第13話「死闘(?)」



『あなたたち・・・。私の存在を忘れてない・・・?』

事態を傍観していたサキュバスが声を上げる。
その声に反応したのは、ワルキュリア魔神討伐隊であった。

『忘れてなどはいないぞ・・・私の攻撃を受けるがいい!』

魔神討伐隊は、そう叫ぶと一直線にサキュバスに突進した。

「甘いわ。『プロテクション』!」

同じく事態を傍観していた刺客が、防御力を+3するスペルを放った。これで魔神討伐隊の攻撃は通らないはずだった。

「おっと、『魔力のスクロール』だ。」

流駆はそれに対抗して、スペルを打ち消す巻物のカードを放つ。
プロテクションは効果を失った。しかも・・・。

『グァッ・・・!』

サキュバスは、魔人討伐隊が攻撃するまでもなくカードに戻った。
魔力のスクロールは、スペルを打ち消すと同時にスペルを行使したモンスター一体に1Dのダメージを与えるのだ。

「あらあら・・・。なかなかやるわね。でもデックは返してあげない。」

ダークネスの刺客は小馬鹿にするようにして笑いながら、足を踏み鳴らした。
すると、その足元の床が刺客を乗せたまま下の階へと動いた。

「私はこのビルのどこかに隠れるわ。私を見つけ出して、倒すことが出来たらデックは返してあげる。」

下の階から声が聞こえると、刺客の姿は見えなくなった。

「どうしてこんな廃墟ビルにこんな仕掛けがあるんだ・・・?」

なかなか鋭い意見を流駆が言うが、これは単に作者の演出である。

「それよりも流駆、追いましょう。デックを取り返したいし、ダークネスの詳細も解るかもしれないでしょ。」

そう言うのは楓である。

「もちろん追うけど・・・まずは炎を起こすのが先決だろ。」
「そうですね・・・。炎さん、大丈夫ですか?」

流駆の言葉を受けて、麻耶が炎に声をかける。
うっすらと、炎の目は開かれた。

「・・・あれ・・・ここ、どこだ?」
「ビルのとある部屋だよ。大丈夫か?」

「・・・そうだ、俺は確かダークネスと戦っていて・・・そしたら後ろからサキュバスがやってきて・・・。だめだ、その先思い出せねぇ・・・。」

頭を抱える炎。

「どうでもいいけどよ、炎・・・鼻血出てるぞ。ほら、ティッシュ。」
「ん?・・・あっ。悪いな・・・。」

まぁ、快楽の夢を見せられたのだから仕方あるまいが・・・。(炎は一応14歳だし)

「さて。そろそろ行くか。刺客探索に・・・。」
「流駆、ちょっと待て!ユニットカード貸してくれ!」

炎が声を張り上げる。流駆は「は?」という顔である。

「やられたまんまじゃアレだからな。リベンジだ!」
「そうね・・・。」
「おい、楓まで・・・!?」

楓も、ユニットカードを借りるつもりのようだ。

「できれば、これを生かせるようなカードがあればいいんだけど・・・。」

楓は、一枚カードを取り出した。流駆から受け取ったカードだ。

「・・・解ったよ全く。じゃあ炎には『アース・エレメンタル』と土スペル1枚を、
楓にはこの『ワルキュリア魔神討伐隊』と聖スペル1枚を・・・そうだ、ついでにこれも持ってけ。
ここにたどり着く途中で拾ったんだ。これで、そのカードも生きるだろ。」

そう言うと、流駆は二人にそれぞれカードを手渡した。

「で・・・麻耶さんは何か借りてくつもりか?」
「え、でも・・・これ以上は流駆さん自身が危ないんじゃあ・・・。」
「そう言ってくれるとありがたいよ・・・。全くこいつらは・・・。」

炎と楓の二人を見て、嘆息する流駆。

「まぁまぁ、気にしちゃダメよ。さ、行きましょ。」
「よっしゃ、俺に任せろ!」
「大丈夫なんでしょうか・・・。」
「・・・大丈夫じゃないかも知れない・・・。」


























「・・・で、あとはここか?」

流駆が訊ねる。

彼らは、20分かけてビル全体をくまなく探した。
そして、たどり着いたところはとある部屋の入り口である。
見た感じ、この廃ビルの中で一番大きい部屋だろう。

「じゃ、せーので行くわよ(古い)。せー・・・」


バン!


楓の声をまるっきり無視して、炎が扉を開け放った。

「ダークネスの刺客ー!出てこーい!ここにいるんだろー!」

炎が大声で叫ぶ。・・・五月蝿い。
もちろん、流駆たちは耳を塞いでいる。

「・・・まだ夜じゃないですよね?何でこんなに暗いんでしょう・・・?」

麻耶が言うように、この部屋は全くの暗闇であった。
炎がお構いなしに部屋の中へ入り込んでいるのは言うまでもないが。

「どこ行った・・・いてっ!何だ?」

炎が何かにぶつかり、それを見上げる。

「これ・・・モンスターか?」
「・・・嫌だけど確認するか・・・。『プラズマ・ボール』、召喚。」

流駆が電撃を帯びて光っている球体のモンスターを呼び出した。
そのモンスターを、炎の所に飛ばす。

何か、怖いものが流駆たちを睨んだような気がした。
そして、プラズマ・ボールはその何かにやられたらしくカードに戻った。

「・・・(汗)」
「あ、電気のスイッチありました・・・入れますよ。」

パチッ。





「・・・この状況を予想できてしまった自分が嫌になるな・・・。」

流駆がぼやく。

今、彼らがどのような状況に置かれているか。
目の前に、モンスターの見本市とも言えるほどのモンスターがいたのだ。
アニマルに始まり、スピリット、インセクト、ハウンド、魔法生物、etc・・・。極めつけはドラゴンであろうか。

「よく来たわね。でも、このモンスター集団を倒せるかしら?」

ダークネスの刺客の女性がいた。不敵な笑みを浮かべている。

「流駆!悩んでいても始まらないぜ!やるぞ!」
「無責任なことを言うなよ・・・ま、やるけどさ。」
「誘拐してくれた仕返しをしなきゃね。」
「皆さん、本当に気をつけてください・・・!」













「戦闘を始める前に、ワルキュリア魔神討伐隊に『月食のオーブ』を装備させるわ。」

楓が、流駆が拾ったと言うカードを翳す。魔神討伐隊の手に、黒いオーブが現れた。

「あら、儀式スペル?」
「そうよ。オーブはすぐに破棄。そして『陽光吸収』の力で・・・儀式スペル、『サンダーボルト』!」

楓がカードを翳すと同時に、稲妻の束がモンスターの群れを襲った。パーティ1つに電撃の1D−1ダメージを与える儀式スペルである。

「残念賞ね。『アンバー・バックラー』がこちらにはいるの。『魔力相殺』よ。」

ダークネスの刺客は、モンスター一体を犠牲にして稲妻を消し去った。

「さあ、召喚したらどう?ここは私にとってはリミット無制限だけど、あなたたちは全員合わせてリミット12よ。」
「・・・ズリ〜。」

「じゃあ呼んでやるさ!『アース・エレメンタル』!」

炎は即座に流駆から借りた土の精霊を呼び出した。ファイア・エレメンタルの土属性バージョンである。
能力値は同じ、スペルワークが土のものになっている以外の違いはない。

「そいつと楓の魔神討伐隊・・・リミットは残り5か・・・。じゃあ、『太陽を睨む天使』と『ホムンクルス・レンディア』!」

流駆が呼んだのはいつもの天使と、カプセルの中に入った幼女であった。

『ホムンクルス・レンディア』は聖属性レベル2の1/1。聖スペルワーク1つとオールスペル2つと多くのスペルを使える。
ただ、スペルを1つ使うごとにカードを1枚破棄しなければならない。









イニシアチブは刺客の女性が取った。

「攻撃するわね。この子たち全員で・・・。」

モンスターの群れが、流駆たちとそのモンスターを襲う。

「そんなの受けられるか!『サンクチュアリ』!」

ホムンクルスのスペルワークで、流駆がスペルを放つ。
聖域を作るスペルで、相手モンスターの攻撃を食い止める効果を持つ。

「だったら追撃の『ファイア・ブラスト』よ!」
「『ディスペル・マジック』。早速役に立ったわね。」

火の雨を降らせようとしたが、楓が魔神討伐隊のスペルワークによるスペルでそれを打ち消す。

「決まらないわね・・・。じゃあせめてそこの土くれだけでも。『アース・ディスラプト』!」
「喰らうかよ!『エンデュランス』!」

アース・ディスラプト・・・土属性のモンスターに1D+2のダメージを与えるか、土の戦闘スペルを打ち消すスペルである。

炎はエンデュランスのダイス目で4を振ったが、不運にも相手のダイス目は6だった。
アース・エレメンタルはカードに戻った。

「これ以上は何も出来ないわね。そちら、どうぞ。」
「じゃあ遠慮なく行くぞ・・・。まずは『ホーリー・ゲート』。」

流駆は、残ったホムンクルスのスペルワークでスペルを放った。
リミットの範囲で、聖属性ユニットを呼び出せるスペルである。

「あんたがアース・エレメンタルを倒してくれて、ある意味助かったよ。
心置きなくこいつが呼べるんだからな・・・。『月に咲く天使』!」

女性の顔色が変わった。

現れたのは、女神と勘違いするかのような威厳が感じられる天使である。
聖属性レベル3、3/2。聖と魔のスペルワークを持つが、その真価は特殊能力にあるであろう。

「喰らえ。『月光浴』と『太陽の槍』のコンボだ!」

流駆の言葉に月に咲く天使が手を掲げると、その場にいたモンスターに不思議な光が降った。

月に咲く天使の『月光浴』は、自軍パーティの属性を『聖』に、相手パーティの属性を『魔』に変える特殊能力である。
そこに相手パーティの魔属性ユニットを全滅させる『太陽の槍』が放たれたら・・・想像に難くないだろう。

「させないわ・・・『封印の札』!」
「なら、アイテム行使モンスターに『ジャスティス』。」

妨害アイテムにも、落ち着いて対処する流駆。
太陽の槍は、相手の全てのモンスターをカードに戻した。

「・・・勝負ありだな。降参しろ。」

流駆は、そう女性に宣告した。



戻る 第12話 第14話