「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」
1人の少年が走っている。
「・・・っ!ハァッ、ハァッ・・・。」
立ち止まった。
かなりの距離を走ったのか、ものすごい汗が噴き出ている。
「・・・・・・・!」
後方から声がする。
「くそっ、あいつら・・・まだ追って来るのか・・・!」
少年は、再び走り出した。
しかし、明らかに走るペースは落ちている。
「(どうする・・・?)」
そう考え始めたとき、彼の前方に大きな街が見えた。
・・・考えついたことは1つだった。
「逃げ込むか・・・。」
「ここが・・・炎の地?」
ライたち3人は、炎の地のパレスの神殿入り口付近にいた。
「うん。・・・どのくらい帰ってなかったかなぁ・・・。」
懐かしみの声をあげるフィーナ。
「とりあえず、私の家に行こう。パレスの中だから。」
3人は歩き出した。
「ここだよ。」
フィーナに案内された先にあったのは、
4人で暮らすには小さい家だった。
フィーナが入り口のドアノブに手をかけた。
「あれ?開いてる・・・。誰もいないはずなのに・・・。」
おかしいと思いつつも、フィーナは家の中へと進んだ。
「誰だ!?」
家の中には、既に先客がいた。
・・・金銀妖眼、白髪の少年が。
「誰って・・・ここは私の家だよ!あなたこそ誰!?」
少々混乱気味のフィーナ。
その声に、ライとコウも家の中を覗いた。
「どうやら、先客がいたみたいだな・・・。」
ライが呟く。
「空き家と勘違いしたようだ・・・。」
続けてコウが言う。
そのとき、少年が口を開いた。
「まいったな・・・。空き家じゃなかったのかよ・・・。隠れるには最適だと思ったのに・・・。」
「隠れる・・って?」
少年の言葉に反応するライ。
「話もしたいし、入ってもいいかな。」
「あ・・・うん。」
ライの声で、フィーナも落ち着いたようだ。
「・・・で、何から話そうか?」
少年が3人に尋ねる。
しかし、3人とも黙っている。何を聞くべきか迷っているのだ。
その様子を見た少年は、自ら話を始めた。
「まあいいや。俺の名はクルク。・・・ちょっと、盗賊に追われているんだ。」
「盗賊に?何故?」
ライが聞き返す。
「いや、それが・・・ちょっと宝物庫から金を失敬したんだけどな。」
「じゃあ追われていて当然じゃないのか?」
指摘をしたのはコウ。
「そうだけど・・・とにかく、それでここへ逃げ込んできたんだ。あんたにはすまなかったな。」
クルクは、フィーナに謝罪した。
「それはもういいよ。でも、どうして盗賊からお金を盗むなんて考えたの?」
フィーナが問う。
クルクが答えるまで、少し間があった。
「1人で生きるため・・・かな。」
「・・・1人で?」
再び、フィーナが問う。
「俺の両親は、もう死んだんだ。
お袋は俺を生んですぐ、親父もこの間病気で逝っちまったよ。」
寂しげな表情を浮かべながら語るクルク。
「働こうにも、16の若造を雇ってくれる店はそうは無かった。」
因みに、この世界での成人は18歳。
「それで盗みを・・・?」
「ああ。どうせやるならでかくいこうと考えて、盗賊から盗んだんだ。」
「え?じゃあ、これが始めて?」
意外そうな声をあげるフィーナ。
「今はやめとけばよかった・・・って思ってるけどな。」
苦笑しながら答えるクルク。
「でも・・・一緒だね。」
「一緒?何が?」
フィーナの言葉に、今度はクルクが聞き返す。
「私もね・・・家族がみんな死んじゃったんだ。」
フィーナは、自分の家族についてクルクに話し出した。
父親のこと、母親のこと、スフィアのこと。
そして・・・屍水魔団のこと。
場に、重くそして長い沈黙が流れた。
「で・・・これからどうするんだ?」
口を開いたのはコウ。
「とりあえず、今日はもう遅いからここで寝よう。
明日の出発のときにどこへ行くか決める・・・でいい?」
ライ、コウ、クルクの3人は、フィーナの提案を了承した。
「父さん・・・母さん・・・。」
真夜中。
フィーナは1人、家の外にいる。彼女の目の前には、2つの十字架。
「天国で・・・姉さんに会えたかな・・・。」
フィーナは、自分が使っていた槍をその横に突き立てた。
「・・・多分、会ってないね。だって・・・姉さんは、ここにいるんだから・・・。」
刀身の紅い槍を、強く握り締める。
振り返り、ドアに向かった。
「それが・・・帰る目的だったのかい?」
不意に声がした。
「ライ・・・。」
「早く寝な。明日に響くよ。」
ライはそう言うと、先に家の中に入った。
「・・・ありがとう・・・。」
フィーナの声は、ライには聞こえなかった。
夜が明けた。
「クルクはどうする?」
「そうだな・・・とりあえず、あんた達について行く。」
「・・・え?」
「1人じゃ心もとないし。いいだろ?」
「・・・いや、悪いとは言わないけど・・・。」
ライの表情は、明らかに焦りの色を見せている。
「じゃあ決定。よろしくな、ライ、コウ、フィーナ。」
一行に、新たな仲間が加わった。
「父さん、母さん、姉さん・・・行ってくるね。」
これが、出発のときにフィーナの残した言葉だった。
「あ!みんな待ってよ!」