「ライト・アロー!」
戦闘は、コウの魔法から始まった。
2つの光の矢は、フェンリルに向かって一直線に飛び、命中した。
だが、フェンリルにさしたるダメージはない。
「ブルー・プラズマ!」
ライも剣に雷を宿らせ、フェンリルに突っ込んでいく。
それを見たフェンリルも真っ向から立ち向かう。
「ウインド・スラスト!」
フィーナがかまいたちの刃を飛ばす。
しかし、シェリルはいとも簡単にそれを避けると、魔法の詠唱を始めた。
「フレイム・ショット!」
スフィアが、いくつもの炎のつぶてを打ち出す。
シェリルは動じない。彼女の魔法も完成した。
「スノー・ヴェルダン。」
急にまわりの気温が下がったかと思う間も無く、
スフィアたちを雪の刃が襲った。
刃が、2人の体に無数の傷をつける。
「キュア・ウォーター。」
フィーナがスフィアの傷を癒す。その後に自分の傷を。
「ふふふふふ・・・なぶり殺しにしてあげるわ・・・。」
スフィアは、シェリルの目の奥に狂気の炎を見た。
ライとフェンリルは何度もぶつかり合っている。
その都度、雷がフェンリルの体力を奪い、剣がフェンリルの体に僅かな傷をつける。
それと同時に、フェンリルの牙がライに大きな傷をつける。
そして、その傷をコウが癒していく。
「キリがないな・・・。」
コウが呟く。フェンリルは全く怯んだ様子を見せないのに対し、
コウの魔力は確実に消耗している。
「・・・・・・・。」
ライが何か念じると、剣から雷の魔力が消え去った。
「ライ・・・?」
「コウ、ブレイズ・ファングを頼む。その方が早く倒せる・・・。」
コウはブレイズ・ファングを唱え、ライの剣にかけた。
その時、再びフェンリルが突進してくる。
「行くぞ・・・!」
ライも、斬りかかった。
シェリルは、ウォーター・ウィップの鞭をスフィアとフィーナに叩きつける。
何とかそれを槍で受け流すフィーナ。スフィアが再び魔法を放つ。
「ブレイズ・ファング!」
シェリルは、左手にも水の鞭を作り出し、炎を薙ぎ消した。
「そんな・・・。」
スフィアの嘆きだった。無理もない、本来ならウォーター・ウィップは
片手のみにしか水の鞭を作り出せない魔法なのだ。
「くぅぅっ・・・!」
フィーナが呻き声を上げる。水の鞭が腹部にめり込んでいた。
「フィーナっ!」
フィーナは、倒れこんだ。
「・・・そろそろお終いにしようかしら。フェンリル!」
主に呼ばれたフェンリルは、敵に背を向けて主の側についた。
「何だ?」
ライが警戒した口調で言う。
すると、シェリルはフェンリルの体の中に手を突き刺した。
「!!」
4人とも、言葉が出てこない。
どうやら、シェリルはフェンリルの魔力を吸い取っているようだ。
「私の力・・・今見せてあげるわ・・・!」
魔力を吸い切ったらしいシェリルは、魔法詠唱を始めた。
「我は此処に冷を呼び出さん。
その冷、一条の光とならん。
汝、その冷の贄となれ。
我は願う、汝の美を。
その美、虚ろに閉ざされし棺となれ・・・。」
「これは・・・っ!!みんな、避けて!」
スフィアの叫びが他の3人に聞こえたのかは定かではない。
ただ、シェリルの魔法はそれより1拍遅れた。
「フェンリル・レイバー!」
一条の光が過ぎ去った。
その軌跡となった空間は瞬時に凍てついた。
「・・・禁呪、か・・・。」
身を起こしながらコウが呟く。
そこでスフィアがコウに話し掛けた。
「ねぇ、ガントレットを貸してくれない?」
「?・・・いいけど、何故だ?」
「早く!」
コウはガントレットを外すと、スフィアに渡した。
スフィアはそれを受け取ると、ライたちより一歩前に立った。
「シェリル・・・。あなたはただ逆恨みしているだけだという自覚は無いの?」
「それがどうかしたの?私は、復讐のためにここまでしたのよ?
それがもうすぐ達成できるんだもの・・・。
逆恨みでも、何でもいいのよ・・・。あの人に復讐できるのならね・・・。」
シェリルのその言葉を聞いたスフィアは、小さく溜息をついた。
「ならば、私も復讐のために・・・あなたを倒すわ。」
スフィアはガントレットをはめると、
ダガーとガントレットの両方を使って自分の魔力を高めた。
「姉さん!何する気!?」
フィーナの言葉など聞こえてないかのように、スフィアは魔法の詠唱を始めた。
「奈落の下に潜める紺碧の炎よ。」
「禁呪・・・!」
絶句するコウ。
「全てを喰らい尽くす魔性の炎よ。」
「無茶だ・・・スフィア・・・!」
何とかして止めようとするライ。
「我、ここに汝を呼び出さん。」
「姉さん、止めて!」
叫ぶフィーナ。
「一時、我が意に従え。」
「あなたにそれが放てるの?」
嘲笑し、止めようともしないシェリル。
「我が願うは怨敵の滅び・・・。」
「(父さん、母さん。力を貸して・・・!)」
そして、それは放たれた。
「ファントム・フレア!」
刹那の間。
青白い、荘厳とも形容できる炎がシェリルを包み込んだ。