第33話「侵入と強行突破」


『貴様、逃げ帰ったんじゃねぇのか!?』

ここはある洞窟の中。どこをどう見てもそうは思えないが、ここはサルガタナスのアジトである。

『・・・サルガタナスはどこだ?』

冷静に問い掛けるのは、乗り込んだ張本人であるセネス。

『サルガタナス様?会ってどうするってんだ?』
『消滅させる。私の目的はそれだけだ。』

きっぱりと言い切る。

『・・・どうせ答えるつもりは無いだろうし、邪魔をするつもりなのだろう。お前も消すぞ。』
『上等だ・・・。このヴァレフォル様を倒せるかな!?』

会話をしていた相手はそう言い放つと、いきなりセネスに飛び掛ってきた。
当人が言っているように、こいつは『闇の盗賊ヴァレフォル』である。

『死ねやこ・・・な・・・?』

ヴァレフォルがセネスに一撃を加えようとした刹那、神速で抜き払われたセネスの剣がヴァレフォルを真っ二つにしていた。

『・・・この程度では、私は倒せない・・・サルガタナスはどこだ・・・!』

セネスは、恐らくは配下がひしめき合っているだろう通路へと踏み出した。



























「ここか?」
「ええ。セネスがここに入った途端に、思念が途切れたわ。間違いないでしょう。」

一方、セネスから幾分遅れて到着した流駆たち。入り口近くの茂みに隠れている。
因みに、入り口には見張りとしてレッサー・デーモンが2体。

「さて、どうやって侵入するの?」
「そうだな・・・。方法としては2つ。ばれないように忍び込むか、援軍を呼ばれる前にあの2体を仕留めるかだな。」

楓の疑問に答えたのはルイン。

「ばれないように・・・『ポリモルフ』か、『ファンタズマル・フォース』・・・どっちも持ち合わせないぞ俺は。」
「残念ながら、私もよ。となると、手早く倒すこと・・・どうするべきかしら?」
「よっしゃ、ここは俺に任せろ!」

炎はそう言うと、いきなり立ち上がった。もちろん、デーモンに見つかる。

「バカ!お前・・・!」
「行くぜ、グラッド!あいつらをぶっ飛ばすぞ!」

炎が突撃しながらグラッドを呼び出す。グラッドは、いきなりスルトの姿をとって現れた。

「おう、炎!戦いだな・・・腕が鳴るぜ!」

思わぬ相手の出現に、デーモンは慌てて仲間を呼ぶ。すぐに、入り口からわんさかモンスターが出てくる。

「よっしゃ!行くぜ、大爆裂!」
「レーヴァテイン!存分に暴れろ!」

既に、炎とグラッドに声は聞こえない。

「・・・炎なりの陽動なのかな?あれって。」
「結果的にはそうなったけどな。単なる欲求不満じゃないのか?」

しげしげと見る樹に対して、呆れながら解説する流駆。

「どっちにしても、陽動にはなったわ。忍び込むなら今ね。」
「OK。道を塞ぐやつだけ倒していくぞ!」

流駆たちも、入り口目掛けて走り出した。もちろん、そちらにもモンスターの一部が向かう。

「私に続いてください!一気に切り込みましょう!」
「道は我が切り開く!・・・貴様ら、邪魔をするな!」

麻耶が弓矢を構えて最前線に立つ。魔炎や津波が道を作り出してゆく。
その横には、既にオセの姿をとっているデクスも現れていた。

強行突破は、容易かった。






























『報告します。先ほど乗り込んできたワルキュリアとは別に、このアジトへと攻めてきた輩が現れました。』

所変わって、洞窟の最深部。やや広い造りになっている部屋で、蟷螂の姿をしたデーモンが報告を行っている。

『すぐに兵を向かわせましたが、何人かはアジト内に侵入してきたようです。・・・いかがいたしましょう?』

蟷螂の姿をしたデーモン・・・『緑の狩人レラジエ』は、眼前の主の意見を聞く。

『なるほど。レラジエ、お前も手伝いに行け。恐らく、我の首が目当てだろう・・・。』
『・・・仰せのままに。』

レラジエは、恭しく頭を下げるとその姿を消した。
指示を出したのは他でもない、『地獄の大公サルガタナス』である。

『・・・さて、そろそろ来る頃か・・・。』

傍らにあった懐中時計を見ながら、独り言を呟くサルガタナス。あるワルキュリアが、部屋の前に現れたのはその時だった。

『・・・地獄の大公、サルガタナスだな。』
『・・・だとしたら、どうするつもりだ?』

ゆっくりと立ち上がるサルガタナスに対し、セネスは、淡く光を宿す剣の切っ先を突きつけて叫んだ。

『世界に仇なした六王子め!我が剣によって滅せよ!』

剣を振りかぶり、最上段から振り下ろした。密かに使っておいた風スペルも相まってか、速度はある。

『・・・仇なした、か。言い逃れは出来んな。ワルキュリアであるお前が我を滅ぼしたくなる気持ちもわかる。』

いつの間にか手にしていた剣で、セネスの一撃を軽く受け止めていたサルガタナス。
その剣は、実は『魔剣ダインスレイフ』というれっきとした魔剣である。

『ごちゃごちゃと・・・!『フレイム・ストライク』!』

剣をぶつけ合った状態から、極炎の槍を放つセネス。だが、サルガタナスは動じなかった。

『だがな・・・いかんせん、お前は力不足だ!』

サルガタナスはセネスを力任せに押し返すと、サンド・カーテンでフレイム・ストライクを阻む。

『がっ・・・!』

セネスが呻き声をあげる。その腹部に、サルガタナスの尾の先端にあった鉄球がめり込んでいたのだ。

『まだ、地爆塊さえも出していないが・・・それでは我は倒せんな。』
『うっ・・・。』

セネスの顔が屈辱に歪む。だが、意思に反して身体は満足に動かなかった。

『さて・・・今度は、こちらから行くぞ!』

























「ほとんど炎の所へ行ったみたいだね。全然敵なんていないじゃん。」

樹が走りながら言う。

「敵がいないのは願ってもないんだけど・・・肝心のサルガタナスはどこなの?」
「俺に聞くな。そう広くなさそうだし、すぐ見つかるだろ。」

楓の疑問に、素っ気無く答える流駆。

『・・・残念だが、そこまでたどり着かせるわけにはいかん。』

空間に声が響いた。その一瞬後、流駆たちの前にレラジエが現れる。

「緑の狩人レラジエ・・・サルガタナス直属の配下よ。」
「それはつまり、サルガタナスの居場所を知っているけど、死んでも喋らないってことね。」

リュカの解説を受けながら答える楓。

『よく分かっているな。・・・ほう、召喚術師か。どうりで強いはずだ。』
「・・・御託はいいよ。やる気なんだろ?」

そう言って流駆がカードを取り出そうとした刹那、唐突に電撃を帯びた一本の矢がレラジエを襲った。

『貴様・・・!?』
「皆さん、先に行ってください!サルガタナスの所には、きっとセネスさんもいます!」

麻耶が、早くも次の矢を構えながら叫ぶ。ブレイズの矢なので、レラジエでも耐えられない。

『3人とも、行け!案ずるな、麻耶は我が守る!』

デクスも・・・今はオセの性格だが、麻耶と並んで剣を構えている。

「・・・流駆、樹、ここは麻耶に任せて行きましょ。」
「そうだな・・・セネスのほうもやばいかもしれない・・・。」
「麻耶!気をつけてよ!」

3人は、走り出した。

『行かせるものか・・・!』
「させるかっ!」
「追わせません!」

後を追おうとしたレラジエに、オセの剣と麻耶の矢が襲い掛かる。

『チッ・・・どうやら、まず始末するのは貴様らのようだな・・・!』

レラジエは、その蟷螂の頭を麻耶たちに向け直った。






























『最初の威勢はどうした・・・。』
『ぐっ・・・おのれっ・・・!』

サルガタナスの一撃を、すんでのところで受け流しているセネス。かなり余裕が無い。

『・・・これはどうだ?『ウェポン・ブレイク』!』

サルガタナスがスペルを放った。その名の通り装備品を破壊するか、攻撃力を減少させるスペル。

『くっ・・・力が・・・。それなら・・・殲滅の後光よ!』

セネスが剣を構え直して、一声叫ぶ。だが、残光が浮き出る程度しか力は具現しなかった。

『・・・うっ・・・。』
『これ以上は時間の無駄だな。我が僕よ、相手をしてやれ・・・。』

多少残念さを滲み出しながら、サルガタナスは何枚かのカードを放った。
そこから、『マーブル・スパイダー』、『カンフュール』、『フラワー・マンティス』が召喚される。その数2体ずつ、6体。

『逃げたければ逃げるがいい。その身体では1体6だと確実に死ぬぞ。』

サルガタナスの思わぬ言葉。だがセネスは、一瞥するのみだった。

『・・・やはり、ワルキュリアか・・・やれ。』

サルガタナスの宣言とともに、カンフュール、マーブル・スパイダー、フラワー・マンティスが1体ずつ飛び掛った。

『この・・・程度・・・!』

応戦すべく、セネスが剣を振り上げようとした時。まず、稲妻が煌いた。

『・・・何だと?』

サルガタナス、セネスともに訝しげな表情になる。その稲妻はカンフュールを焼き、カードに戻した。
立て続けに、マーブル・スパイダーの足元が突然崩れ、落とし穴のようになる。その下から突き出ている槍が、マーブル・スパイダーを貫いた。

『『ブライアー・ピット』・・・。』
『・・・どうやら、レラジエは足止めに失敗したようだな・・・。』

眉根を寄せるサルガタナスをよそに、急に周りの2体がいなくなって動揺しているフラワー・マンティスに、光がぶつけられた。

「・・・走ってくる途中で1対6なんて声が聞こえたけど。」

部屋の入り口に現れた影。流駆、楓、樹。そしてその背後には、ブリュンヒルドとマルドゥーク、そしてキュベレイ。

「これで7対4だ。十分勝機があるだろ。」


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