第4話「召喚術師の対決」
レックスが街で暴れたその翌日。
いつもの3人は流駆の家にいた。この日は日曜日。
あの後3人はこのレックスについて話すことを決めていたのだ。
余談だが、流駆の弟である翔也は昨日どこにいたかというと。
何のことは無い、学校帰りに友人の家で遊んでいたのだ。
帰った後、母親に冷たい目で見られたが。
「流駆、家族はどうしたんだ?」
家に流駆以外がいないのを見て、炎が訊ねる。
「母さんはどこかの講演会を見に行ったし、翔也は友達の家行った。」
簡単に流駆が答える。
この家は母子家庭。流駆は父親の顔を覚えてはいない。
「あっそ。」
炎も素っ気無い。
「ねぇ、それよりも・・・あのレックス、どう思う?」
楓が本題を持ち出す。
『う〜ん・・・。』
と、話を持ち出した楓を含めた3人が悩む。
数分後、言葉を発したのは流駆たちの中にはいなかった。
『六門世界からの召喚術師かもしれん・・・』
「その声は・・・『太陽を睨む天使』か?」
そう、言葉を発したのは太陽を睨む天使だった。
ただし、実体化してない、カードのままの。
「ちょっと待ってよ。六門世界の召喚術師って・・・『ホーリィ』やら『カオス』やらのことなの?(汗)」
『ホーリィ』、『カオス』などは六門世界に登場する召喚術師。
『そうと決まったわけでもないが・・・考えられない話ではない。』
そう言った時だった。
突然、轟音が鳴り響いた。
「な、何だ!?」
「外で何か・・・。」
「見て!モンスターが!」
窓から外を見てみると、そこには2,3匹のモンスターがいた。
そして、その後ろには人影が。
「あいつが召喚術師か?」
『おそらくは・・・』
尋ねる流駆に、答える天使。
「出て来い!さもなくば焼き尽くすぞ!」
召喚術師と思われる男が叫ぶ。
「よっしゃ、行くか!」
「はいはい。」 「ふぅ・・・。(嘆息)」
一段と気合が入ったのは炎。
流駆、楓は実に気の無い返答だった。
「・・・あんた、誰だ?」
外に出てきた流駆が静かに聞く。
無論、楓と炎も横にいる。
「俺の名前は槌田 一樹(つちだ かずき)。27歳だ。」
「・・・年まで聞いてねぇよ、おっさん。」
一樹と名乗った男に冷ややかなツッコミを入れる流駆。
「・・・おっさんだと・・・!?」
怒ったらしい。
「貴様ら・・・ガキのくせに・・・!」
「突然道の真ん中でモンスター呼ぶ奴に言われたくねえよ。」
冷ややかなツッコミその2。
「流駆、俺が勝負していいか?」
と、明らかに楽しそうな声で炎。
「俺は別にいいけど・・・楓もいいだろ?」
傍らで沈黙を守っている楓に訊ねる。
「いいわよ、別に。どう見てもこの世界の人間だし。」
楓にとっては、いささか期待外れだったようだ。
「ちょっと待て!俺を無視して話を進めるな!」
と、一樹がわめき散らした。
「うるせーよ、おっさん。とにかく、相手はこの俺だ。」
「おっさんって呼ぶな!」
「行け!『ベリアル』!」
一樹が、炎の魔人に進軍を命ずる。
目の前に放ったカードによって作られた地形『道』に。
そのさらに前の地形『魔法陣「陽炎」』には、既に炎のモンスターが待機している。
『オーク砂漠強行隊』『オーガの番兵』『オーガの女呪術師』の部隊だ。
「じゃあ、俺も遠慮なく進軍させてもらおうかな。そこの『道』に!」
炎の命令を受け、部隊はベリアルの待ち受ける道に進軍した。戦闘だ。
「即時召喚は?」
炎が訊ねる。
「遠慮なくさせてもらうぜ。出でよ『アンデッド・ビースト』!」
一樹が放ったカードから、怪しい瘴気を放つ魔物が現れる。
「へぇ・・・即時召喚できるレベル3のユニットか・・・。」
流駆が物珍しそうな目で見る。
普通、即時召喚で呼べるのはレベル2まで。
だが、この『アンデッド・ビースト』は例外で、レベル3だが即時召喚できる。
「じゃあおっさん、ダイスを出しな!」
「だから俺はおっさんじゃねぇ!」
と言いつつも、お互いにダイスを振る。
この場合のダイスとは、六面体のサイコロ。
そして出た目は、一樹が「5」、炎が「3」だった。
「俺からだな。喰らえ!ベリアル、『爆炎のウィップ』だ!」
ベリアルが炎の鞭を炎のパーティに振るう。
しかし炎は、不敵に笑った。
「オークたち、『砂漠強行軍』の力を与えるんだ!」
オークたちが何かすると、炎のパーティは赤い衣のようなものに包まれた。
そして、炎の鞭はその衣によって防がれる。
「し、しまった・・・くそっ、攻撃だ!」
その命令に従ったのはアンデッドビーストのみ。
ベリアルは鞭を振るったことにより既に『行動完了』状態となっている。
「そいつには『ガリュンバーの瞳』!」
オークのアイテムワークで炎は不思議な瞳を放つ。
レベル1D(ダイス1個降って出た目)+1以下のモンスターを『行動完了』にする瞳だ。
炎のダイスの出目は「2」。丁度アンデッドビーストが行動完了になる。
「・・・おっさん、素人じゃないの?」
思わず炎が訊ねる。
「おっさんって言うんじゃない!それに、素人でもないぞ!」
「あっそ・・・でも、流駆以上に弱いぞ・・・。」
その言葉に、流駆の顔がちょっと引きつった。
「まぁとにかく・・・俺の攻撃だな。普通に攻撃するぞ。」
『砂漠強行軍』を使って行動完了となっているオークは攻撃をしない。
しかし、他のオーガ2体は攻撃を仕掛けた。
「甘い!『パイロ・バインド』!」
一樹が放ったスペルは、ベリアルの周りを炎の牢獄で包んだ。
攻撃力が−5される代わりに、防御力は2倍になる。
ベリアルは4/4から0/8となり、攻撃は通用しない・・・それが一樹の読みだった。
「じゃあそのベリアルに『忘却のスクロール』!」
オーガのアイテムワークを使って放ったのは、
モンスター1体のスペルワークをその戦闘の間消滅させる巻物だった。
ベリアルは4/4に戻り、オーガ2体の攻撃によってカードに戻る運命となった。
「・・・よし、アンデッド・ビーストは残っているな!この進軍は失敗だな!」
一樹が勝ち誇ったように言う。しかし炎は動じない。
「誰が進軍終わりって言った?そのビーストにはこいつだ!『ファイアボール』!」
その声とカードに応え、先程スクロールを使ったオーガとは別の、女性のオーガが火の玉のスペルを放つ。
それによりアンデッドビーストは焼き尽くされ、カードに戻った。
「う、うう・・・。」
悔しそうに唇を歪ませる一樹。
「もう決めるぞ。改めてオーガに『賢者の石』を装備、そして破棄する。」
『ストーン・サークル』が無くても儀式スペルを使う数少ない手段だ。
「ど、どうするつもりだよ!」
「これを使うんだよ・・・『モラル』!」
炎が翳した儀式スペルは、1度進軍したユニットをもう1度進軍できるようにするものだった。
「オーガたち、あいつの本陣に進軍しろ!」
オーガたちは、一樹の本陣へ進軍した。
ここが陥落したら負けになる。しかし悪いことに、そこに一樹のモンスターはいなかった。
「・・・・・・。(汗)」
「おっさん、俺の勝ちだな。」
一樹はしばらく呆然としていたが、そのうちにカードの回収を行った。
「・・・お前ら、覚えてろよ!」
カードを回収し終えた一樹はそういい捨てると、走り去っていった。
「なぁ、あいつがレックスを呼び出した犯人だと思うか?」
「・・・違うと思う・・・。」
流駆と楓は、一樹の後姿を見て、そんなことを話していたとか。