第16話


「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

1人の少年が走っている。

「・・・っ!ハァッ、ハァッ・・・。」

立ち止まった。
かなりの距離を走ったのか、ものすごい汗が噴き出ている。

「・・・・・・・!」

後方から声がする。

「くそっ、あいつら・・・まだ追って来るのか・・・!」

少年は、再び走り出した。
しかし、明らかに走るペースは落ちている。

「(どうする・・・?)」

そう考え始めたとき、彼の前方に大きな街が見えた。
・・・考えついたことは1つだった。

「逃げ込むか・・・。」



















「ここが・・・炎の地?」

ライたち3人は、炎の地のパレスの神殿入り口付近にいた。

「うん。・・・どのくらい帰ってなかったかなぁ・・・。」

懐かしみの声をあげるフィーナ。

「とりあえず、私の家に行こう。パレスの中だから。」

3人は歩き出した。








「ここだよ。」

フィーナに案内された先にあったのは、
4人で暮らすには小さい家だった。
フィーナが入り口のドアノブに手をかけた。

「あれ?開いてる・・・。誰もいないはずなのに・・・。」

おかしいと思いつつも、フィーナは家の中へと進んだ。

「誰だ!?」

家の中には、既に先客がいた。
・・・金銀妖眼、白髪の少年が。

「誰って・・・ここは私の家だよ!あなたこそ誰!?」

少々混乱気味のフィーナ。
その声に、ライとコウも家の中を覗いた。

「どうやら、先客がいたみたいだな・・・。」

ライが呟く。

「空き家と勘違いしたようだ・・・。」

続けてコウが言う。
そのとき、少年が口を開いた。

「まいったな・・・。空き家じゃなかったのかよ・・・。隠れるには最適だと思ったのに・・・。」
「隠れる・・って?」

少年の言葉に反応するライ。

「話もしたいし、入ってもいいかな。」
「あ・・・うん。」

ライの声で、フィーナも落ち着いたようだ。











「・・・で、何から話そうか?」

少年が3人に尋ねる。
しかし、3人とも黙っている。何を聞くべきか迷っているのだ。
その様子を見た少年は、自ら話を始めた。

「まあいいや。俺の名はクルク。・・・ちょっと、盗賊に追われているんだ。」
「盗賊に?何故?」

ライが聞き返す。

「いや、それが・・・ちょっと宝物庫から金を失敬したんだけどな。」
「じゃあ追われていて当然じゃないのか?」

指摘をしたのはコウ。

「そうだけど・・・とにかく、それでここへ逃げ込んできたんだ。あんたにはすまなかったな。」

クルクは、フィーナに謝罪した。

「それはもういいよ。でも、どうして盗賊からお金を盗むなんて考えたの?」

フィーナが問う。
クルクが答えるまで、少し間があった。



「1人で生きるため・・・かな。」



「・・・1人で?」

再び、フィーナが問う。

「俺の両親は、もう死んだんだ。
お袋は俺を生んですぐ、親父もこの間病気で逝っちまったよ。」

寂しげな表情を浮かべながら語るクルク。

「働こうにも、16の若造を雇ってくれる店はそうは無かった。」

因みに、この世界での成人は18歳。

「それで盗みを・・・?」
「ああ。どうせやるならでかくいこうと考えて、盗賊から盗んだんだ。」
「え?じゃあ、これが始めて?」

意外そうな声をあげるフィーナ。

「今はやめとけばよかった・・・って思ってるけどな。」

苦笑しながら答えるクルク。





「でも・・・一緒だね。」
「一緒?何が?」

フィーナの言葉に、今度はクルクが聞き返す。

「私もね・・・家族がみんな死んじゃったんだ。」

フィーナは、自分の家族についてクルクに話し出した。
父親のこと、母親のこと、スフィアのこと。


そして・・・屍水魔団のこと。

場に、重くそして長い沈黙が流れた。

「で・・・これからどうするんだ?」

口を開いたのはコウ。

「とりあえず、今日はもう遅いからここで寝よう。
明日の出発のときにどこへ行くか決める・・・でいい?」

ライ、コウ、クルクの3人は、フィーナの提案を了承した。













「父さん・・・母さん・・・。」

真夜中。
フィーナは1人、家の外にいる。彼女の目の前には、2つの十字架。

「天国で・・・姉さんに会えたかな・・・。」

フィーナは、自分が使っていた槍をその横に突き立てた。

「・・・多分、会ってないね。だって・・・姉さんは、ここにいるんだから・・・。」

刀身の紅い槍を、強く握り締める。
振り返り、ドアに向かった。

「それが・・・帰る目的だったのかい?」

不意に声がした。

「ライ・・・。」
「早く寝な。明日に響くよ。」

ライはそう言うと、先に家の中に入った。

「・・・ありがとう・・・。」

フィーナの声は、ライには聞こえなかった。













夜が明けた。

「クルクはどうする?」
「そうだな・・・とりあえず、あんた達について行く。」



「・・・え?」

「1人じゃ心もとないし。いいだろ?」
「・・・いや、悪いとは言わないけど・・・。」

ライの表情は、明らかに焦りの色を見せている。

「じゃあ決定。よろしくな、ライ、コウ、フィーナ。」

一行に、新たな仲間が加わった。






「父さん、母さん、姉さん・・・行ってくるね。」

これが、出発のときにフィーナの残した言葉だった。

「あ!みんな待ってよ!」


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