第20話「追っ手と不死者と」


「・・・ところで、これからどうするつもりだ?」

流駆が、4人に向かって話し掛ける。

「とりあえず樹の家から離れるようにして進んではいるけど、当てが全く無いぞ。」
「そんなこと言われても、私達にだってあるわけないでしょ?」

素っ気無く楓が答える。

「・・・腹減ったなぁ・・・。」

炎が、緊張感の無い台詞を遠慮なく口にする。

「確かに、もうそろそろ日が傾きますよね。」
「・・・どっか、コンビニみたいな所やってると思う?」
「さぁ・・・探せばあるんじゃない?」

女の子3人で話が進む。

「・・・じゃ、町に降りてみるか。どんな様子かもチェックしておきたいし。」

流駆がチェックしておきたいというのは、どの程度町に人がいるかということである。

「そうだな。とにかくメシは必要だ。ファイア・ドラゴン、降りてくれ!」

炎が、一気に火竜を降下させた。楓たちのスカイ・ワイバーンも続いた。

















「・・・少しは外出てる人もいるんだな。」

流駆が誰ともなしにいう。だが、視界に入るのはせいぜい4、5人である。

「店もやってる所はやってるみたいだし、さっさと買い物しちゃいましょ。」

楓の言葉に従い、5人は適当に開いているコンビニへと入った。














「こんなもんだな。さて、行くぞ。」

買い物を済ませた流駆が4人に声をかけて外に出ると、急にその足取りが止まった。

「流駆、どうしたの?何か・・・!」

樹も外に出てみると、視界に黒服の男たちが映った。

「樹お譲さん、見つけましたよ。さぁ、我々と帰りましょう。」

如何にもな台詞をはくが、樹を連れて帰ろうとしていることだけは流駆には解った。

「僕は帰る気なんて欠片も無いよ。連れ戻そうともしなくていいから。大変でしょ?」

樹は、きっぱりと言った。炎、楓、麻耶も集まってきている。

「誤解の無いように言っておきますが、樹お嬢さんの意思は関係ないんですよ。連れ戻しさえすればいいんですから。」

黒服のリーダーらしき人物は、感情のない声で言った。

「どうします?この少年を少し痛い目にあわせて、無理矢理帰ってもらう気にさせてもいいんですよ。」
「・・・それは勘弁して欲しいんだけどな・・・。」

流駆の声は聞こえてもいない。

「しょうがない・・・。」

流駆がそう言うと、黒服たちもいつでも飛びかかれるように構える。」

「・・・逃げるぞ!『ジャスティス』!」
「・・・ぅおっ!?」

流駆が、何の予備動作もなしにスペルを放った。
勿論、狙ったのはすぐ足元のコンクリート。だが、5人が逃げる隙を作るには十分だった。

「お、追え!」
「来るなよっ・・・もう、一発!」

更にジャスティスを撃ち、黒服の足を止める流駆。
その後は、威嚇で稼いだ時間を活かして、どうにか黒服たちを振り切った。


























「・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・。危なかったですね・・・。」

膝を抑え、肩で大きく息をする麻耶が言う。

「あいつらは振り切ったけど・・・ここ、何処だ?」

流駆があたりを見回す。なにやら、雑居ビルが立ち並んでいる所に5人はいた。

「もうそろそろ夜になるし・・・空いてるビル探さない?」
「・・・で、そこで一晩過ごす、ってか?」

炎の問いに、樹が頷く。

「確かにもう日が暮れるしな・・・でも、そう都合よく空いてるビルなんてあるのか?」

流駆が訊くと、樹はある方向を顎でしゃくった。

「あれなんてどうかな?ちょっと古いけどね。」

樹が示したのは、相当年季が入っているビルだった。

「なんだか、こういうビルを見ると・・・ねぇ、麻耶?」
「そうですね・・・あの出来事を思い出しますね・・・。」

自分たちが誘拐された出来事を思い出す2人。

「・・・まぁ、あまり贅沢を言える立場じゃないしな。いくらなんでも人は住んでないだろ・・・。」

流駆のその一言で、今宵の寝床が決定した。





















「・・・はぁ、こんなことやっててほんとに繋がりなんて見つかるのか・・・?」

夕食が終わった所で、流駆のぼやきが始まった。
幸いなことに、このビルには水道、電気が通っていたため、夜でも灯りを確保している。

「焦ることは無いと思います。ゆっくり行きましょうよ。」
「いや、焦ってるわけじゃないんだけどな・・・。」

やんわりと、麻耶に窘められる。
その時、ゆっくりと炎が立ち上がった。

「炎、どうした?」
「・・・ちょっとトイレ。探してくる。」

炎は、全員で待機している部屋を出て行った。

「・・・あいつは気楽だな。」
「炎は昔からそうだったでしょ?」

幼なじみ2人が苦笑する。

「・・・あ、デックを少し改良しようと思ってたんだ・・・。」

麻耶はそう呟くと、カバンの中からカードを取り出し始めた。

「改良って?」
「『聖』属性を除いて、『風』属性を使おうかと思ったんです。そうすれば、風使いは2人になりますよね?」
「へぇ。じゃあ、風使いとして私も少し首を突っ込ませてもらおうかしら。」

楓と麻耶は、カードを選別し始めた。
デーモンが主体なのは変わらないが、風のユニットの素早さが追加されるようである。

「麻耶は気付いてんのか・・・?」
「え、何が?」

流駆の言葉に反応する樹。

「彼女のデックから聖属性がなくなると、それを扱うのは俺だけになるってことだよ。」

その言葉に、樹は笑った。

「ふふっ、いいじゃん。流駆は強いんだし。」
「おだてても、何も出てこない。それに・・・俺は強くなんか無いよ。」

流駆も、苦笑した。

















それからしばらくして・・・。
流駆がふと時計を見ると、炎が出て行ってからもう1時間も経っていた。

「いつまでトイレにいるつもりだよ、炎の奴は・・・。」

流駆が、流石に遅すぎる炎に疑問を抱いたとき。

「・・・出来ました・・・新デック!」
「と言っても、聖のユニットを風のユニットに入れ替えただけだけどね。」

楓と麻耶が、こちらへ振り向いた。

「じゃあ・・・。早速僕と一勝負してみない?」
「そうですね。調整も必要でしょうし・・・。」

楓が自らのデックを取り出した時。





フッ





急に電気が消えて、あたりが夜闇に包まれて真っ暗になった。

「な、何ですか?ブレーカーが落ち・・・るわけないですよね。」
「あれだけ煌々とついていた電気が急に消えるなんて、普通無いよ・・・。」

麻耶、樹が少し混乱する。

「ちょっと、落ち着けよ。今プラズマ・ボールを呼ぶ・・・。」

流駆が、電撃を秘めて光る球体を召喚する。

「少しは見えるだろ・・・あれ?」
「どうしたんですか?」

流駆が辺りを見渡すのを見て、麻耶が怪訝な表情になる。

「・・・楓がいない。」
「えっ!?何で・・・いつの間に!?」

樹も慌てて部屋の中を見るが、楓の姿はなかった。

「炎さんもまだ戻って来てなくて、楓さんもいなくなっちゃったなんて・・・。」

そう言う麻耶の声は弱々しい。

「よし、じゃあ探しに行こう。」

樹が、いきなり言い放った。

「え、待ってた方が・・・。」
「大してこのビルは広くないよね?だったら、探すのもそんなに大変じゃないよ。」
「そ、そうですか・・・?じゃあ、私も行きます。」

麻耶は、探しに行くことに納得したようだ。
トントン拍子で話が進む中、流駆には既に反論する気は無かった。

「じゃ決まり!流駆、プラズマ・ボール貸して!」
「いや、俺も行く。さっさと2人を見つけて、もう寝たい・・・。」

因みにこのとき、時計の針はPM11:15を指していた。

「・・・頼むから、これ以上はぐれるなよ。」
「大丈夫だって!行こう!」

そう言って樹が部屋の外に出る。麻耶もすぐに部屋から出る。

「ほんとに大丈夫か・・・?」
『うわあああっ!』

いきなり、麻耶と樹の叫び声が扉の外から聞こえた。

「どうしたんだよ・・・っ!」

流駆が扉の外に出てみると、そこには自らの目を疑う光景があった。

「い、嫌っ・・・。」

「何でこんなのが・・・。」

「・・・何でゾンビなんているんだよっ!」

そう、流駆たちの目の前にいたのは、死にきれずに死体のまま徘徊する不死者・・・ゾンビだった。
それも、一体ではない。無茶なほどの数がいる。

「と・・・とにかく、逃げましょう!こっちに向かって来てます!」


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