第31話「再会は早かった」
旅を再開した流駆たち。とりあえず出発はしたのだが、5人にはある疑問があった。
「・・・ねぇレーゼ。」
「何?」
樹が、レーゼにその疑問をぶつける。
「六皇子ってさ、どこにいるの?」
レーゼの次の言葉は出てこない。
「・・・ひょっとして、知らないの?じゃあ僕たちどこに向かえばいいのさ。」
「情報がないのよ。大体、昨日アスタロトの声がしたからって本当にこっちの世界に六皇子がいるかも解らないんだから。」
憮然として答えるレーゼ。だが、その答えには樹も憮然とした。
「今更喧嘩してどうするのよ。解らないなら、探せばいいじゃない。」
「そうですよ。昨日流駆さんも探し出してって言ったじゃないですか。」
「それはそうだけどさ。闇雲に探したって・・・。」
樹の気合が削がれてきた時、隣のファイア・ドラゴンに乗っている流駆が話し掛けてきた。
「六皇子探しももちろんだけど、その前に俺は探したい人がいるんだ。」
「探したい人・・・?今更父親なんて言わないでしょうね。」
流駆の言葉を、楓が茶化す。
「まさか。俺が探したいのは、セネスというワルキュリア。協力してもらえるかもしれないだろ。」
「セネスですって・・・?流駆、誰から聞いたんですか?」
リュカが話に参加してきた。
「昨夜、ルインとデクスから。丁度いい、リュカ、セネスってどういうワルキュリアだったんだ?」
流駆が話を促す。隣にいる炎、スカイ・ワイバーン上の3人も話を聞く態勢になっている。
「・・・セネスは、常に私と行動を共にしてきました。相棒と言っても差し支えないでしょう。」
「ワルキュリアなんですよね。騎兵隊か、採魂隊、それとも魔神討伐隊・・・?」
麻耶が創造を膨らまさせている。だが、次の言葉によってその創造は1つに収束する。
「どれもはずれ。彼女は、戦争の女神。つまり、『戦争の女神モリガン』。」
「戦争の女神モリガン!ますます協力して欲しいな・・・。」
流駆が唸る。
「ですが、こちらに来てから彼女とは連絡が取れません・・・。何かあったのかも・・・。」
閉口する一同。
「ま、いずれ会えるだろ!気長に行くぜ気長に!」
「お前は1番短慮だろうが。」
グラッドがガハハと笑うのを、、ルインが冷静に突っ込む。
「・・・ねぇ、あれは何?」
唐突に、樹が指を指す。その先には、数個の影がぶつかり合っている光景があった。
「影が・・・8つかな?」
「ちょっと待て、今見てみるから。」
流駆が、双眼鏡を構える。
「どうだ?何か見えたか?」
「・・・あぁ。モンスター同士の戦闘。しかも、1対7だ。」
冷静に、状況を見極めつつ話す流駆。
「1対7!助けに行こうよ!」
「待て。自分から厄介事に首を突っ込むつもりか?放っておくのがいいだろう。」
感情的になる樹とは対照的に、冷徹な判断を下すルイン。
「いや・・・あれは、残念ながら首を突っ込むべき厄介事みたいだぞ。」
「・・・どういうことですか?」
流駆の呟きに、麻耶が訊ねる。
「行ってみれば解る。炎、ファイア・ドラゴンを向かわせてくれ。」
「了解!行くぜぇっ!」
炎が、ファイア・ドラゴンの飛行速度を速める。スカイ・ワイバーンも慌ててそれについていく。
「あぁ、そうだ・・・リュカ。」
「何?」
「・・・再会は、意外と早くなりそうだぞ。」
「・・・どうする・・・。」
こちらは、1対7の状況に置かれている・・・ワルキュリアだ。
『1対7だ。大人しく諦めて死ぬという選択肢があるぞ。』
ワルキュリアの前に立ちはだかるデーモン・・・『大地の賢者フォラス』が言い放つ。
「・・・笑えない冗談だな。私はきさまたちを倒して、六皇子も滅する。」
『勇ましいことだ・・・流石は『戦争の女神モリガン』。その顔が苦痛に引き攣る所をぜひ見てみたいものだな!』
フォラスの声と同時に、配下らしいレッサー・デーモンが飛びかかって来た。
「『ウィンド・カッター』!」
そのうちの1体を、風の刃で切り刻むモリガン。そして、手に持つ剣で更に1体を刺し貫く。
だが、他の4体は容赦なく剣を振るってきた。
「(殺られる・・・?)」
「『サンクチュアリ』!」
突如、モリガンの周りに聖域が張られ、レッサー・デーモンを跳ね除けた。
「・・・何だと!?」
フォラスやレッサー・デーモンよりも、守られたモリガンのほうが驚いていた。
「・・・流石に間に合ったらしいな。かなりのスピードだったぞ。」
「どうってことねぇよ。さてと・・・後は俺に任せとけ!」
スカイ・ワイバーンよりも一足先に到着したファイア・ドラゴン。
その上にたつ炎が早くもスペルを準備している。
「人間・・・子供!?何でこんな所に・・・。」
「・・・倒す敵が増えたようだな・・・。デーモンども、あの火竜も落とせ!」
フォラスのその声に従い、2体のレッサー・デーモンがファイア・ドラゴンに向かった。
「おっ、来た来た!」
「炎、ミスるなよ。俺も今のうちに・・・。」
「失敗するかよ!ファイア・ドラゴン、『ゲイボルグ』!」
火竜の一咆え。それだけで無数の火槍が出現し、レッサー・デーモンを貫き、焼いた。
流駆はその間に、カードを一枚宙に放る。
「・・・召喚術師・・・。」
モリガンの驚きは大きくなるばかりだが、目の前から迫ってきたデーモンによって思考は中断された。
「・・・殲滅の後光によりて、消えてなくなれ!」
モリガンの叫びと同時に、剣に青白い光が宿った。
『殲滅の後光』・・・敵を倒せば倒すほど、その破壊力は高まる。
『ギャッ!』
光を纏った剣は、先程よりも軽々とデーモンの喉を刺し貫いている。
「・・・モリガン、上だ!」
流駆が叫ぶ。最後のレッサー・デーモンが、モリガンの頭上から急襲をかけようとしていた。
だが、モリガンは慌てずに剣を握っていない手を頭上に翳す。
「・・・『フレイム・ストライク』!」
放たれた必殺のスペルは、レッサー・デーモンを完全に焼き払った。
「後は、きさまだけだ。」
「フォフォ、そんな危険な能力を持つお前さんとは戦わんよ。」
フォラスは、一瞬だけファイア・ドラゴンを見た。そして。
『『ゴルゴン・ゲイズ』!』
いきなり、スペルを放ってきた。5点の石化ダメージを与えるスペルだ。
「やばいぞ流駆、落ちるかもしれないぜ!」
「・・・リュカ!頼む!」
「・・・リュカだと!?」
驚愕が更に広がるモリガンを尻目に、フォラスの背後からリュカが出現した。
『貴様、いつの間に!?」』
「やらせはしない・・・滅する!」
リュカの大鎌が一閃する。フォラスは悲鳴を上げる間も無く身体を上下に断ち切られ、青白く燃え尽きる。ゴルゴン・ゲイズも消滅した。
その鎌の上には採魂の炎が揺らめいていた上、『ディヴァイン・ウェポン』で強化されていたのだ。
「・・・リュカ・・・リュカなのか?」
「ふぅ・・・。久しぶりね、セネス。」
モリガンがリュカに向かって話し掛けると、彼女は笑みを浮かべてその名を呼んだ。
「・・・やっぱりそうか・・・。」
「リュカ、彼らは・・・?」
近づいてきた流駆と炎を見て、怪訝な表情を浮かべるセネス。
更に、楓たちを乗せたスカイ・ワイバーンも追いついてきた。
「セネス、私も今まで何があったか話すから、貴女も話して。」
セネスは、無言で頷いた・・・。