「殺してやる・・・殺してやる!」
シェリルはそう叫ぶと、自らの手に氷柱を出現させた。
彼女はそれを剣代わりにしている。
「ライ、コウ・・・手出ししないで・・・。」
フィーナが静かな声でライとコウに言う。2人は無言で頷いた。
「いくわよ・・・スノー・ヴェルダン!」
無数の雪の刃を放つと同時に、自らも突っ込むシェリル。
「そんなもの!」
フィーナが槍を一振りすると、刀身から炎が噴き出した。
その炎は雪の刃を水へと変えていく。
「死になさい!」
氷柱をフィーナの心臓に突き立てようとするシェリル。
しかし、氷柱は槍に止められた。
「私は死なない。誰も悲しませたくないから!」
フィーナは叫んだ。
シェリルはそれを聞くと、再び攻撃を放つ。
ありったけの力を込めた一撃を。
それに対応すべく、フィーナも渾身の一撃を放った。
2人は間合いを取った。
渾身の一撃同士のぶつかり合いで、2人とも腕に痺れがきていた。
「ハァッ!」
フィーナが槍の炎を撃ち出した。
シェリルは氷柱で受け止める。あっけなく炎は消えた。
2人の武の実力は伯仲していた。
「面倒だわ・・・これで殺す!」
シェリルは禁呪の詠唱を始めた。
それに気付いたフィーナは、再び炎を放つ。
しかし、その炎が届く前に詠唱は終わっていた。
「フェンリル・レイバー!」
「な、何なの・・・?」
フィーナが呆然として呟く。
ライ、コウの2人も驚愕している。
3人の視線の先では、巨大な青い光が存在している。
そして、同時に倒れているシェリルも。
「あの光に・・・エレメントの力を感じる・・・?」
コウが言う。光は、いわば「水」のエレメントそのものだった。
その光は、シェリルの身体に宿る守護のエレメントを吸収していた。
そのエレメントもまた、「水」である。
「・・・魔力の暴走だろうけど、けどそれだけなのか・・・?」
ライはそう呟いた。3人とも光に手が出せないでいる。
光は、ただシェリルのエレメントを貪っていた。
そして、エレメントがなくなると光は忽然と姿を消した。
「・・・シェリル!?」
フィーナが走って近寄る。
シェリルの顔には、血の気が無い。もう、事切れていた。
3人は近くの村へたどり着いた。
もう夜は更けている。フィーナは死んだように眠っていた。
しかし、ライとコウに眠る気配は無かった。
「よく眠っているな。」
「色々あったからな。楽しい事や、辛い事。疲れたんだろ。」
「コウ・・・あの光、何だったんだ?」
ライが問う。
しかしコウは首を横に振る。
「解らない。だが・・・エレメントに関係していることだけは確かだ。」
「あれは、禁呪の暴走によるもの・・・でも変だな。
スフィアはちゃんと発動しているのに対し、シェリルは・・・。」
「ああ、禁呪自体は発動してない・・・。一体、何なんだ・・・?」
考え込む2人。その時、小さな声が聞こえた。
「う、うん・・・姉さん・・・。」
「寝言か・・・。」
ライが言う。
「スフィアのこと、よっぽど慕ってたんだな・・・。」
コウがそれに続く。
「こんな年で、家族を失っているんだ・・・。」
重い沈黙。
そのまま、何も言わず、2人は眠ることにした。
翌朝。
3人は、旅の準備を整えている。
そんな中、フィーナがライに話し掛けた。
「ライ、これからどうするの?」
「・・・あては無いよ。元々、自分の目的を探すために旅をしてるんだからね。」
「ふうん・・・。」
しばしの間。
今度は、コウがフィーナに話し掛ける。
「フィーナはどうするんだ?」
「私は、炎の地へ行こうと思う。私の故郷へ・・・。」
間を置いて、フィーナはライたちを見つめて言った。
「一緒に炎の地へ行こうよ。これから、一緒に旅をしようよ。」
ライとコウは、もちろんと言わんばかりに縦に頭を振った。
3人は一路、パレスを目指す・・・。