだな〜。」
これからの学生生活を悲観する男2人と、楽観する女2人。
誰がなんと言おうと、この4人は今日からセイファート高校の一員となる・・・。