第12話


ここはとある小さな洞窟。
ライたちは今この洞窟の前にいる。
そう・・・屍水魔団のアジトの前に。

「よし・・・、行こう。」

ライが小声で言う。
見張りをしていた者もいたが、一瞬で昏倒させられた。

「狙うのは団長のみ。他は相手にしないで行くわよ。」

スフィアが、決意を込めた口調で言うと、最初に中へ入っていた。
3人が続く。


―――待ってなさい、父さんを殺した屍水魔団―――







洞窟の中は、拍子抜けするほどに静かだった。
道のりも単純だった。

「妙だな・・・団員が一人もいないなんて・・・」

コウが呟く。
確かに、いくつかの部屋はあったものの、
中に人がいるように感じられた部屋はなかった。

「いいじゃん。楽で。」

フィーナが答える。

「罠ってことも考えられるのに・・・。」
「それはかかった時に考えて。今は団長の部屋を探すだけよ。」

スフィアが話題を締めくくる。
コウは頭を抱えているが。

「それよりも、もうこの部屋が最後じゃないのか?」

ライが呼びかける。
どのくらい奥だろうか。かなり歩いている。
その果てに、大きな扉があった。

「ここに・・・団長が・・・。」

スフィアが呟く。
4人は、その扉を開けた。





そこにいたのは、1人の女性。
紅髪紫眼で41、2歳頃だろうか。
第一声を上げたのは、やはりスフィアだった。

「・・・あなたが団長ね?」
「・・・ええ。」

「・・・何故、何故父さんを殺したの!?結晶化のため!?」

しかしその女性は、静かに言った。

「・・・あなたたちがスフィアとフィーナ・・・。本当なら私の・・・。」
「私の・・・何?」

フィーナが問い返す。

「私の・・・娘たち・・・。」

姉妹は、その言葉が理解できなかった。もちろん、ライとコウも。

「私の名はシェリル・・・。本来なら私があなたたちの母になっていた・・・。」
「・・・どういうこと?」

次に訊ねたのはスフィア。

「私は・・・あの人を愛していた・・・。それなのに、あの人は・・・。」

しばし、沈黙。

「あの人は・・・あの女にたぶらかされて・・・っ!」


「・・・あの女って・・・母さんのことなの!?」

ようやくフィーナが声を出した。

「ええ、そうよ。あの女よ、あの女さえいなければ!」

シェリルは、激昂していた。
だがその後、妙に落ち着いた声になり話を続けた。

「でもね、私はこう考えたの。
確かにあの女はあの人をたぶらかしたけど、
あの人が私を愛していたなら、そんなものには惑わされない、と・・・。」

さらに、シェリルは続ける。

「あの人は、私を愛していなかったのよ。
・・・私は、許せなくなった。あの人と、あの人にかかわる全てが!」

再び、激昂。

「あなたたちの母親、どうなったか解る・・・?」
「何言ってるのよ・・・母さんは、病気で死んだ・・・。」

ライとコウはその話が初めてだったため、驚いた表情を見せる。

「病気じゃないわ・・・。」

シェリルが、静かに言う。



「私が、殺したのよ・・・病気に見せかけてね・・・。」



「・・・ッ!」

歯を食い縛るスフィア。

「そ・・・そんな・・・。」

愕然とするフィーナ。

「残っているのはあなたたち2人だけ・・・。私の手で殺してあげるわ・・・
・・・その前に、そこの2人は、何か質問はないの?」

シェリルがライとコウに始めて話し掛ける。

「・・・なら1つ。」

口を開いたのはコウ。

「これだけの規模の軍団なのに、何故ここにはお前以外誰もいない?」
「それは・・・まぁ、後で解りますよ。」

「・・・そうか。」

コウは、深入りせずに質問を打ち切った。

「僕からも質問がある。」
「えぇ、どうぞ。」

今度はライが訊ねる。

「何で人を殺してまでエレメントが結晶化したものを手に入れようとするんだ?」
「この組織を作るためです。こう歌い文句を出せば簡単に人が集まるんですよ。」
「・・・そのためだけに関係のない人たちを殺したのか。」

ライの声に怒りが混じる。

「全てはその2人を殺すため・・・。そう、殺すため。」
「ライ、もういいわ・・・。
たとえ何があったとしても、あいつは私たちの両親を殺した!」

その声を合図に、4人は戦闘体勢に入った。

「私が戦うのはその2人だけ。あなた達はこの子の相手をして頂戴。」

シェリルが片手を上げると、突然巨大な狼が現れた。

「・・・魔狼、フェンリル・・・!」

それは、氷の力を持つ魔狼だった。

「質問の答えだけどね、軍団員はみんなこの子に殺させたわ。
あなたたちがここまで来ている事を知ったからね。」
「!・・・なんてことを・・・!」

コウの声にも、怒りが混じる。

「さぁ、あの人の忘れ形見たちよ・・・。私に殺されに来なさい・・・!」






悲劇の歯車が回り始めたのは、この時なのかもしれない・・・。


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