第14話「旅立ちの決意」


「私が、降参ですって?」

刺客の女性は、僅かな笑みを浮かべた。

「こいつをどうにかできたら降参してあげるわ。ビッグバン!」

カードを翳すと同時に、再びあの生物爆弾が現れた。

「・・・流駆、任せるわ。」
「ああ。俺はもう手持ちのアース・エレメンタルはやられちまったし。」
「すいません。お願いします・・・。」

そう口々に楓、炎、麻耶は言うと、すぐさま流駆から離れて、入り口付近に集まった。

「お前ら、いい加減にしろよ・・・。」

そう言いながらも、流駆はビッグバンに向き直った。

「・・・さてと。悪いけどな、そいつの特性を考えた対処法も考えてきたんだよ。」
「・・・それはそれは。披露していただけないかしら?」

刺客の女性は、小馬鹿にするような口調である。

「まずは・・・。みんな、カードに戻ってくれ。」

流駆のその一言で、現れていたモンスターたちは一斉にカードに戻り、流駆のデックに滑り込んだ。

「・・・そのビッグバン、どうせダークネスのことだから儀式スペル或いは『火炎』の効果で死亡した時に爆発するんだろ?」
「あら凄い。でもね、それだけじゃないの。攻撃によるダメージや、直接『破棄』する効果でも爆発するのよ。」

つまり、先程の太陽の槍&月光浴コンボは通用しないということである。

「その台詞で確信を持ったよ。『死亡』で倒してやるさ。来い、『ペルソナ』!」

こちらも、なかなか見慣れた精霊を呼び出した。

「まず、ペルソナの攻撃力は2。これでは防御力3のビッグバンは倒れない。
だからといって、そちらの攻撃による3点のダメージでは防御力4のペルソナは倒せない。」
「それでどうするの?『ストライキング』(攻撃力+1Dする土スペル)でも使うわけ?」

やはり、小馬鹿にする口調は変わらない。

「残念、使うスペルはこれだ。『ペトリフィケーション』。」

流駆は静かにカードを翳した。すると、ビッグバンの体が見る見るうちに石と化していった。
ペトリフィケーション・・・歩行のユニット一体を『石化』効果で死亡させるスペルである。

「どうだ?降参するか?」

流駆が、再度宣告する。
ビッグバンは既に、ただの石の塊と化してカードに戻った。爆発することなく。

「しょうがないわね。降参しましょうか・・・。」




















「・・・まず聞きたいんだけど、カードをばらまいた目的ってなんなんだ?」

流駆が訊ねる。
因みに、3人のデックはそれぞれの手に戻っている。

「そうね・・・。これ、答えてもいいのかしら?」
「答えてもらうわ。一応、降参しているわけなんだし。」

ほとんど何もしなかった楓が言う。

「あえて言うなら・・・どうなるか。」
「・・・は?」
「カードをばらまいた時の世界の人間の反応はどうなのか。それが知りたかったのよ。」
「・・・何考えてるんだよ・・・。」

ぼやく流駆。

「それと、あなたたち召喚術師が六門世界とこの世界のつなぎ目を探してるらしいから。私達も探していたのよ。」
「それ、どうして知ってるんですか?」

こちらは本当に何もしなかった麻耶が訊ねる。

「あなたたちが話しているのを、偶然ダークネスに係わり合いがある人物が聞いたのよ。」
「ダークネスに係わり合いがある・・・?」

4人、考える。
最初に思いついたのは、炎だった。

「・・・いたぜ!あの、槌田とか言うおっさん!」
「・・・そうか・・・。あのおっさんは俺らが召喚術師であることを知っている。この話を聞いた可能性だってある!」

流駆も続く。
そのとき、唐突に楓が話し出した。

「それはいいけど、どうしてその人を知っているわけ?
係わり合いがあるとはいえ、あの人はダークネスの人物じゃないわ。面識でもあるの?」
「あら。なかなか面白いことを言うのね。」
「・・・真面目に答えて。」



「面識があるも何も、あの人は私の夫よ。私の名前は、『槌田 悠子(つちだ ゆうこ)』よ。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
このくらいの沈黙が流れた。










『ええええええええっ!?』









「あ、あのおっさん結婚してんのか!?うわ、信じらんねぇ・・・。」

炎が辛うじて口を開く。
他の3人は、ニの句が告げないでいる。

「質問は、終わったの?」

表情一つ変えないで悠子(ようやく名前で書ける・・・11話目と矛盾しますな)は言う。

「・・・あ、あぁ、そうだ。それで、探した結果はどうだったんだ?手掛かりでも見つかったのか?」
「それがさっぱり。で、それはどうでもよくなったからあなたたちに勝負を挑むことにしたの。」
「・・・なんで、そうなるんですか・・・?」

麻耶が困惑した表情で聞く。

「私達は召喚術師といっても、所詮は魔力を後から宿したカードを使ってのもの。
それに対して、あなたたちは自分の力でカードからどんなモンスターでも呼び出せる。
そんな人間に負けてたまるか・・・という、意地のようなものね。だから、これからもダークネスはあなたたちを狙うわよ。」

また、笑みを浮かべる悠子。しかし今度は、自嘲めいた笑みだった。
その後は聞くこともなくなり、悠子と別れ、帰路についた。














「ねぇ、少し考えたんだけど・・・旅に出ない?」

楓の唐突な提案に、3人は言葉をなくす。

「これ以上この町にとどまっての繋がり探しは無理よ。となれば、せっかくだし。」
「え、でも費用は・・・?」
「かかるのはせいぜい食費だけよ。移動にはモンスターを使うし、ほとんどは野宿になりそうだし。」
「学校は・・・休みか・・・。」
「そういうことよ。」

麻耶、流駆の質問を軽くいなす楓。

「よし、行ってやろうじゃねぇか!」
「お前、絶対何も考えてなかっただろ、今。」

いきなり肯定の意思を見せる炎。
流駆の突っ込みは、とても正しい。

「私も・・・行きます。」
「麻耶さんまで・・・!?」
「私も、何かしたいんです。役に立ちたいんです。」

麻耶の意思の硬さを見て、流駆は説得を諦めた。

「・・・これは、俺にも行けと言ってるようなものじゃねえかよ・・・。」
「じゃあ決まりね。親に言うかどうかは各自に任せるわ。」
『・・・ちょっと待て。』

いきなり、流駆のデックから太陽を睨む天使の声がした。

『そういう旅に出るのなら、装備品を選んでおけ。
モンスターが召喚術師である主たちに襲い掛かってくるやも知れないからな。』
「・・・いくつまで装備できるんだ?俺たちって。」
『・・・2つが限界だろう。
そして、主たちをユニットとして見たとすれば、せいぜい1/1程度の能力しかないことにも気をつけておけ。』
「解った。忠告、感謝するよ。」































そして、旅立ち当日の朝を迎えた。

「みんな、親には話したのか?俺は一応話したけど・・・あっさりOK。」
「うちは、何言ったって「よし、やって来い!」って台詞が帰ってくるからな。」
「私は話したわよ。説き伏せるのには時間かかったけどね。」
「私も話しました。そんなに説き伏せもしなかったんですが・・・。」

どうやら、全員が許可を得ているようだ。
考えてみれば、黙って出たなら大騒ぎになるはずなので、話さないわけがないのだ。

全員の外見を見てみる。普段着なのだが、装備している品が違う。

流駆・・・首に『太陽のロザリオ』をペンダントとしてかけている。
オールスペルを与えると同時に、戦闘スペルの効果を打ち消す能力も与える。
それと、腕に『月のアミュレット』が巻き付けてある。こちらは消耗品を打ち消す能力を与える。
どうやらスペルを重視し、アイテムはあくまで護身用とするようだ。
それと、彼はデックも改造している。聖・土の2属性の他に、水属性も追加した。

炎・・・腕に、『パワー・グローブ』をつけている。
「防御力をー2する代わりに攻撃力を+2」が何度でもできるアイテム。オールスペルも与える。
足りない防御力を補うために、持ってきたカバンの中には防御力を+2する『黄金の盾』が入っている。
・・・自分から殴りに行く気満々である。デックは変わらず、火属性のみ。

楓・・・流駆と同様にペンダントを提げているが、こちらについているのは『黄金の紋章』である。
効果としては、「タイプ:黄金」の装備品を一度に3つまで装備できるようになる。
彼女はこれ1つである。状況に応じて黄金の装備をつける気らしい。
彼女は、デックの風属性のカードの比率を増やした。

麻耶・・・迷わず『ブラック・ライトニング』を選んだ彼女。布に包んで、背中に背負っている。
彼女に弓矢の心得はないが、射るのが魔法の矢なので狙いさえすればほぼ命中するらしい。
それと彼女は特別に、矢筒も持ってきていた。カードを入れれば矢となって出てくる矢筒である。
いちいちカードを取り出す手間が省けるというわけだ。これも弓同様に布で包み、背中にある。
モンスターのサポートが主な弓矢の使い方であろう。
デックの改造はない。聖・魔の2属性である。


「さて、そろそろ行きましょう。」
「どんな旅になるんでしょうか・・・。」
「何があっても、俺に任せとけ!」
「・・・一応言っておくが、修学旅行じゃないんだぞ・・・。」

そして4人は、炎のファイア・ドラゴンと楓のスカイ・ワイバーンに男ペア・女ペアで乗って町を後にした・・・。



・・・はてさて、この先どうなることやら。
そしてそれは神のみぞ知る・・・・。





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