第11話「誘拐」
ダークネスの刺客が差し向けられてから一週間。
流駆たちは、学校に行っていない。いまだ、モンスターが蔓延っているのだ。
「・・・暇だ・・・。」
流駆が自分の部屋のベッドに横になりながら呟く。
この一週間は、ダークネスからの襲撃もなかったのだ。
「ちょっと外に出てみようかな・・・。身体もなまるし・・・。」
何ぞといいつつ、外に出る。
アパートの前の道路に出ると、そこでは楓と麻耶が立ち話をしていた。
「お気楽だねぇ・・・2人とも。」
「あら、流駆。」
「流駆さん、おはようございます。」
軽く挨拶を交わす。
「で、何の話してたんだ?いや、話したくなきゃ別にいいけど。」
「・・・ダークネスについて、よ。ちょっと気になることがあってね・・・。」
楓が、声のトーンを落とす。周りに誰もいないのに。
「気になること・・・って、何?」
「この一週間、何もなかったわよね。どうもいやな予感がするのよ。」
「私もそう思って・・・。楓さんに聞いてみたところなんです。」
「・・・神経質になってるんじゃないのか?
いやな予感があったとしても、それが何かは解らないのに。」
「そう・・・かしらねぇ?」
「そう・・・なんでしょうか?」
いつになく弱気な楓と麻耶。
「そのいやな予感、現実のものにしてあげましょうか?」
「・・・?」
後ろからの声に3人が振り向くと、そこに立っていたのはごくごく普通の女性。
「私はダークネスの刺客の・・・。」
「あ、名前はいい。作者が覚えられないから。」
ありがとう、流駆君(爆)
「・・・そう、残念ね。じゃあ早速、やりましょうか。来なさい、『ビッグバン』!」
女性が呼び出したのは、いわば巨大な生物爆弾である。
炎属性レベル5、3/3。このモンスターが死ぬとき、それは大爆発するときである。
「・・・を〜い、冗談だろ・・・?」
流駆がぼやく。
「・・・ふふふ、どうするの?」
意地悪く女性が言う。
「・・・ほんとにどうするの?爆発させたら大変なことになるでしょ。」
他人事のように言う楓。
麻耶は、ひたすら慌てている。
「確か、儀式スペルで死亡したときだけ大爆発は起こるんだから・・・でも、ダークネスのカードだし・・・。」
「情けねぇなぁ・・・。『フレイム・ストライク』!」
『え・・・?』
一同が声の主に振り向くと、そこに立っていたのは『ファイア・エレメンタル』を引き連れた炎。
「・・・嘘・・・?」
「ちょ・・・ちょっと、炎!」
「・・・あのバカ・・・。」
どうしてそんなに冷静なんだ、そこの3人。
因みに、女性はこれを見てちらりと笑った。
そして、炎の槍が到達する―――。
小規模ながらも、キノコ雲が生まれた。
「・・・生きてる・・・かな・・・。」
どうにか立ち上がる流駆。擦り傷だらけだ。あたりはまだ、煙が立ち昇っている。
「やっぱり、手が加えられてたか・・・。」
「おーい、大丈夫か?」
炎がやってくる。無傷だ。
「・・・をい炎、お前ファイア・エレメンタルの陰に隠れてただろ。」
「あぁ。そうすりゃ俺は無傷で済むからな(外道)。・・・お?」
炎が何かを見つける。
モンコレのカードが、2枚落ちていた。
「これは・・・楓のカードだな。後で渡してやるか。足りないとか思うはずだからな・・・流駆?」
「・・・足りない・・・。」
流駆が呟く。
「どうした?お前もカード落としたのか?」
「違う。人間が・・・楓と麻耶さんが足りない・・・。」
既に、煙は晴れている。
その場にいたのは流駆と炎、それと騒ぎを聞きつけた野次馬。
楓と麻耶、そしてあの女性の姿は、どこにもなかった。
「・・・生きてる・・・?」
楓が目覚める。その傍には、麻耶がまだ気絶している。
「えっと、確か炎がフレイム・ストライクをビッグバンに撃って、ビッグバンが爆発して・・・。
その後・・・気絶したのね。で・・・ここはどこなの?」
色々と思案する楓。
2人がいるのは、見覚えのない部屋。
「どうやら、片方はお目覚めのようね。」
「あなた・・・ダークネスの刺客?」
ドアが開いて入ってきたのは、先程の女性。
「あなたたちのデックは預からせてもらったわ。
明日にでもカードの魔力を抽出して、また我々ダークネスのカードを増やすために使うから。」
「魔力抽出・・・。そんな技術もあるのね、ダークネスって。」
楓が、妙なところで感心する。
「私たちを、どうするつもりなんですか・・・?」
いつの間にか目覚めた麻耶が問い掛ける。
「そうね・・・。人質として役に立ってもらうわ。あの男の子達も、ここに来ると思うから。じゃあね。」
そう言うと、ダークネスの刺客の女性はドアに鍵をかけ、立ち去っていった。
「ちょっと・・・待ってくれる訳ないわね。」
「どうします?デックがないと私たち何もできませんよ・・・?」
麻耶が弱々しく言う。
そう、召喚術師はカードがなければ本当に何もできないのだ。
「そうね・・・。どうしようもないなら、成り行きに任せてみるのもいいんじゃない?」
だから、どうしてそんなに冷静でいられる?
「・・・いやな予感、現実のものとなっちゃいましたね・・・。」
『・・・見張りはいないみたいですよ。中の様子は解んなかったです。』
「ん、わかった。サンキュな。」
流駆が、小さな女の子の妖精『ブラウニーズ』の報告を受ける。
流駆と炎は今、町外れの廃ビルの前にいた。
「しっかし・・・「2人の身柄は預かった。2人だけで町外れの廃ビルに来い」だってよ。文章が単純だよなぁ。」
「・・・お前の頭みたいにな。」
流駆がきついセリフをはく。炎は気にした様子もない。
「『ティンカーベル』、上の様子は?」
『楓さんと麻耶さん、見つけました。窓から入れると思いますよ。』
また、違う妖精から報告を受ける流駆。
「よし、じゃあ作戦通りにいくぞ。」
「了解!俺に任せとけ!」
2人は、散った。
「出て来いダークネス!召喚術師、炎が相手してやる!」
炎はビルの中に入るや否や、大声でそう叫んだ。
途端に人間やモンスターに囲まれる。
「よし、来い!『ファイア・エレメンタル』!2体!」
炎は先程も呼び出した炎の精霊を今度は2体同時に呼び出した。
炎属性のレベル4、4/4、炎のスペルワークを3つ持っている。
「かかって来い!」
「何か、騒がしくなってきたわね・・・。」
「ひょっとして、流駆さんと炎さんが本当に来たんでしょうか・・・?」
呟く2人。
来ないと思っていたのか?
ガシャン!
『!?』
突然、窓ガラスが割れた。
「楓さん、あれ!」
「『スカイ・ワイバーン』!?そんな、こんな時に・・・。」
風属性レベル6、5/4の長距離飛行ができるドラゴンだ。
風のスペルワーク2つと、水のスペルワーク1つも持っている。
「お、いたいた!無事か?」
「えっ・・・。」
その声の主は彼女らにとっては意外な人物だった。
「流駆さん!?どうやってここに!?」
「もちろん、このドラゴンに乗って。因みにこいつは、楓のドラゴンだぞ。」
楓が落としたカードの一つは、これだったのだ。
「あの爆発のときに落としてたのね・・・。」
そう言う楓をよそに、流駆はドラゴンの背から部屋へと飛び移った。
「さて、脱出するぞ。」
「ちょっと待って。私たち、デック盗られちゃったのよ。取り返しに行くから、スカイ・ワイバーンを返してくれない?」
楓が、無謀な発言をする。
そんな発言をするのには、当然訳がある。
「デック!?そんなの放っとけ・・・ないな・・・ダークネスが相手じゃ・・・(詠嘆)。」
これが理由だ。
「しょうがない・・・。でも、俺は行けないぞ。炎が囮になってるから、そっちの手助けに行く。
スカイ・ワイバーンは返す。それと、もう一枚お前のカードな。あと、ブラウニーズをお供に連れてけ。」
「ありがと。ついでにそこのドアの鍵、どうにかして開けられない?」
「そのくらいなら、ブラウニーズ、頼む。」
『はーい。』
ひょこりと、先程の小さな妖精の女の子たちが出てくる。
彼女らによって、鍵は開かれた。
「ありがと。じゃ、行ってくるわね。」
「気をつけろよ?」
「流駆さんも、気をつけて・・・。」
楓たちは、走り出した。
「・・・さてと・・・。どうやって降りようかな・・・。」