第18話「vs嵐の魔神パズス」
「じゃあ行くよ、ストーン・バジリスク!戦闘スペル『ストライキング』だ!」
攻撃力を1D増強するスペルを放ち、ストーン・バジリスクを強化する樹。
攻撃力は10にまでふくれ上がり、周りのモンスターを蹴散らす。
「よっしゃ、突破口だ!頼むぜ、ファイア・ジャイアント!」
ほんの少しだけ出来たモンスターの包囲網の割れ目を、ファイア・ジャイアントが無理矢理広げた。
突破口は確かに開けたものの、ファイア・ジャイアントもカードに戻っている。
「今だ!みんな、切り込め!」
「解ってるわよ!『サンダー・エレメンタル』、足止めよろしく!」
「『ダークエルフ髑髏騎兵隊』も、お願いします!」
「僕がついてるから、大丈夫!」
4人は、どうにか包囲網を突破した。
「助かった・・・あ、やっぱり追って来てるし・・・。」
楓が、うんざりした表情で話す。
魔物の群れの勢いは、ほとんど衰えていない。
「・・・うざったいなぁ・・・『タイガーリリー』召喚!そして・・・。これでも喰らえ!戦闘スペル『クラック』!みんな、避けてね!」
「え、避けてって・・・どうやって!」
楓の言うことなど全く聞かずに、一瞬のうちにタイガーリリーを召喚、スペルを放つ樹。
『クラック』は土の戦闘スペルで、全ての歩行ユニットに地震の2Dダメージを与えるのだ。
たとえ、それが味方の、自分のユニットであったとしても。
ダメージは・・・なんと、6ゾロ。12点。
凄まじい地震と同時に、地割れが巻き起こった。
「おい、あんた・・・殺す気かっ!?」
とっさに近くの木にしがみついて、どうにかクラックの被害を逃れた炎が喚く。
楓、麻耶も似たような方法で避けている。
「いいじゃない、モンスターはほとんど仕留めたんだし。」
悪びれた様子を全く見せない樹。
「確かにね。あなたのモンスターもろとも・・・。」
楓が、冷静に話す。
ストーン・バジリスク、タイガーリリー共に、カードに戻っている。
「大丈夫大丈夫、もうほとんどいないんだから。後はよろしく、『エレファント』!」
樹は象を呼び出し、攻撃させる。
エレファントの出現で、全てに決着がつくと思われたそのときだった。
「・・・エレファント!?」
樹が、驚愕の声を上げる。
エレファントは、その身を赤々と燃え上がらせていたのだ。
「『フレイム・ストライク』のようね・・・。」
「でも、誰が、何処から!?」
麻耶が、周りを見渡す。しかし、モンスターが潜んでいる気配は、少なくとも麻耶には感じられなかった。
『・・・我なら、ここだが?』
「上!?・・・あれは、『嵐の魔人パズス』!」
楓が即座に上空を見上げ、フレイム・ストライクを放ったモンスターを見つける。
『嵐の魔人パズス』・・・風属性レベル4、3/3。火と風のスペルワークを持つ。
そして、雷雲を呼び出して敵を焼き払う能力を持つ。
『人間にしてはなかなかだな。やはり、召喚術師は伊達ではないということかな?』
パズスは、面白がっているような口調で話した。
「おい、パズス!お前もダークネスのカードから呼ばれたのか!?」
炎が、声を荒げる。
『お前の目に召喚術師は移っているか?我は、召喚術師などから呼ばれたのではない。自ら、繋がりを通ってこの世界へと来たのだ。』
パズスが話した言葉を、楓は鋭敏に聞き捉えた。
「と言うことは、あなたは繋がりがある場所を知っているって訳ね。・・・力ずくでも、聞き出すわ。」
『ホゥ・・・勇ましいことだ。だが・・・出来るかな?』
パズスの声は、嘲りの声に変わった。
「やってみなけりゃ解らないだろ!『オーク錬金術師団』召喚!そして喰らえ、『フレイム・ストライク』!」
手早くオークを呼び出し、フレイム・ストライクを放つ炎。
『フッ・・・!』
パズスは嘲りの声を変えずに、手を翳した。
すると、その手へ急激に電撃が収束する。パズスお得意の『雷雲』だ。
「やべ!誰か、対抗してくれ!」
「だめだよ!とっさ過ぎて、呼べるモンスターがいない!」
炎の叫びも虚しく、オークたちは電撃に焼かれ、カードに戻った。
『どうした?もう終わりか?』
パズスが、残忍な表情を浮かべながら笑っている。
「・・・『スノードロップ』、『ライトニング・ボルト』!」
いきなり、楓のモンスターが電撃を放った。3点のダメージが、パズスを襲う。
「楓さん!」
「これで・・・やったかしら?」
『・・・甘いな。』
パズスは無傷だった。その身に、炎の螺旋を纏っている。
使用した火のスペルワーク分だけ防御力を増強するスペル『スパイラル・フレイム』である。
「そんな、完全に虚をついたと思ったのに・・・。」
『それは、お前が思っていただけだ。我はそれほど甘くは無いぞ!』
パズスはそう言うと、自分もライトニング・ボルトを放った。・・・楓めがけて。
「『タイガーリリー』、『サンド・カーテン』を!」
樹が、これで3体目となるタイガーリリーを呼び出し、楓を守った。
その後ろにいるのは炎だが、黄金の盾でどうにか凌いだ。
「麻耶、弓矢はもう残ってないの?」
「後、一発だけ・・・これで決めます!」
麻耶は矢を番え、パズスを狙う。
『まだ何かするつもりか?』
相変わらずの口調のパズス。
「これでどうです!『ブレイズの矢』!」
麻耶が放った矢は、炎を纏いパズスへと飛んだ。
『馬鹿め。『フラッシュ・デトネイター』!』
「まずいよ!もう一度『サンド・カーテン』!」
パズスが放ったスペルに合わせて麻耶にスペルを放つ樹。
直後、矢が纏う炎よりも更に激しい炎が麻耶を包んだ。
『フラッシュ・デトネイター』は炎のスペル。
消耗品1つの効果を打ち消し、使用したユニットに火炎の2Dダメージを与える。
「・・・後は、何か出来る?」
「さぁ・・・少なくとも、俺はもう種切れだけど。」
力なく答える炎。
麻耶、樹も首を横に振るばかり。
『諦めたか。ならば4人仲良く葬ってやろう!『グングニル』!』
火風の複合スペル『グングニル』。
パーティ1つの全てのユニットの防御力を『2Dして低い目』だけ減少させる。
しかし、何もない人間は、直撃すれば即ち死である。
「やべぇ・・・運がよければ生き残れる・・・のは、俺だけ?」
炎がうめく。黄金の盾を持っている彼は、確かに助かる可能性がある。
しかし、女性3人は助かる術が無い。
「本当に、どうしようも無いんですか!?」
「諦めた方がいいかもね。・・・どうしようもないわ・・・。」
「そんな!・・・こんな時、流駆ならどうするんだろ・・・。」
樹がこぼした言葉を、炎、楓、麻耶が聞き逃すはずがなかった。
「流駆さんを知ってるんですか!?流駆さんは、生きているんですね!?」
麻耶がそう叫んだ瞬間、グングニルが4人の目の前で止まった。
『な、何だと・・・?』
初めて驚愕の表情を見せるパズス。
しかし、パズスがもっと驚くのはその後だった。グングニルが、自分めがけて跳ね返されてきたのだから。
『これは、『アイス・ミラー』・・・ぐぅぅ!』
パズスは、自らのスペルをその身に受け、苦悶の表情を浮かべた。
『アイス・ミラー』は、水土の複合スペル。
戦闘スペルや消耗品の効果を打ち消し、その使用タイミングが「普通」であれば、跳ね返す。
「・・・樹、教えてやろうか?」
4人とパズスは一斉に、その声がした方向を見た。
「・・・俺ならな、こういう手段をとるんだよ。」
そこに立っていたのは、片手を木について身体を支えている流駆だった。
その脇にはスペルを放ったと思われるモンスターが2体。樹のタイガーリリーと、水の精霊『ウンディーネ』だ。
『ウンディーネ』は水属性レベル2の1/2。水のスペルワーク、特殊能力『水の洗礼』を持つ。
『貴様か・・・貴様が我に屈辱を味あわせたのだな!人間如きが・・・死ね!』
炎たちが流駆に声をかけるよりも早く、パズスが雷雲を放った。
しかし、電撃の破壊力が落ちている。グングニルで、防御力が下がっているためである。
「・・・やな予感的中。大声出すな・・・傷に響くんだよ・・・。『クロスファイア』!」
『ガ、グ、グァァァァ・・・!』
ロザリオとアミュレットの力を借り、流駆は自力でスペルを放つ。
十字の聖炎が、対抗手段を無くしたパズスを完膚なきまでに焼き尽くした。
「あ、カード・・・えっ?」
樹がパズスのカードを回収しようとすると、カードが音を立てて砕けた。拾えたのは、ひとかけら。
「流駆!生きてたんだな!」
「死んではいないと思ったけど・・・安心したわ。」
「ほんとに・・・無事でよかった・・・!」
炎と楓、麻耶は流駆との再会に安堵した表情となった。
「・・・頼むから、大声出さないでくれ。傷に響く・・・。」
額に手を当てながら流駆がぼやく。
「そうそう。あの人とは知り合いなの?」
「樹か?知り合いというよりは・・・命の恩人、かな。」
流駆ガそう言うと、樹が4人に近づいてきた。
「流駆も無茶するよ。・・・とにかく、僕の家に行こう。お互いに自己紹介もしてないしさ。」
そう言うと、樹はすぐに歩き始めた。
楓と麻耶が、すぐにその後を追い始めた。流駆も、炎の肩を借りて歩き始めた・・・。