第11話


コウがパレスの入り口に差し掛かったとき、既に日は暮れていた。

「ライたち・・・どこだ・・・?」
「コウ!」

入り口に、スフィアが立っていた。

「スフィア!ライたちは?」
「宿よ・・・って、何その服・・・。血まみれじゃない。」

言われて、ようやくコウは自分の服が血に濡れている事に気づいた。

「これじゃまずいな・・・。」
「待ってて、フィーナ呼んでくるから。
あの子の水魔法で血を流しましょう。」

スフィアは、パレスへ消えた。
程なくして、フィーナを連れてスフィアが戻ってきた。

「ねぇ、どこに行ってたの?」

魔法を放ちながら、フィーナが尋ねた。

「詳しくは宿に戻ってから話す。」

フィーナの水魔法である程度の血を洗い流し、3人は宿へ向かった。






宿の部屋のドアを開けると、ライがベッドに腰掛けていた。
3人も思い思いの姿勢をとる。

「で・・・コウ、何があったんだ?」

ライが話を促した。

「・・・あの火事を起こしたのは屍水魔団だ。」
「じゃあ、あなたがどこかに行ったのは・・・。」
「そう、火事を起こした奴を追ったんだ。」

少しの間を置き、再びコウは話し出した。

「目的はエレメントの結晶化。
ただ、その結晶化した現物はもうないけどな。」
「どういうことなの?」

フィーナが訊ねる。

「宝石だったんだが・・・砕かれたんだ。
そのせいで死にかけたけど。」
「死にかけた・・・?」
「ダーク・プロージヴを使われたんだ。」
「・・・よく生きてたわね・・・。」
「それはともかく、屍水魔団のアジトの方向もわかったぞ。」
「どこ!?」

抑揚のない声で訊ねるスフィア。

「俺が倒した奴の言う事が確かなら、ここから北にあるらしい。」
「北・・・だね。じゃあ明日からは北に向かおう。」

その日は、そこで4人は就寝した。





翌日、ライたちは北へ向かって旅を始めた。

「コウ、北って言ってもどれくらいなんだ?」
「さぁ。それだけしか聞けなかったからな。」

尋ねるライに、素っ気無く答えるコウ。
そこで4人は足を止めた。

「・・・野盗・・・かな?」
「いや・・・屍水魔団だろう。」

「ご名答です。」

背後から声がした。

「スフィア様、フィーナ様。
あなた方をお連れするように団長から申し付けられました。ご同行願えますか?」
「はい、と言うとでも思ったの?それに、何故私たちを連れて行こうとするの?」

声の主の男に、フィーナはそう答えた。

「私たちの団長があなた方を直接自分の手で殺したがってるんですよ。」
「・・・私がその団長を殺してやりたいわよ・・・。」

スフィアが強く拳を握り締めて言う。
爪が掌に喰い込んでいる。

「・・・連れて来れなければやむを得ない、その場で殺せ・・・と言われているのですが?」


「・・・やってみなさい、出来るものならね。」

スフィアはダガーを抜いた。
ライとフィーナも武器を準備する。コウは魔法の詠唱を始めた。

「ならば・・・仕方ありませんね!」

男の体が、変貌した。







男は、巨大な龍・・・青龍へと変貌していた。

「グリュアアアアアア!!」

青龍は咆哮を上げた。それで魔法詠唱を終わらせたようだ。
元は手であったと思われる部位から、魔法が放たれた。
呆気に取られていたライたちも、魔法が放たれたのを見て、正気を取り戻した。

「うわっ!」

ライが放たれた魔法―――ウインド・スラストをまともに受けた。
しかし、受けていたのは彼の剣。本人は無傷だった。

「どうなってるんだ・・・いきなり人が龍になるなんて・・・」

魔法の詠唱を忘れさせるほどの驚きを隠せないコウ。
しかし、それ以上考えている余地は無かった。
青龍は次の攻撃を仕掛けようとしていた。

「ゴァァァァァ!」

青龍は、その口からいくつもの泡を吐いた。
泡はひとしきり空をさまよった後、弾けた。

「きゃぁっ!」

たまらずフィーナが声を上げた。
彼女は、泡が弾けた際の重力で地面に叩きつけられる形になっていた。
少し離れたところで魔法を詠唱していたスフィア以外の2人も、その衝撃を受けている。
その2人は地面との衝突は回避したものの、かなりの衝撃を受けている。

「グラヴィティ・バブル、か・・・」

そう言いながら体制を立て直すコウ。

「防戦一方だ・・・。このままじゃいつかやられる・・・」

ライがそう呟いた時、後ろから叫び声がした。

「みんな、離れて!」

そう言うスフィアの魔法は、既に完成していた。

「フェニックス・ファイア!」

火の鳥が、青龍に向かって放たれた。
手をかざして止めようとするが、その程度で炎が揺るぐはずも無かった。
炎は、青龍を直撃した。







「まだ息があるぞ・・・!」

コウが呟く。
かなりのダメージを被ったはずの青龍だが、まだ十分戦える状態だった。

「グルァァァァァァァゥ!!」

そう青龍が雄叫びを上げると、再びウインド・スラストがライたちを襲った。

「させるか!」

ライが真空の刃を叩き落す。
所々に切り傷を負いながら。
そんな中、コウがスフィアに話し掛けた。

「スフィア・・・、もう1度フェニックス・ファイア放てるか?」
「・・・少し間が必要ね。魔力が足りない・・・。」
「放てるぐらいになったらすぐ詠唱を始めてくれ。
それまでは俺とライとフィーナで喰い止める!」

そう言うと、コウは魔法の詠唱を始めた。
そして、ライの剣に魔法を放った。

「行くぞライ!ブレイズ・ファング!」

ライは剣で魔法を受けた。
その剣から、凄まじい炎が巻き起こる。

この時、スフィアはフェニックス・ファイアの詠唱を始めた。

「グラァァァァァァ!」

青龍の咆哮が響いた。
再び、泡が吐かれる。

「フィーナ!泡を頼む!」

自らも魔法を詠唱しながらフィーナに叫ぶライ。

「解った!ウォーター・ウィップ!」

フィーナの水の鞭が、泡を1つ1つ破壊した。
そして、その水の衝撃の対象になったのは、青龍自身だった。
青龍のバランスが崩れた。そして、水で濡れている。

「みんな!水から離れて!」

考えを察したコウとフィーナは、すぐに水から離れた。
そして、ライの魔法が放たれる。

「スパーク・チェイン!」

青龍に向かって雷魔法を浴びせるライ。
青龍はかわす事も出来ず、その体を痺れさせてしまった。

「今だ、スフィア!」

コウが叫ぶ。
スフィアの詠唱も終わっていた。

「フェニックス・ファイア!」
「喰らえ!」

スフィアの火の鳥と同時に、ライの剣からも炎が放たれた。
2つの炎が動けない青龍を飲み込む。

「ギャァァァァァァァァァ!!」

人間とも、龍とも取れるような悲鳴を上げて、青龍は焼殺された。
後には、何も残らなかった。
いや、1つ。ペンダントのようなものが落ちていた。

「何だこれ?」

ライはそのペンダントを拾うと、
ペンダントのロケットの中に屍水魔団のアジトへの地図を見つけた・・・。


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