第22話


シフリアの父親が捕縛された翌日。
ライは目覚めてみると、見知らぬ部屋のベッドの上にいた。

「・・・ここは・・・?」

あたりを見回すライ。すると、部屋のドアが開いて誰か入ってきた。

「良かった・・・目が覚めたんですね。」

入ってきたのは、シフリアだった。

「シフリア・・・ここは・・・?」
「町の宿ですよ。ライさん、朝食が出来てますから、降りてきてください。歩けますよね?」

そう言うと、シフリアは部屋を出て行った。どうやら様子を見に来ただけのようだ。

「・・・みんなは大丈夫かな・・・。」

そう呟きながら起きると、ライは1階の食堂へと降りていった。







ライが下に降り、あたりを見回すと、先にテーブルについているコウを見つけた。

「ライか。怪我は大丈夫か?」
「あぁ、どうってことはないよ。」

他愛無い会話を交わすと、ライもテーブルについた。

「・・・コウ。シフリアの父親は、どうして僕を殺そうとしたんだと思う?」

ライが話を切り出す。

「俺に解るわけがないだろう・・・。本人に直接聞けばどうだ?」
「・・・本人に?」

コウの意外な答えに、怪訝な顔をするライ。

「ああ。さっきシフリアから聞いたんだが、どうやらこの町の外れの倉庫に閉じ込めてあるらしい。」
「・・・でも話をしたとして、答えてくれるかな・・・。」
「まぁ、それはお前次第だろうな・・・。」

そこまで話したところで、フィーナとクルク、そしてシフリアが降りてきた。

「よかった。ライも無事だったんだね。」

と、フィーナ。

「う、う・・・なんかまだ身体が痛いな・・・。」
「・・・大丈夫ですか?」

肩を押さえながら歩くクルクと、その傍についているシフリア。

「二人ともたいした事はないね。よかった。」

安堵の表情を浮かべるライ。

「ねぇ、早速で悪いけど・・・これから、どうするの?」

フィーナが話を切り出す。

「皆さんたちの目的地は、どこなんですか?」

事情を知らないシフリアが訊ねる。
ライが説明をした。

「・・・ごめんなさい・・・ちょっと信じ難いんですが・・・?雷のエレメントなんて・・・。」

困惑した表情のシフリア。
無理もないだろう。伝説上の雷のエレメントが実在して、その持ち主が彼だというのだから。

「・・・まぁ、いずれ解るよ。」

複雑な表情で答えるライ。

「とりあえず、出発は明日。今日は身体を休めるなり、装備を買い揃えるなりして旅に備えてくれ。」












外で何かが聞こえる。誰かが話す声だろうか。

「・・・大丈夫ですか?・・・」「心配ないよ・・・」

片方は聞いたことがあるような声だ。この町の誰かだろう。
もう1人は・・・おそらく、私が殺そうとしてしまった少年・・・。


ギィィ・・・。

ドアが開いた。
入ってきた少年・・・ライは、しゃがみこんでいるメガロの姿を見つけた。

「・・・メガロさん。」

ライは、メガロの変化に驚いていた。
自分を殺そうとしたは思えないほど、無気力だった。
悪い言い方をすれば、廃人同然となるだろう。

「君は・・・雷のエレメントを持っているね・・・?」
「・・・知っているはずですが。」

「知らなかったよ・・・。あの、頭巾をかぶる前は・・・。」
「頭巾を?」

オウム返しで訊ねるライに、メガロはゆっくり倉庫の一角を指差した。
そこには、メガロが洗脳の際に使っていた頭巾が置いてあった。

「全てはあの頭巾・・・。あの頭巾をかぶったことから始まったんだ・・・。」








私は、元々はモンスター狩りをしていたんだ。

あるとき、モンスターの巣を駆逐するために遠征をした。

そこで、あの忌まわしい頭巾に出会った。

その頭巾に強いエレメントの力が宿っていることを知った私は、その頭巾を持ち帰った。

おそらくは、エレメントが結晶化したものだろう。

そして私は、その頭巾をかぶってしまった。

しばらくは、何も起こらなかったよ。

私は、その頭巾を気に入って、普段からかぶるようになた。

そんなある日のことだった。

私は、風呂に入ろうとして頭巾を外そうとした。

すると、どこからか声が聞こえたんだ。

初めはその声がどこからきているのか、全く解らなかった。

だが、そのうちに回りが暗くなっていくのが解った。

そして、それまではっきりとは聞こえなかった声が、急に鮮明に聞こえ出したんだ。

その声はこう言ってたよ。

「雷使いを殺せ」って。

初めは、私は何のことだかさっぱりだった。

そして、そのときは声もそこで途切れたんだ。

だけど、その次の日に頭巾をつけてみると、同じような声がしたんだ。

怖くなった私は、慌てて頭巾を取った。

声は、聞こえなくなった。

でも、その日の夢にも、同じような声が聞こえてきたんだ。

そしてその次の日からは・・・何もないときでも声が聞こえたんだ。

相変わらず「雷使いを殺せ」だったけど。

だけど、その声は日を追うにつれて増加したんだ。

「エレメントを呼び出せ」「生贄を捧げろ」なんて。

そして、最後に「頭巾をかぶれ」。

その言葉攻めにノイローゼになっていた私は、ついに再び頭巾をかぶってしまった・・・。









「・・・そこから先は詳しく覚えていない。だが、自分の妻や娘を、君達を手にかけようとしたことは覚えている・・・。
誤って済む問題ではないが・・・すまなかった。」

メガロは、土下座して床に頭をこすりつけた。

「や、やめてください!そんな・・・。」

ライが困惑しきった表情になる。

「・・・おかげで、今は比較的まともな思考ができる。君達のおかげなんだ。」

顔を上げて、メガロが言う。

「そ、そんな・・・。・・・でも、どうして僕が・・・雷使いが狙われなければならないんですか?」

照れながらも、質問を投げかけるライ。
メガロは少し苦い表情になり、話し出した。

「君が狙われている理由は解らないが、狙っている相手は・・・これはあくまで推測だが・・・。」




「エレメント。」





ライは、そのとき一体何を言われているのか解らなかった。

「君は、エレメントに狙われている・・・あくまで推測だ。聞き流してくれ・・・。」




話が終わり、ライが倉庫の外に出ると、あたりはすっかり夜になっていた。
ライは宿に戻って、その日は早めに眠りについた。












翌日。
ライたち5人は旅の支度を整え、街を出た。

「・・・で、目的地は決まったのか?」
「・・・ああ。」

コウの問いに、簡単に応じるライ。

「光の地へ。いったん、僕らの村へ戻る。」

その言葉に、全員が怪訝な顔をした。

「ライの村にか?」
「そう言えばどんなところか、全く聞いてなかったよね。」
「そうですね。」

しかし、フィーナ、クルク、シフリアの3人と、コウは少し違った反応を見せた。

「・・・どういうことだ?何か気になることでも言われたのか?」
「・・・言われたよ。とても気になることをね・・・。」

ライは、昨日メガロに宣告されたことを話した。
話を聞いた4人に、しばしの沈黙が流れた。

「・・・止まれ。何かいる。」

クルクの一言が、沈黙を破った。
そして、その一言と同時に現れたのは、数体のゴブリンだった。

「ゴブリン、か・・・。ここはこれで・・・。」

ライが一歩前に出て、魔法の詠唱を始めた。
もちろん、他の4人も身構えている。
そして、詠唱が終わった。

「ウォーター・ウィップ!」

ライが唱えた魔法は、しかし発動されなかった。

「・・・あれ・・・?もう一度・・・。」

再び魔法詠唱をするライ。その間に、ゴブリンたちは間を詰めてきている。

「ウォーター・ウィップ!」

水の鞭がライの手から放たれることはなかった。

「ギギャ!」

あるゴブリンが奇声を上げてライに襲い掛かった。
しかし、ライは剣を抜いてはいなかった。刃が眼前に迫る。

「ライト・アロー!」

飛来した光の矢が、ゴブリンを弾き飛ばした。

「ライ、下がってろ!ライト・アロー!」

再び放たれた光の矢が、別のゴブリンを打ち倒す。
その一撃で、残っていたゴブリンたちは逃げ出してしまった。

「ライ、一体どうしたんだ?」

クルクがライに駆け寄る。ライは自分の掌を見つめていた。

「・・・魔法が打てなくなってる・・・。」

ライはしばらく掌を見つめていたが、やがてその手を握り締めた。

「早く村へ戻ろう。雷のエレメントについて、詳しく父さんに聞く。」


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