第15話「空中戦」
「ん・・・気持ちいい・・・!」
スカイ・ワイバーンの上で、楓が大きく伸びをする。
「楓さん、落ちないように気をつけてくださいね・・・。」
「大丈夫よ。そこまで子供じゃないんだし。」
その後ろに乗っている、麻耶が注意を呼びかける。
結構な高さを飛んでいるため、もし落ちたりすれば地上に紅い華が咲くことになってしまう。
「それと、いつまでも仰々しくさん付けで呼ぶ必要もないから。
呼び捨てでいいわよ、私もあの2人も。その代わり、私たちもあなたを呼び捨てにするからね、麻耶。」
「・・・私を呼び捨てにするのはいいんですが、私はやっぱりさん付けで呼ばせてもらいます。人を呼び捨てにするのはちょっと抵抗が・・・。」
照れたように言う麻耶。
「解ったわ・・・で、今の横の2人聞こえた?今後は麻耶って呼ぶこと。」
「おう、聞こえたぞ!遠慮なく呼び捨てにさせてもらうからね、麻耶さん・・・じゃなくて、麻耶!」
「・・・炎、耳元で叫ぶな・・・うるさい・・・。」
隣を飛ぶファイア・ドラゴンの背に乗り、楓の呼びかけに大声で答える炎。そして、その声にうんざりしている流駆。
「しかし・・・モンスターが多いとはいえ、意外と平穏なものだな・・・。」
流駆たちは今空の上にいるわけだが、たまに空を舞うバード系のモンスターやデーモン、ワルキュリアがいる以外は何もなかった。
そのモンスターたちが襲ってくる様子もない。いたって、平和である。
「・・・太陽を睨む天使、繋がりがある場所に特徴か何かはないのか?手掛かりがなきゃ探しようがない・・・。」
流駆が、太陽を睨む天使のカードの向かって話し掛ける。
『特徴・・・か。私もよくは解っていないのだが、少なくともそこはモンスターで溢れ返っていることは間違いないだろう。』
「なるほど。つまりは、モンスターが異常発生したところをしらみつぶしに探せってか・・・。先が思いやられるな・・・。」
何ぞと流駆がぼやいた時、麻耶が前方にある異変に気付いた。
「・・・楓さん、見てください。あれは何ですか・・・?雲、にしては黒すぎますし・・・。」
「そうね。なんなのかしら・・・。・・・ねぇそっち2人、どちらか双眼鏡持ってない?」
「流駆が持ってるし、もう見てるぞ・・・で、一体ありゃなんだよ、流駆?」
双眼鏡を下ろした流駆に炎が訊ねる。
「・・・見たいか?」
声までもうんざりさせながら、炎に双眼鏡を手渡す。
「えっと・・・?あれは・・・って、マジかよ!?(汗)」
「炎?一体どうしたの!?」
炎のあまりの驚きように、楓もつい声を大きくする。
「あそこに見えたのは、バードやバードマン、ハーピィの大軍・・・。ついでに言うと、軍の中心には『カイト・ドラゴン』に乗った人間がいたぞ。」
流駆が淡々と説明する。
「ダークネス・・・ですか?」
「多分な。というより、他に考えられないし。」
と、流駆が麻耶の質問の答えている間に、その軍がカイト・ドラゴンを先頭にして近づいてきた。
「お前ら、悠子を倒した召喚術師たちだな?ダークネスの刺客の、佐藤 幸喜(さとう こうき)が手柄を上げさせてもらうぞ!」
「手柄って何だよ手柄って・・・。」
「お前らを倒せば、ダークネスの中での俺の地位は格段に上がるんだよっ!」
と、一般的過ぎる台詞を叫びながら幸喜はカイト・ドラゴンのスペルワークで『ライトニング・ボルト』を放ってきた。
『カイト・ドラゴン』は風属性5レベル3/3、風のスペルワーク2つと、特殊能力『稲妻のブレス』を持つ。
そして、『ライトニング・ボルト』は風の戦闘スペル。「2Dして高い方の目」分の電撃ダメージを攻撃と同じように前のユニットから与えていく。
このとき、ダメージは4点。すかさず防御力5のファイア・ドラゴンが前に出て、これをやり過ごした・・・ように思えた。
「・・・し、死ぬかと思ったぜ・・・(汗)」
炎が珍しく冷や汗を流す。
ファイア・ドラゴンの上にいる流駆と炎は、電撃の被害を被りかねなかった。
今回は運良く免れたが、次どうなるかは解らない。
「さて、始めるぜ!リミットはお互いに無限大だ!繰り出せる全てのモンスターでかかって来い!」
幸喜は声高らかに宣言したが、流駆の表情は険しかった。
「リミット無限、だけどこの状況。必然的に歩行ユニットは使えないな・・・。」
「バードマンたち!あいつらの乗り物を蹴散らせ!」
幸喜が、まずはしもべのバードマンたちに攻撃を仕掛けさせる。
バードマン・・・に限らずハーピィやバードは基本的に素早い。簡単に先手を取って、ドラゴン2体を狙う。
その後ろに、バードマンを更に素早くする隊長がいるので、尚更速い。
「『レッサー・デーモン』、『キュクレインの矢』を!」
麻耶が、手早く呼び出したデーモンに得意の弓矢を撃たせる。
この『レッサー・デーモン』は魔属性レベル3の3/3で、アイテムワーク、魔のスペルワークを1つずつ持っている。
その手には、しっかりと『ブラック・ライトニング』が握られていた。
『キュクレインの矢』は、攻撃してきた相手にカウンターで3点の津波ダメージを与えることができる。
矢が、大量の水を纏いながらバードマンの群れを貫こうとしている。
「そいつは困るな。『滅びの粉塵』だ!」
幸喜がアイテムカードを翳すと、バードマンのうちの一体が不思議な粉を取り出した。
『滅びの粉塵』はアイテム1つを消滅させ、その効果を打ち消すカードだ。
「『マーキュラー』、滅びの粉塵を使用したバードマンに『輝きの光輪』!」
流駆も、モンスターを呼び出していた。
『マーキュラー』は、ガーディアンと呼ばれる生命体。聖属性レベル4、3/3。
特殊能力『輝きの光輪』は消耗品を使用したユニットに閃光の5点ダメージを与える。
「まだだ、『封印の札』!」
「だったらスカイ・ワイバーン、『ウィンド・カッター』。」
更に違うバードマンがアイテムを使おうとするが、楓のドラゴンによるスペルに切り裂かれる。
結局、キュクレインの矢がバードマン部隊を飲み込み、その全てをカードに戻した。
「流石!だが、上を見な・・・。」
「上?」
4人、一斉に上を見る。
そこにいたのは・・・ハーピィの群れ。その中心には、3体の『ムーンライト・ダンサー』。
風属性レベル2、0/2。その踊りは、ハーピィの攻撃力、防御力を2ずつ上昇させる。
「躍らせる前に倒します!『トキシンの矢』!」
レッサー・デーモンが別の矢を放つ。
今度の矢は、特殊能力を使用したユニットに猛毒による7点のダメージを与える。
「『ウィンド・カッター』だ!」
幸喜の言葉に応じ、ハーピィの一体が真空の刃を放つ。
「『ディスペル・マジック』だな。」
流駆の、マーキュラーによるスペルが、真空刃を消滅させた。
トキシンの矢が、ムーンライト・ダンサー一体をカードに戻した。
「チッ。だけどな、他の2体の踊りは終わった。行くぜ・・・一斉攻撃!」
ハーピィの群れが、流駆たちを襲った。ハーピィのほとんどが、今は5/5まで強化されている。
「流駆、どうする!」
「・・・仕方ないな。自分でスペル使うさ。『サンクチュアリ』!」
流駆が、太陽のロザリオと月のアミュレットにより与えられるオールスペル2つを使用し、聖域を作った。
「・・・うわ、自分でスペル使うって・・・相当きつい・・・!」
攻撃は退けたが、流駆は膝をついてしまった。
「じ、自分でスペル使った・・・?聞いてないぞそんなの!」
「言ってねぇからな!流駆、後は俺に任せろ!」
炎はそう叫ぶと、ファイア・ドラゴンを急上昇させて、ハーピィたちの真上まで来た。
「ファイア・ドラゴン、『灼熱のブレス』を放て!」
『やめておいた方が己のためだぞ、主よ・・・。』
炎の命令に、ファイア・ドラゴンが異を唱えてきた。
「な、何で!?」
『私のブレスは、吐くときにこの体が極度の熱を帯びる。人間が触れば大火傷程度ではすまないほどのな。』
「・・・うっ・・・ええぃ、だったらこいつで勝負だ!『ゲイボルグ』!」
炎が放ったスペルは、『フレイム・ストライク』とはまた別の炎の槍によるスペル。
スペルワークを2つ消費するが、その使用したユニットの合計レベル分の火炎ダメージを与えられる。
それも、敵パーティ内のモンスター全てに。
ファイア・ドラゴンのレベルは6。
よって、ハーピィたち全てに6点ダメージの火炎が降り注ぎ、ハーピィたちはカードに戻っていった。
「・・・強いな。だけど、このままじゃ意地でも終われないんだよ。鳥たち!狙いは、召喚術師だ!」
「!!」
幸喜の声に、バードの群れが流駆たちを襲った。
「みんな、飛べるモンスターを全て投入しろ!でなきゃ、自分がまずいぞ!」
流駆はそう叫びつつも、デックにいる飛行モンスターの全てを召喚した。
太陽を睨む天使と月に咲く天使を中心に、エンジェル、ワルキュリアが多い。
「うっしゃ!やってやるぜ!つっても俺はこいつしか飛べる奴はいないけどな!」
「飛行モンスターなら、私も得意よ。」
「デーモンのほとんどは、飛行できます・・・!」
炎は今出てるファイア・ドラゴンのみ、楓はハーピィやスピリット、麻耶はデーモンを中心に、それぞれ召喚する。
空中戦は、まだまだ終わらないようである。