第3話 「自分達以外の召喚術師」
「じゃ、またな。」
「おぅ、じゃあな。」
「また明日ね。」
この3人は、1つのアパートに揃って住んでいる。
流駆は自分の家の玄関を開けた。
「ただいま〜。」
何故か間延びした声の流駆。
「流駆?お帰り。」
流駆の母親だ。
「あれ、翔也(しょうや)は?」
翔也は、流駆の2つ下の弟である。
「まだ帰ってきてないわよ。」
「ふ〜ん、あいつが俺より遅いなんてあるのかね。」
流駆は、自分の部屋のドアを開けると、鞄を放り出した。
そして、ベッドの上に寝転ぶ。
「・・・モンコレのモンスターたちが、ねぇ・・・。」
1人呟く流駆。
「でも、まだ信じられないな・・・。」
そんなことを考えていたとき、隣りの居間からテレビの音が聞こえてきた。
母親がつけたらしい。
「流駆、ちょっとこっち来てごらん!」
興奮した声で流駆を呼ぶ母親。
「ったく・・・どうしたの?」
呆れ顔の流駆。
「ちょっ・・・これ!」
母親はテレビを指差す。
「はぁ?テレビがどうか・・・・・・!!」
流駆は、自分の目を疑った。
テレビの向こうでは、赤い恐竜が暴れていたのだ。
「何で今恐竜が現世にいるんだよ!?(汗)」
「し、知らないわよ!(汗)」
「(まてよ・・・こいつはまさか!)」
流駆は部屋へ走り、モンコレのレアカードから1枚を取り出した。
「間違いない・・・『レックス』だ!」
『レックス』はダイナソア・・・恐竜のユニットだ。
吹雪に弱いという弱点はあるものの、それでもレベル7の7/7だ。
「母さん、それはどこにいるんだ!?」
「ま、街だけど・・・ちょっと、流駆!やめなさい!」
母親の言葉に耳を貸さず、流駆は外へ飛び出した。
「流駆!テレビ見た!?」
1つ上の階から、楓の声がした。
「楓、急ぐぞ!街がぶっ壊れちまう!」
「炎は?」
「呼んでくよ、当然!」
だが、炎も既にテレビを見たらしく、
3人は階段の下でのはちあわせとなった。
とにかく3人は、レックスが暴れている町へ向かった・・・。
街にたどり着いた3人は、レックスの真正面に立っていた。
因みにレックスの目には、3人など映ってはいない。
「気付いてないみたいだから、一気にかたずけるわよ。
私に任せて・・・『ホワイト・イエティ』、『スノードロップ』。」
楓は一歩前に出ると、小さな妖精と白いイエティの変種を呼び出した。
妖精はレックスの目に映らなかったが、イエティは目に映るには十分な大きさだった。
レックスは、ホワイト・イエティに襲い掛かった。しかし、イエティの方が速かった。
「よっし、イエティ!『眠りの粉』を!」
つい1時間ほど前に大砂蟲にかけた粉を、今度はレックスにかける。
効果覿面、レックスは眠りの淵に落ちた。
「やった!じゃあスノードロップ!」
『はい!』
楓は、スノードロップに言った。
「戦闘スペルって、どうやって使えばいいの!?」
・・・・・・。
白い空気。
楓は至って真剣な顔つきだが、流駆と炎はコケている。
それどころか、スノードロップさえも肩を落としている。
ホワイト・イエティは呆然としている。
『・・・ユ、ユニットのスペルワークに合ったスペルのカードを翳せば、スペルは発動されます・・・。』
なんとか、スノードロップが説明する。
「じゃ、じゃあ改めて・・・。」
仕切りなおす楓。
「スノードロップのスペルワーク『水風』で、『ゼピュロス』!」
冷気の呪文のカードを翳す楓。
すると、カードに宿った魔力がスノードロップに伝わったらしく、彼女らは呪文の詠唱を始めた。
そして、それはすぐに終わった。
スノードロップが冷気のスペルを放つ。
それは一瞬にしてレックスを包んだ。
「やるな、楓!」
「ダメージがどうあれ、これでレックスは仕留められるはず!」
やがて、視界を塞いでいた冷気が晴れると―――。
そこには、全く答えていない様子のレックスがいた。
当然、目は覚めている。その上、不機嫌のようだ。
「・・・嘘でしょ?(汗)」
呆然とする楓。
その内に、ホワイト・イエティは踏み潰され、カードに戻ってしまった。
スノードロップは3人の側にいる。
「・・・楓、あそこを見な。」
炎はそう言うと、レックスの足元を指差した。
そこには、しゃがれた老婆といった風貌のモンスターがいた。
「あれは確か・・・『ゴブリン呪術強盗団』・・・」
『ゴブリン呪術強盗団』は、1レベルの1/1だが、
土のスペルワークを2つ持っている。
因みに、流駆のデックにも組み込まれている。
「大方、防御魔法の『レジスト』でも使ったんだろ。」
素っ気無く流駆が解説する。
「でも、どうしよう・・・私のデックにはゼピュロスは1枚しかないのに・・・」
「またレジストなんて使われたらやっかいだしな・・・」
悲観する楓に、策を考える流駆。
「じゃあ、強盗団は俺が何とかしてやらぁ!」
突如、炎が言った。
「どうするつもり?」
楓が訊ねる。
「まぁ見てなって。まずは・・・これだな。」
炎は一枚のカードを取り出すと、地面にそのカードを置いた。
「現れろ・・・『ストーン・サークル!』」
アスファルトの地面から、巨大な石柱が現れた。
「ストーン・サークル・・・なるほど、儀式スペルか。」
感心する流駆。
「よっし・・・喰らえ、『コール・ライトニング』!」
稲妻のスペルを放つ炎。
稲妻はレックスたちを襲う・・・と思われた。
しかし、稲妻はレックスたちの手前ではじき返り、スノードロップを襲った。
スノードロップは名前に反し黒焦げになり、カードに戻った。
「・・・か、『カウンター・リチュアル』・・・。」
儀式スペルをはじき返す儀式スペルだ。
「・・・ってことは、これは他の召喚術師が呼び出したユニット!?」
流駆が叫ぶ。
普通、モンスターが儀式スペルを使うことなどありえない。
「それは後で考えることにして・・・もう1発いくぞ!」
そう言って炎が取り出したのは、先程とは別のカード。
「いくぞ!『デス・スペル』!」
放ったスペルは、死の呪文。
ゴブリンは徐々に苦しみだし、カードに戻った。
「・・・炎・・・?」
「どうした?楓。」
楓の方に向き直る炎。
「どうして、レックスのほうを仕留めなかったのよ・・・。」
・・・・・・。
炎は答えない。
どうやら何も考えてなかったらしく、額から汗が一筋流れる。
「ま、まぁとにかく・・・いくぜ!『ラプンツェル』!『ダイヤモンド・ビースト』!」
流駆がモンスターを呼び出した。
当然レックスも反応するが、流駆たちのほうが速い。
「俺もスペルだ・・・ラプンツェルのスペルワーク『土』で、
ダイヤモンド・ビーストに『アース・サークル』だ!」
ラプンツェルは流駆のカードに答え、土の魔法陣の力をダイヤモンド・ビーストに与えた。
ダイヤモンド・ビーストの力が2倍に膨れ上がる。
ダイヤモンド・ビーストが自らの何倍も大きさのレックスを、体当たりの1撃で打ち負かす。
レックスは、カードに戻った。
「ふう・・・。どうにか倒せたな・・・。」
流駆が安堵の表情を浮かべる。
「でも、あれを呼んだのって・・・誰?」
楓がそう言った時、人影が通り過ぎていった。
しかし、3人の中にそれに気付くものはいなかった。