少年たちの手記 第25話

第25話「楓vsルイン」


「適当に選んだけど・・・この部屋でいいのかしら?」

そう言いながら、楓はドアを開ける。

「ほぅ・・・。この部屋を選んだのはお前か・・・。」

声のした方向には、壁に寄りかかっている白皙の男がいた。

「あなたは、確か・・・。」
「ルイン。ルイン=サーヴァだ。」

ルインは、寄りかかるのをやめて楓のほうを見た。

「お前は、名乗らないのか・・・?」
「私は楓。草薙 楓よ。」
「楓、か。・・・率直に聞くぞ。月に咲く天使から何を・・・いや、どこまで聞いた?」

そのルインの言葉に、楓はちょっと考え込む表情になった。

「どこまでって・・・。ルインや、その他の4人は人間だけどモンスターってことしか・・・。でも、人間よね・・・?」

ルインは、楓の返答を聞いて溜息をついた。

「深くは知らされてないのだな。好都合だ。今からでも遅くない、私達のことは忘れろ。」
「わ、忘れろって・・・。」

思わぬ言葉に、楓は困惑する。

「悪いが、月に咲く天使がどう言おうとも私はお前達を信用できない。証が無い限りな。」

ルインの口調は、どことなく寂しげな様子だった。

「・・・矛盾してない?私やみんなは、その証を立てるためにこの部屋へと入ったのよ。なのにそんなこと言われる筋合いは無いわ。」

その言葉を聞いたルインは、更に深く溜息をつく。

「・・・だからだ。」
「え?」
「私たちは本気でお前たち倒しに・・・いや、殺しにかかるだろう。死なせたくないのだ。」

それでも、楓は部屋を出ようとはしない。

「ますます矛盾してるわ。容赦しないって言ってなかった?それが今更・・・。」
「・・・つまり、出て行く気は全く無いんだな。仕方が無い・・・。」

ルインがそう言ったとたん、急に彼を中心として魔力が渦巻き始めた。

「なっ、何よこれ・・・!?」
「見せてやろう。私の、魔物の姿を・・・!」

その言葉を最後に、閃光がルインの体を覆った。








































「・・・ん・・・え、えぇっ!?」

楓が目を開けたとき、そこにルインの姿はなかった。
代わりに、大きな翼を背から生やした魔人の姿がある。

『『マルドゥーク』・・・これが私の魔物の姿だ。』
「また大層なものになったわね・・・確かに、あっけなく私を殺せそうね。」

『マルドゥーク』・・・魔人なのだが、その実は竜魔人。種族はドラゴンである。
風属性の7レベル。7/5で風スペルと竜巻耐性を持つ。

『楓。お前にこの姿となった私が倒せるか?』
「それは・・・正直、難しいわ。でも・・・。」

楓はそう言うと、3枚のカードを取り出す。

「どうなるかなんて、やってみなければ解らないんじゃない?」

カードが一瞬光ると、楓の身体に黄金の装備が装着された。
『黄金の槍』、『黄金の鎧』、『黄金の兜』の3装備を、黄金の紋章の力で身につけている。

『なるほど。黄金装備で身を固めたか・・・。』
「・・・以外に軽いのね、黄金の装備って。鎧なんて私に合わせたような形状になってるし。」

そう。黄金の鎧や兜は、楓の体格に合わせてその形状と重量を変えていた。もちろん、攻撃力と防御力を上げる効果は損なっていない。

『フッ。それで私を倒せればよいのだがな・・・。』
「・・・さっきから聞いていると、よっぽど倒されたいみたいね。だったらやられてくれない?」

楓が皮肉を言うが、ルインは顔に憂いを浮かべる。

『生憎だがな、そうもいかないんだよ。』
「何故?」
『私は・・・疑り深いからな。』

自嘲めいた笑みを見せるルイン。

『お喋りはここまでだな・・・いつでも来い。』

その言葉を最後に、2人の言葉と動きはぴたりと止まった。
お互いに、すぐに一撃を加えられる距離である。

「・・・(どうする?)」

楓は、攻めるべきか迷っていた。黄金の装備で、攻撃力は5。攻撃すれば、倒せることは倒せるのだ。

「(でも、先に動かれたら・・・。)」

先に動かれたら。容赦ない一撃を受け、殺されるだろう。

「(頼みの綱はスペル、か・・・。)」

そう考えながら、胸元に光る紫色の宝石を見る。
これは『フリスアリスの首飾り』。風スペル2つと竜巻・電撃に耐性を得ることが出来る。

『・・・どうした?怖くなったか?』
「死ぬかもしれないから、そうなるのも不思議じゃないわ。」

実際の所、楓は怖がってはいないのだが、とりあえずそう返しておいた。

『確かに不思議ではない。だが、それでは私は倒せない。死ぬだけだ。』
「そうかもね。・・・じゃあ、行くわよ!」

楓は意を決して、ルインに向かって走り出した。既にイニシアチブに+1されているため、早い。

「速さで勝負ということか・・・面白い、その勝負乗った!」

ルインも突撃を始めた。イニシアチブを持ってはいないが、楓とは似たような速さである。

『『スピード』!』
「『ワールウィンド』!」

両者、自分に加速系のスペルをかけ、更に速度を上げる。

速いのは・・・楓だ。

「悪いわね、ルイン。速さ勝負は・・・私の勝ちよ。」

かなりの速度でルインの脇を通り過ぎた楓が、槍を構え直す。
それと同時に、ルインの肩の辺りから人間と変わらぬ紅い鮮血がしぶいた。

『その行動力と度胸・・・。六門世界には、そこまでの召喚術師はそういないぞ。』
「誉めてるの?それとも貶してるのかしら?」

ルインは苦笑しながら、元の人間の姿へと戻った。肩からの出血は、止まってこそいないがかなり少なくなっている。

「ふむ・・・。楓、お前は何か武道をやっていたのか?あれほど黄金の槍を精確に使えるとは。」
「経験0。それに、筋力も無いわ。何で使えたのかしらね。」

ルインの問いに、楓は黄金装備をカードに戻しながら答えた。

「はは・・・何処までも度胸のあることで。まぁいい。私は負けたんだ。何も言うまい・・・。」
「ちょっと、それじゃ困るわよ。」

黙りこくろうとしたルインに憮然となる楓。

「ルイン達の目的・・・。ちゃんと教えてもらうからね。」


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