第34話「vsサルガタナス」


「お前たち、召喚術師か。このワルキュリアを召喚したのもお前たちか?」

重厚な声でサルガタナスが流駆たちに問う。

「・・・さぁな。どうであったとしても、彼女はお前の敵だぞ。」

楓の後ろに控えていたマルドゥーク・・・ルインが答える。

『お前たち、本当に乗り込んできたのか・・・!?』
「・・・やたら不満そうだな。」

セネスの驚きように、流駆は顔を顰める。

『当たり前だ・・・!これは、私が一人でやらないと意味が無いんだ・・・!』

ふらつきながら、セネスは剣を構え直す。

『それに、非干渉のはずだ・・・後は私に任せて、お前たちはそこで見ていろ・・・!』

セネスは、わずかな力を振り絞ってサルガタナスへと走った。だが、そこへ3体の魔物が立ち塞がる。

『邪魔をするな!貫け、殲滅の後光!』

刺突の型で剣を繰り出すセネス。すると、それまで僅かな光だった殲滅の後光が急に強烈なエネルギーへと変貌した。
カンフュール、マーブル・スパイダー、フラワー・マンティスはまとめて貫かれ、カードに戻った。

「凄い・・・!あれが殲滅の後光!!?」
「そういや楓と樹は見るの初めてだったな。だけど、さっきの光とはまるで違う・・・!」

流駆、楓、樹が感嘆の溜息を漏らす。

『サルガタナス、覚悟!』

勢いに任せて、そのままサルガタナスに斬りつけるセネス。サルガタナスも、改めてダインスレイヴを構える。

『せいあっ!』
『むんっ!』

2つの剣がぶつかる。先ほどと違い、力は拮抗・・・いや、僅かにセネスが押している。

『・・・年貢の納め時だな!サルガタナスよ!』

セネスが、そのままサルガタナスを押し切って、ダインスレイヴを弾き飛ばす。そして、一気に勝負を決めにかかった。

『とどめだっ!』
『セネスとやら・・・調子に乗るなよ!』

サルガタナスが、尻尾の鉄球を振るった。それは地面に激突すると、あたりにものすごい岩の破片を飛ばす。

『なに・・・ぐぁっ!』

セネスはその衝撃をもろに喰らい、壁に叩きつけられた。

「セネス!大丈夫!?」

リュカが慌てて駆け寄る。流駆たちも続く。

「今のは・・・まさか、地爆塊?」
『ほぉ。我が技の名を知っているか・・・。いかにも、これが地爆塊だ。』

サルガタナスの必殺技とでもいうべき地爆塊。破壊力は、セネスの傷を見れば一目瞭然だった。

『・・・さぁ、次はお前たちか?我が地爆塊に耐えられるか・・・?』
「まずい・・・!みんな、散りなさい!」

レーゼの声に、その場にいた7人はとっさに離れる。刹那、地爆塊の衝撃が襲ってきた。

「うわっ!」

樹が吹き飛ばされ、尻餅をつく。

「樹!・・・これじゃ近づけない!ルイン、何とかならない!?」
「無茶を言うな・・・!とにかく、今は避けることだけを考えろ!」

楓、ルインともにギリギリでかわしている。

「避けるだけじゃ、いずれ喰らうってのに・・・早くもじり貧かよ・・・!」

流駆が悪態をつく。その間にも、サルガタナスは地爆塊を放ち続けている。

『どうした、お前たち・・・。逃げるだけでは我の首は取れんぞ!』

攻撃の手を休める気配の無いサルガタナス。鉄球を振るい、流駆たちを追い詰める。

『くそっ・・・リュカ、離せ!』
「駄目よ。貴女、その身体でまだやれると思っているの?」

リュカの腕の中でもがくセネスに、リュカは手厳しい意見を浴びせる。
事実、セネスの傷は酷かった。そのため、セネスも無理は出来ない。

「・・・なら『サンダー・エレメンタル』召か・・・」
『させんぞ、小娘!』

召喚のカードを取り出そうとした楓だったが、それよりも早く地爆塊の衝撃を受けた。

「ああっ・・・!」
「楓!・・・くそっ!」

セネス同様、楓も壁まで吹っ飛ばされる。出血は無いようだが、すぐには動けない。

『・・・そろそろ、終わりか。』

サルガタナスが、止めを刺すべく鉄球を振り上げる。だが、その瞬間。

『・・・ぅおああああっ!』

セネスが、リュカを振りほどいてサルガタナスに斬りかかった。

『何!?』

それは、サルガタナスにとって全くの不意打ちとなった。
殲滅の後光を帯びた剣は、とっさに上がったサルガタナスの腕に深く食い込んだ。

『後光よ、サルガタナスを消し去れ!』

力の限りを込めて叫ぶセネスだが、それ以上の変化は無かった。

『貴様・・・ふんっ!』

サルガタナスは、セネスの胸に強烈な殴打を喰らわせる。セネスは剣を持ったまま、吹っ飛ばされた。

「・・・って、こっちかよ!」

セネスの飛ばされた方向。そこには丁度流駆がいた。衝突し、下敷きになる。

「・・・痛・・・セネス、大丈夫か?」

這い出て来た流駆が声をかけるが、返事が無い。見れば、胸を強く殴られたため呼吸困難を引き起こしているセネスがいた。
もはや力も尽きかけている。剣を握る力も無いのか、脇に落ちている。

『・・・もはや面倒だな。2人まとめて楽にしてやろう。』

その声に流駆が顔を上げると、すぐそこにサルガタナスが立っていた。

「・・・『ウィンド・カッター』!」

自分に対してまったく背を向けているサルガタナスに、好機と取ったかルインが真空刃を放った。

『・・・子供騙しだな・・・。』

サルガタナスは動じずに、指先でコインを弾いた。真空刃は、そのコインに力を殺がれ、消えた。

「・・・『微笑みの銀貨』・・・なら、『バインド・ウィンド』!」

どうにか立ち上がった楓が、立て続けに風の束を放つ。歩行の敵は動きを鈍らせ、空の敵は葬り去る。

『無駄だ。『サンド・カーテン』。』

サルガタナスが更にスペルを放つ。砂の壁が吹き上がり、風の束は防がれた。

「なら、『ディスペル・マジック』!」

流駆も対抗する・・・が、スペルの効果が現れない。

「・・・あ?」
「流駆、足元を見て!」

リュカの声に流駆が足元を見ると、黒曜虫が数匹蠢いていた。

「私が!『ディスペル・マジック』・・・」
『無駄だと言った!』

リュカが流駆に代わってスペルを放とうとするが、それよりも早く地爆塊を喰らってしまった。

『・・・流駆、といったな。その名だけ覚えておいてやろう。さらばだ・・・!』

サルガタナスの豪腕が、流駆とセネスを砕かんと迫った。

「冗談・・・こんな所で、オサラバしてたまるかっ!」

流駆はそう叫ぶと、とっさに近くにあった何かを掴み、横薙ぎに振るった。
すると、急にサルガタナスが自分の拳を押さえて後ろに下がった。

『・・・何のつもりだ?』

怪訝な顔をするサルガタナス。その目は、流駆が手にしているものに向けられている。

「もちろん、やぶれかぶれだよ・・・。」

流駆が、ゆっくりと立ち上がる。その手にあるのは、セネスが振るっていた剣であった。

『剣を持ったところで・・・我に勝てると思ったら大間違いだぞ、小僧が!』

再度、サルガタナスが豪腕を振りかざす。だが流駆は、慌てずに剣を振り上げた。

「無茶よ、流駆!」
「危ない!逃げて!」

楓、樹が悲鳴を上げる。

「逃げたら、セネスに当たるだろうが・・・。どうせ召喚は間に合わない、スペルは使えない。・・・だからといって死ぬ気は無い!」

流駆も、叫んで剣を振るった。すると、剣に淡い光が宿り始めた。

『な、何だとっ・・・!?』

驚愕に表情を歪ませるサルガタナス。自らの腕と、剣がぶつかった。

『ぬぁ・・・ッ!』

今度は、サルガタナスが初めて悲鳴を上げた。腕にぶつかった剣が、じわじわと食い込んできているのだ。
更に、弱かった光が徐々に眩くなり始めている。

『・・・人間が、殲滅の後光だと・・・!?』

そう、剣から放たれているのはまさしく殲滅の後光だった。

「・・・消えろ!」

流駆が力任せに剣を押し込んだ。それに応えるかのように殲滅の後光は更に輝きを増し、サルガタナスの腕に食い込む。

『ぐあぁぁ・・・っ・・・。』

とうとう、剣がサルガタナスの腕を斬り落とした。苦悶の表情を称えるサルガタナス。

「まだだ!」
『貴様・・・図に乗るなよ!』

流駆がそのままサルガタナスに斬りかかる。サルガタナスは地爆塊で応戦しようとした。

『散れ・・・がっ!?』

いきなり、サルガタナスの肩から矢が生えた、かのように見えた。

「トキシンの矢・・・麻耶か!」
「はい!皆さん、遅くなりました!」

流駆がちらりと入り口を見ると、ブラック・ライトニングを構えた麻耶が立っているのが見えた。

「喰らえっ!」

再度、流駆が剣を叩きつける。すんでの所で身をかわしたサルガタナスだが、尾についている鉄球を砕かれた。

『くっ・・・ここまでか・・・降参だ。』

サルガタナスは両手を上げ、その場に座り込んだ。

『もう我に戦う意志は無い。好きにするがいい。』

そう言って目を閉じるサルガタナスを見て、流駆は剣を下げた。

「・・・それなら、他の六皇子がどこにいるかとか、洗いざらい離してもらうぞ。」


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