第23話


光の地。
その山奥にある小さな村。
そこが、ライとコウの故郷だった。

「なんか・・・もう帰ってきたって感じだな・・・。」

呟くライ。

「へぇ・・・ある程度の街は歩いたつもりなんだけど、こんなところは初めてだな・・・。」

クルクが言った。

「ここで・・・、ライさんとコウさんは生まれ育ったんですか・・・?」
「・・・まぁ、『故郷』だからな。」

シフリアとコウが言う。

「とにかく、行こう。別に恥ずかしいってわけじゃないんでしょ?」

そう言うと、フィーナは村へ駆け出した。

「ちょっと、フィー・・・ったく。」

ライたちも、後を追った。










「おーい。」
「ん?誰・・・って、ライ!コウも!いつ帰ってきたんだよ!?」

ライが声をかけたのは、村の知り合いであった。
・・・といっても、小さな村なので村の住民全てが住民全員の顔と名前を一致することができる。

「たった今、帰ってきたんだ。ところで・・・父さんはどこか知らないか?」
「お前の親父さん?・・・今は家にいるんじゃないか?」
「ありがと。それじゃ!」
「お、おい・・・何なんだ?」










「・・・ここが、僕の家だ。」

ライが言う。
そこで、フィーナが思いついたようにコウに尋ねた。

「あれ?ところでコウは親に挨拶しなくていいの?」
「後でいい。」

素っ気無くコウは答えた。

「ただいま・・・。」

ライが、ゆっくりと入り口のドアを開く。

「・・・あら?ライ!?いつ帰ってきてたの?」

応答をしたのは、ライの母親だった。

「母さん、父さんはいる?」
「ちょっと待っててね。父さん!ライが帰ってきたよ!」

少しして、父親が降りてきた。

「なんだ、帰ってきてたのか。・・・どうやら、まだ旅の目的は果たしていないみたいだな。
まぁ、休息も必要だろう。立ち話も何だから、皆さんも中に入ってください。」










全員、椅子に腰掛けてテーブルに向かっている。一通りの自己紹介は済ませた。
ライの母親は茶を出してから、買い物に行くといって出かけてしまった。

「・・・で、何か言いたいこと、或いは聞きたいことがあって戻ってきたんだろう。
答えられるかは別だが、言っておいたほうがいいんじゃないか?」

父親がそう言うと、ライは話を切り出した。

「父さん、僕はとある町で僕がエレメントに狙われているって聞いたんだ。
そして、それを聞いた矢先に、魔法が使えなくなった。・・・どういうことか、わからない?」

1呼吸おいてから、父親は話し出した。

「・・・魔法が使えない、というのは変だな。マジック・ボールのような低レベルな魔法もか?」
「いや、「エレメントの力によらない」魔法は普通に使えるんだけど・・・。」

「じゃあ、雷魔法は?」
「・・・試してない。あんな魔法、試す気にならない・・・。」
「試してみろ。」
「・・・何故?」
「使えるかもしれないからだ。」

しぶしぶライは魔法詠唱を始めた。心配そうにコウたちが見守る。
標的は・・・剣。

「スパーク・チェイン!」

剣に、電撃が迸った。そのまま、電撃は剣に纏わりついている。

「・・・使えた・・・!?」
「やはりか・・・。」

ライの父親は、僅かに顔を顰めた。

「ライ。お前が使えないのは6元素のエレメント魔法だ。
・・・これで、はっきりした。」
「・・・何がですか?」

おずおずとシフリアが尋ねる。

「やはり、ライはエレメントに狙われている、ということさ。」

しばし、沈黙が場を支配した。

「・・・でも。」

沈黙を破ったのは、フィーナだった。

「どうしてですか?どうしていきなりエレメントなんかに狙われなければならないんですか?」

ライの父親は、そこで煙草に火をつけた。
大きく息を吐き出してから、語り始めた。

「じゃあまず、全ての元。エレメントについてから話そうか・・・。」










「かつて、エレメントは今と同じく、6つだった。
それがあるとき、急に7つ目のエレメント、『雷』のエレメントが現れた。
何故そのようなことが起こったのか?エレメントは理解できなかった。
・・・そして、エレメントたちは『雷』を消し去った。
今まで見てきたことのないものは、イレギュラー的存在でしかなかったからだ。
だが、それから数百年すると、再び『雷』は現れた。
エレメントたちは、再び『雷』を消し去った。イレギュラーの存在に絶えることが出来なかったのだ。
そんなことが、およそ五千年ほど続いた・・・。」

そこで、ライの父親は大きく溜息をついた。
5人は黙って、話の続きを待っている。

「そんなあるときだ。エレメントの中で葛藤が起こった。
『雷』のエレメントを簡単に消去してもいいものか・・・ってな。
6元素、全てがそう悩んだ。
『雷』のエレメントと共存するか?
それとも、『雷』というイレギュラーは消去するか?
その葛藤が何故起こったのかはわからん。だが、エレメントたちは次の『雷』が現れるまでの数百年、悩みつづけた。
そしてその葛藤は次第に強くなり、ついにエレメントは、その存在を二分してしまった。
『雷』との共存派と、『雷』の消去派。べつに、エレメント同士が争いを始めたわけではない。
だが、消去派のエレメントはそれ以来、姿を消してしまった・・・。
・・・まぁ、これ以降は誰もが知ってるエレメントによる天地創造の話だ。」

「じゃあ、僕はエレメントの『消去派』から狙われている、ということなの?」
「そうさ・・・。あいつらは『雷』のエレメントを消すためなら手段を選ばんし、稀に死した人間のエレメントを食い荒らしに来るんだ。」
「・・・じゃあ、シェリルも『消去派』から・・・。」

フィーナが呟いた。

「だが・・・ライ、お前に罪はない。エレメントを消滅するために、エレメントはお前を狙うんだ。
しかし、結局はその消去派をどうにかしないとだからな・・・。」

ライの父親は、厳しい目でライに向き直った。

「ライ、エレメントの意思は、いわば『絶対意思』だ。そのエレメントに歯向かい、抵抗して、自らの自由を勝ち取る気はあるか?」





しばし、沈黙。




「・・・僕がどうと言うことじゃない。でも、エレメントなんてものに縛られたくもない。
向こうが絶対意思なら、僕は僕の意思で自由を勝ち取る。」

ライは静かに、しかし強く言った。

「父さん、具体的な方法は何かない?」
「・・・どうやら、決心はいいらしいな。じゃあ、外に出ろ。」
「え・・・?」
「必要なのは心だけじゃない。力もだ。」

そう言い残すと、外に出て行ってしまった。

「ライ。」
「どうした?コウ。」

外に出ようとしたライは、背後からの声に振り返った。

「お前は強いな。」

そう言うと、コウも外に出た。
それを追うようにして、4人も外に出た。












「うわっ!」

ライが尻餅をつく。
父親の剣によってだ。

「親父さん・・・そんなに剣術使えるんなら、どうしてライに教えなかったんだ?」

コウが尋ねる。
ライの剣術は、ゴブリンなどの魔物退治で培われた我流だ。

「めんどくさかったからだよ。」
「・・・・・・。」

ライは、無言で再び斬りかかる。
その剣は、再び払われた。








「ふぅ・・・。ライ、剣の腕は上達したな。」
「・・・そこそこ『旅』してたからね・・・。」

肩で息をしながら答えるライ。

「だがな。それだけでは当然エレメントに抵抗することなど出来ない。」
「・・・そうだろうね。」
「そこで・・・だ。ライ、剣を貸してみろ。」
「?もともと父さんの剣だけど・・・?」

そう言いつつ、ライは剣を渡した。

「・・・マジック・ボール。」

ライの父親は、簡単な魔法を剣に宿らせた。

「よく見てろよ。これなら万に一つでもエレメントに対抗できるかもしれない・・・!」

そう言うと、父親は目を閉じた。何かに集中している。
だが、その周囲がマジック・ボールにしては大きすぎるほどの魔力場となっていることが、ライたちには解った。
そして、目が開かれる―――。

「・・・エナジーバースト!」

轟音。
そして、凄まじい魔力が炸裂した。

「これが魔法と魔武器との組み合わせでできる技・・・『魔技』だ。」
「・・・魔技・・・。」
「エレメントといえども、魔力の集合体であることには間違いない。
マジック・ボールでさえこれだけの魔力が出るんだ。これなら・・・或いは。」

ライが呟いたほかは、そのあまりに凄まじい魔力と威力に圧倒されていた。

「ライ、お前は明日からこの村でこの魔技を会得するんだ。
そして、旅仲間の皆さん。もし、ライの旅に同行するつもりなら、あなたたちにも魔技を会得するために修行をしてもらいます。」

ライたちは、流石にすぐには返答できず、翌朝まで待ってもらった。
そして、その日はライの家で、それぞれが悩み、考えた・・・。












「・・・で、どうします?」

翌朝になって、ライの父親がフィーナたちに意思を問う。

「・・・私は、やります。始めた旅が中断されるのは残念だけど、
いつか皆さんとまた旅に出ることが出来るはずですから。」

まず、シフリアが承諾した。

「ここでやめて、放浪の旅に出ることは簡単だ。
でも、それじゃ俺は絶対に後悔する。俺は、後悔したくない。」

次に承諾したのは、クルクだ。

「ライは、私たち姉妹の敵を倒すのに協力してくれた。
今度は私の番・・・。姉さんだって、そう言うに決まってる!」

続いて、フィーナ。

「親父さん、俺に聞く必要あるのか?
仮にも親友だからな、あいつは。そのよしみで、つきあってやる。」

最後に、コウが了解を出した。

「じゃあ、全員がやるんだな。・・・まぁ、宿はコウが言えば何とかなるだろ。」

コウは、宿屋の息子なのだ。

「あれ?ライは?」

クルクがあたりを見回す。

「そうだ、そろそろ帰ってくると思うんだが・・・お、来たな。」

父親が窓の外を見ると、何かを肩に担いで歩いてくるライの姿があった。

「ふぅ・・・ただいま。で、みんなやるって言ったでしょ?」
「ああ。」
「やっぱり。そう思って・・・、手に入れてきたよ。コウとクルクの魔武器。」

ライが下ろした荷物は、グローブのようなものと、細身の剣であった。

「確かフィーナとシフリアはもう魔武器があるから。魔法を込められる2人の武器を探すのは苦労したよ。ただでさえ珍しいのに・・・。

ライが疲れた表情で話す。

「でもなライ。そこの・・・フィーナさんだっけ?その子の槍は魔法を込められる武器じゃないんだぞ。」
『あ・・・。』

ライとフィーナの声が重なった。
そう、魔法が込められる武器でないと魔技は使えないのだ。

「そうだな・・・。その剣、貸してみろ。」

父親が手を差し出す。ライは怪訝な表情で剣を渡した。

「確かこの宝石で・・・。」

そう言うと、ライの剣の刀身にはめ込まれていた宝石を外した。

「ちょっと、その槍を貸してください。」
「・・・はい。」

今度はフィーナから槍を受け取り、同じようにしてはめ込まれていた宝石を外した。
そして、それぞれにはめ込まれていた宝石を交換してはめ込んだ。

「・・・おっ、ぴったりはまったな。これでいいはずだ。試しに魔法を込めてみて。」

ライの父親の言葉に小首をかしげながらも、フィーナは魔法を詠唱、槍にかけてみた。

「・・・すごい。槍が風を纏ってる・・・。」

フィーナの槍は、魔法を込められるようになったのだ。

「あの宝石の力ってことか・・・。ところで父さん、これじゃ僕が魔法を込められないんじゃない?」
「案ずるな。その剣の刀身は魔法金属で出来ている。もうその宝石がなくても魔法は込められるはずだ。」

そう言うと、ライの父親は煙草をふかし始めた。

「じゃあ頑張れよ。魔技ってのは教えられて会得するものじゃないから、俺は何も教えることは出来ない。
昨日見せたあの技は俺のオリジナルだが・・・まぁ、あれをヒントにしてもいいし、完全オリジナルの技を編み出してもいい。あとは、お前たち次第だ。
「・・・わかった。」






こうして、ライたちは魔技を会得するための修行を始めた。

そして、魔技を会得して再び旅に出るのは、1年ほど先のことになる・・・。




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