第23話「大義名分」


一夜が明けて。
流駆たちは、再びドラゴンに乗り込んで空へと飛び立った。

「やれやれ、昨日は大変だったな流駆?」
「・・・そうだな。」

炎の言葉に、気の無い返事をする流駆。

「おい、朝だからってもテンションが低いぞ。もうちょっと気合入れろよ!」

しかし、もはや流駆は見向きもしない。虚ろに空を見上げている。

「何だ?お前、変だぞ?なんか悩みでもあるのか?」

流駆の態度に、怪訝な顔をする炎。すると、隣のスカイ・ワイバーンから樹が話し掛けてきた。

「昨日、楓を連れて返って来たときからちょっとおかしいんだよ。流駆、どうかしたの?」
「いや、何でもない・・・。」

その言葉にも、どこか気が無い。

「それは嘘ね。」

楓が会話に割り込んできた。

「流駆、正直に話したほうがいいわよ。悩みがあるって顔に書いてあるし、いずれ聞き出されるわけだし。」
「そうですよ。・・・それとも、私達には話せないような悩みなんですか?」

楓、そして麻耶の言葉に、流駆は溜息をついて話し出した。

「なぁ・・・この旅の目的って、お前らは何なんだ?繋がりを断つ、ってのは無しで。」

その言葉に、4人は顔を見合わせる。

「そんなの俺には必要ないぜ!何も考えてないしな!」
「安心しろ、お前の答えには期待していない。」

炎の答えを予想していたのか、流駆は即答した。

「まぁ強いてあげるなら、ダークネスがばらまいたモンスターをカードに戻す!それで十分!」

その言葉は予想外だったらしく、流駆は感心した表情になった。

「楓は?」
「そうね、繋がりを見つける為って言いたいんだけど・・・それを利用して、見聞を広めたいわね。」

14歳とは思えない目的であろう。次いで流駆は、麻耶に尋ねてみた。

「私は、召喚によって人の役に立てないかと思ってるんです。こんな私でも何か出来ることは無いかと・・・。」
「ふうん・・・。」

一人ずつ訊いていくにつれて、流駆の表情に陰りが差している。

「僕には訊くまでも無いでしょ。あいつから逃れて、自由を得るため!・・・ところで、流駆の目的は?」

その樹の言葉に、ますます流駆の表情が陰る。

「・・・無い。」
「え?」
「見つからないんだ・・・昨日、あれからずっと考えたけどな・・・。」

その言葉には、深い憂いが篭っていた。

「いいじゃねえか、別に。目的の無い旅ってのも。」
「駄目なんだ。正直な所、繋がりを探して断つだけなら俺なんていなくたって十分だと思う。」

今度の言葉は、4人を沈黙させた。
そして、次の言葉は意外な所から出てきた。

『つまり流駆、貴方はこの旅に繋がりを断つ以外の大義名分が欲しいのでしょう。』
「だ、誰だ?」

周りを見渡す流駆だが、見えるのは炎たち4人のみ。
声は、自分のデックから聞こえていた。

「女の声みたいだけど・・・誰だ?」
『私です。『月に咲く天使』です。貴方は大義名分を欲しがっている・・・違いますか?』

心の中を見透かされたかのように指摘された流駆は、苦笑を浮かべた。

「・・・そんな大層な物じゃない。でも、実際はその通りだ。」
『それなら・・・貴方達なら信頼できます。少し私の話を聞いてください。』

月に咲く天使は、5人が黙ったのを確認すると、ゆっくりと話し出した。

『実は、繋がりが出来た際にこの世界に迷い込んだ人間が5人います。その人たちを六門世界に無事戻していただけませんか?』
「ちょっと待てよ。それじゃ繋がりを見つけるのと大差ないじゃないか?」

流駆がそう言うと、月に咲く天使は更に話を続けた。

『・・・普通の人間なら、それで十分です。ですが・・・。』
「何か、問題でもあるんですか?」






『その5人は、モンスターでもあるのです・・・。』



































「ここか?その5人が隠れ住んでいるっていうのは。」
『そう。ずっと前からここにいる事は解っていたのですが、寄る機会が無くて。』

流駆たちが立っているのは、町外れにひっそりと建っている古い洋館の前である。

「まぁいいや。入ってみるか・・・。」

流駆が扉を開けると、そこには1人の女性がいた。

「だ、誰!?」

突然の来客に、警戒するその女性。金髪に青い目をしている。

「何だ、どうした?」
「また誰か来たのか!?さっさと追い返すぞ!」

奥からガタイのいい男と、長身白皙の青年が出てくる。

「ちょ、ちょっと流駆、良くない状況よ?」
「俺に言うなよ・・・月に咲く天使、何とか言ってやってくれ!」

慌てて月に咲く天使を召喚する流駆。その姿を見て、男たちは驚愕の表情となった。

「召喚術師!?それなら尚更追い返させてもらう・・・!」
『ルイン、少し落ち着きなさい。みんなも落ち着いて。』

月に咲く天使の言葉が響くと、奥から更に2人出てきた。1人は穏やかな目を持つ黒髪の少年、もう一人は緑色の髪を持つ女性だった。

「月に咲く天使!?久しぶりね!」
『レーゼ、久しぶり・・・と言いたい所なのですが、実は今日はゆっくり再会を楽しむためにここへ来たのではないのです。』
「じゃあ、何故だ?」

『この5人の召喚術師に、貴方達の事情を話したんです・・・。』
























「つまり、私達にこの子供達に従属しろ、と言いたいのですか?」

麻耶程ではないにしても丁寧に話すのは、リュカと名乗った最初の女性。

「この・・・ガキがか?繋がりを断てるってのか?」

ガタイのいい男が疑いの目を向ける。因みに、グラッドと名乗っている。

「あいにくだが、私には信用できんな。このような子供が・・・。」

と、これはルインと呼ばれた白皙の青年。

「あたしは悪く無いとは思うけどね。どうせここにいたって何も出来ないんだし。」

更に、レーゼと呼ばれた少女が話す。
黒髪の少年は、デクスと名乗ってからは全く喋ってない。

最も、喋ってないのは流駆たち5人も同じだった。緊張しているのだ。

『どうかしら?太陽を睨む天使もアーク・デーモンも彼らを信頼して召喚術師に選んだのよ。勿論私も。』

その一言は、リュカたちにかなり効果があったようだ。と、ここで樹が質問をした。

「あの、一ついいかな?どうして、人間だったのにモンスターになったりしたの?」

リュカ達は黙り込んだ。その様子を見て、樹も俯く。

「・・・じゃあ、こんなのはどうかな。君たち5人と私達5人、それぞれが1対1で勝負をする。貴方達が私達を納得させるだけの技量を持っていれば、もっと詳しい話をするわ。」

そうリュカが提案する。唐突な提案に流駆たちは戸惑う。

「君たちは結論を急がなくてもいいから。奥に5つ部屋があるわ。それぞれの部屋に、1人で私達は待ってる。そちらも各部屋に1人を割り当てて。」

そう言うとリュカはすっと立ち上がり、奥へと消えていった。

「リュカ・・・まあいいわ。ゆっくり考えて、決心がついてから来た方がいいわよ。」
「そうと決まったなら話は早い!お前ら、待ってるぜ!」
「私は手加減はしない。最も、誰も手加減などする気は無いと思うがな。」
「・・・・・・じゃあ、いつでも・・・。」

レーゼ、グラッド、ルイン、デクスも立ち上がって奥へと消えた。
























「で・・・月に咲く天使?俺たちはどうすればいいんだ?」
『彼女等の心の内を知ってください。その上でどうするかは、貴方達に任せます。』

そう言葉を残すと、月に咲く天使はカードに戻った。

「よっしゃ、行こうぜ!」
「待ちなさい、炎。心の内を知る・・・って、具体的にはどうすればいいか考えないと。」

楓が、いきり立つ炎を静止する。だが、それとは別に流駆が立ち上がって、奥へと歩き始めた。

「流駆まで!もう少ししてからでも・・・!」
「悪い。考えるつもりなら考えていてくれ。俺は先に行く。」

珍しく身勝手な行動に出る流駆を見て、4人は怪訝に思う。

「流駆さん・・・?」

麻耶がか細い声を出す。流駆は歩みを止めて、振り返った。

「要するに、勝てば事情が解るんだろ?だったらここは炎を見習う。」

そう言うと流駆は踵を返し、奥の部屋へと消えていった。

「待て流駆!俺も行くぜ!」

炎も走り去り、場には3人の少女が残された。

「・・・困ったものね。」
「その困ったものが増えて悪いんだけど、僕も行くよ。2人も必ず来てね!」

樹も立ち上がり、奥へと去っていった。

「しょうがないわね・・・。麻耶、私達も行きましょ。」
「そうですね。ここで考えたからって、結論が出るとは限りませんし・・・。」

楓と麻耶は、同時に奥の部屋へのドアを開ける。そこあったのは、更に5つのドア。3つに開けた形跡があった。

「分けて入れってことね。じゃ麻耶、後で。」
「楓さん、気をつけてください・・・。」

楓と麻耶は、それぞれ開けた形跡の無いドアの奥へと消えていった・・・。


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