第29話「真実と敵」


「・・・どうやら、私たちが最初のようだ。」

ルインは最初の大広間にまだ誰もいないことを確認した。

「心配しなくてもいいわよ、ルイン。すぐ出てくるわ、みんな。」
「どうだかな・・・ん?」

楓と床に座り込んだと同時に、ドアの奥から出てくる人影を確認した。

「ルインか?・・・その様子だと、お前も負けたな?」
「グラッドか・・・お前に言われる筋合いはどこにもない。」

グラッドの後ろに、炎もいる。

「どうやら、勝ったみたいね。」
「あたぼうよ!俺はそう簡単に負けやしねぇぜ!」

妙にテンションが高い炎。その間に、また誰かやってきた。

「あ、炎に楓!2人とも勝った?僕は勝ったよ!」

樹である。同時にレーゼも出てくる。

「今の所は全滅、か・・・。」
「後2人も、負けてるかもね?」

ルインが重々しく言うのに対してレーゼの口調は軽かった。
そして、再び人影が現れる。

「みんなゴメン。僕負けちゃった。」
「デクスもか。後はリュカのみだな・・・。」

少し遅れて、麻耶が出てきた。

「皆さん、大丈夫ですか?」
「麻耶も勝ったんだね。ということは・・・。」
「こちらの残りも、流駆だけってことね。」
「あいつなら大丈夫だ・・・多分勝ってるぜ!」

と、4人が口々に言ったところで流駆が出てきた。

「俺が最後だったんだな。みんな勝ったろ?」

流駆の言葉に、揃って頷く。リュカも出てきた。

「・・・あれ、みんな負けたの?」
「そうみたい。この子達やるわよ。」
「話しても・・・いや、任せてもいいと俺は思うぜ。」
「・・・どうしたものか。」
「そうだね・・・でも、あまり背負わせたくないし。」

「・・・そこの5人はさっきから何を話してるんだ?」

ひそひそ話を始めたリュカたちに、流駆が怪訝な顔をする。

「一応俺たちはみんな勝ったんだ。もう少し詳しい話を聞かせてもらえるんだろ?」

リュカ達は沈黙し、そして口を開いたのはやはりリュカだった。

「そうね。約束は守りましょう・・・。」















「私たちは元々、六門世界に住む科学者だったの。」

レーゼがまず話し始める。

「ある日、私たちはある研究のために出かけたわ。普段人は避けて通る、魔が憑いているといわれる洞窟に。」
「危なっかしいわねぇ・・・。」
「やめておけばよかったわね。今更遅いけど・・・。で、ある程度魔法の心得があった私たちはその奥まで進んだわ。」

「探索は比較的順調に進み、最深部と思われる地点へと到達した。だが、我々はそこで見てはならないものを見てしまった・・・。」

TVの大袈裟なテロップのような台詞のルイン。

「そこで行われていたのは、何だと思う?」
「・・・?何かの、儀式ですか?」
「でなきゃ、激しい戦闘だろ!?」

麻耶と炎、発想におもいっきり差が出た。

「2人とも正解だ。そこで行われていたのは儀式と・・・血の海を作り出していた戦闘だ。」
「うぇ・・・。」

樹が顔を顰める。

「そして、その儀式ってのが繋がりを開くための儀式。」
『・・・!』
「それを止めるために戦っていたのは2人のワルキュリア。そのうちの1人が、リュカだ。」

「で、でもなんで繋がりを開くための儀式だって解ったんですか?」

麻耶が疑問を投げかける。

「・・・今はあまり使われないけど、儀式スペル『テレポート』は知ってるわよね。あれに雰囲気が似ていたのよ。
違うことといえば、テレポートとは比べ物にならないほどの魔力が注がれていた点。だからピンと来たのよ。」

レーゼが説明する。

「その戦いに我々は目を奪われていた。だが、向こうはそんな我々に気付くといきなり攻撃を仕掛けてきたのだ。リュカはとっさに我々を庇い、傷を負った。」

ルインが、再度説明を開始する。

「逃亡を試みた我々だが、いつの間にか道は塞がれていた。絶体絶命だったよ。」
「確かに危なかったな。しかし、良くあんなタイミングで繋がりが開いたよな・・・。」
「・・・どういうことだ?」

流駆が眉をひそめる。

「私は手傷を追い、もう一人のワルキュリアも追い詰められそうだった。このままならみんな殺される・・・そう思った時よ。繋がりが完成したのはね。」
「そう。とっさにリュカはあたし達を抱え、繋がりに飛び込んだのさ。」

レーゼが後を引き取る。

「・・・我々の後を追って、何体かの魔物も繋がりに飛び込んだ。大体はリュカが切り払ったんだが・・・我々に肉薄した魔物もいた。」
「肉薄した・・・じゃあ、モンスターになった時っていうのは・・・?」
「殺されると思ったけど・・・この時、あることが解ったのよ。まだ繋がりは完全なものじゃなかったの。」
「完全なものじゃない?それが何か関係があるの?それにどうしてそんなことが・・・?」

楓がまくし立てる。

「繋がりの中は・・・何て言えばいいかしら・・・魔力が滅茶苦茶に歪んでいたのよ。しかも、不安定。
そんな中では魔法も危なっかしくて撃てやしなかったわ。攻撃をギリギリで避けながら繋がりを進んだら・・・」
「進んだら?」

「急に、繋がりの中の魔力が暴走した。原因は不明。不完全だったから、という結論を私はつけている。」
「その後はあまり意識がないの。気付いたら、この家の周辺にいた。私は4人を見て驚いたわ・・・。」
「それってどういう・・・?」

樹が頭の上に?マークを浮かべている。話をまだ理解していないのか。

「驚くのも当然だ。その時私たちは・・・まさに半身半魔と言うに相応しい姿だったのだからな。」
「そうだな・・・。俺は妙に身体がでかくなってたし、ルインの背には大きな翼。レーゼは茶髪が緑の髪になってたし、デクスに至っては豹の顔だったからな。」
「つまり、身体の一部がモンスターのものになっていたと。・・・じゃあ、人間とモンスターの姿を取れるようになったのは何でだ?」

流駆が訊ねる。

「・・・月に咲く天使のおかげだ。彼女が、私たちを人間とモンスターに自在に変化させるようにしてくれた。」
『・・・本当は、モンスターを分離させるべきだったのですが・・・私の力量ではそこまでは・・・。』

カードから、月に咲く天使の鬱な声が聞こえる。

「まぁ、人間としての身体を取り戻させてくれただけでも感謝してるよ。・・・髪の色だけは残ったけどね。」
「最大の例外はデクスだろ?こいつは、人間時と魔物時で性格が変わるからな。」
「じゃあ、私が戦っていたときっていうのは・・・。」
「あれは僕の性格じゃなくて、オセの性格。思考は共有してるみたいだから変身しても意識はあるけど・・・。」

デクスが、苦笑交じりに答える。次いで口を開いたのは楓。

「・・・月に咲く天使に訊くわ。どうしてこの人たちに出会ったの?」
『・・・恐らく、そっちの儀式が完成した頃、六門世界のいたるところで時空のねじれが発生しました。それにのまれたんですよ・・・。』
『私とアーク・デーモンも同様だ。私たちは2人揃ってこの世界へ落ちてきて、この状況をどうにかできる人物を探していた。』
「・・・で、俺たちってことか。じゃああの時の大砂蟲も。」
『カードの状態で落ちてきたところに、歪んだ魔力が降り注いだのだろう。』

『私も召喚術師を探していたわ。そうしたら召喚される感覚があった。それに従ってみたら・・・でてきた所は流駆の所。』
「楓と麻耶が捕まった時の事だろうけど・・・偶然にしても出来過ぎだ・・・。」
「・・・アーク・デーモンに言わせれば、それも必然だったのかも知れませんね。」

流駆のぼやきに、麻耶が答える。

「・・・あと、一番気になることがある。」
「何だ?」
「繋がりを開こうとして儀式を行っていたのは・・・誰だ?」

その流駆の言葉に、ルインは口をつぐんだ。

「・・・いいわ、ルイン。私が言う。」

リュカが、意を決したように口を開く。

「・・・六皇子よ。」
『六皇子!?』
「そう、冥界の六皇子。アスモデウス、アスタロト、ベリアル、サルガタナス、ダコン、ベルゼブブの6大デーモン。」

敵になるであろう相手の名を聞いて、動揺する流駆たち。

「でもどうして、六皇子が繋がりを開こうとしてたんですか?」
「それは解らないわ。何かの目的があるのだろうけど・・・。」

と、リュカが言った所で、家が揺れた。



『こんな所に隠れていたのか・・・。』



外から、奇妙な声がした。

「・・・アスタロト・・・!」
「何ですって!?」

リュカの呟きに、楓が叫ぶ。

『そこにいる5人の子供は召喚術師か・・・。ならば挨拶をせねばならんな。受け取っておけ・・・。』

そこまで言って、声は消えた。

「・・・挨拶・・・?」
「外だ!みんな、早く!」

デクスがいち早く飛び出る。次いで流駆。その他も一気に出てくる。

「あいつらは・・・『マレブランケ』だ!」

流駆たちの目に映ったのは、残虐な笑みを浮かべた悪魔『マレブランケ』が3体。
魔属性レベル4、4/3でアイテムワークにオールスペルを1つずつ、更に儀式スペルに耐性がある。

「厄介そうだな・・・。どうする?」
「どうするも何も、蹴散らさないと殺される。行くぞ、『太陽を睨む天使』召喚!」

流駆が放ったカードから、太陽を睨む天使が現れた。

「一気に行くぞ!『太陽の槍』!」
『言われるまでも!』

「召喚の腕も、かなりのものね・・・。」
「とにかく、援護するわよ!」

レーゼが叫んだ直後、太陽を睨む天使にウィンド・カッターが迫った。

「ここは任せろ!『エア・ディスラプト』!」

ルインが放った風を砕くスペルが、真空刃を無力化せんと飛ぶ。
だが、ウィンド・カッターを放ったマレブランケはそれに合わせて、『魔力のスクロール』を開いた。

「やらせないっ!」

リュカが滅びを粉塵を放つ。魔力のスクロールは砕け散った。
それを見た違うマレブランケが、今度は『封印の札』を放つ。

「甘いんだよ!『フラッシュ・デトネイター』!」

炎がアイテム暴発のスペルを放った。とっさに3体目のマレブランケが『強靭の薬』を投げつける。
だが、封印の札は灰となった。

「どうだ!」
「まだ、来るぞ!」

次に飛んできたのは、『ジャスティス』。

「させないよ!『エンデュランス』!」

樹とレーゼが、同時にスペルを放つ。
どう足掻いてももうジャスティスは通らないが、最後に『プラズマ・インパクト』が放たれた。

「しつこいな・・・これで最後だ!『ディスペル・マジック』!」

流駆が、プラズマ・インパクトを消滅させる。
全ての対抗手段を失ったマレブランケたちは、太陽の槍に貫かれ、カードに戻った。

戦闘を終えた10人は、糸が切れたようにその場に座り込んだ。


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