第35話「その理由は?」
「まずは単刀直入に訊くぞ・・・。繋がりを閉じるにはどうすればいい?」
サルガタナスへの詰問が始まった。流駆は既に剣をセネスに返している。
『・・・お前たち、繋がりを閉じるために我と戦ったと言うのか?』
「それ以外に何があるんだ?」
真面目な表情で言う流駆に、サルガタナスは微笑を返した。
『・・・繋がり、か。あれはそう簡単には閉じられん。』
「難易度を訊いてるんじゃなくて、方法を聞いてるんだ。・・・それとも、六皇子のプライドにかけて教えられないか?」
『・・・としたら、どうする?』
微笑したままサルガタナスは流駆を見上げる。とは言ってもほとんど目線は同じなのだが。
「・・・どうもしないと思うぞ。次の質問に移るだけだろ。」
『我の首を取る、とは思わないのか?』
「・・・それで繋がりを閉じれるんなら、多分、俺はやる。リュカたちにも約束しちまったし。」
かなり口調が固い。
『・・・子供とは思えぬ台詞だな。お前は今幾つだ?』
筆者もそう思う。
「14だよ。そこにいる楓、麻耶、樹もそうだし、外で暴れてる炎もだ。」
『そうか・・・。』
軽く溜息をついてから、サルガタナスは話し始めた。
『さっきも言ったが、繋がりは、そう簡単には閉じられん。我々、六皇子の魔力がある限りな。』
「六皇子の・・・魔力?」
『そうだ。全員の魔力が消滅すれば、繋がりは縮小され、やがて消えるだろう。』
その言葉に、腕を組んで考える素振りを見せる流駆。
「・・・ならサルガタナス、悪いけど、お前の魔力を断たせてもらうぞ。何をすればいいんだ?」
流駆の言葉には答えず、サルガタナスは目を伏せた。
『その前に、我からも1つ訊いておきたい事がある・・・。』
「ん?何だ?」
『あのワルキュリアの剣・・・人間であるお前が振るった時、光が生じた。通常ありえないが・・・何故だ?』
その言葉に、流駆は思わずセネスの方を向く。
「・・・なぁセネス、何でだ?」
『知ったことか・・・。私だって、正直信じられない。人間が殲滅の後光を放てるなんて・・・。』
セネスは、なんだか気分が悪そうだった。自分だけの力だと思っていた殲滅の後光が人間に使われ、面白くないのだろう。
『それについては、私が話したほうがよさそうだな・・・。』
いきなり、流駆のデックから太陽を睨む天使の声がした。
「太陽を睨む天使か?・・・何か知っているのか?」
流駆が、カードホルダーから太陽を睨む天使のカードを取り出す。
『私が召喚術師に流駆を選んだのは、なにも手当たり次第と言うわけではなかったのだ。』
「・・・違ったのか?じゃあどういう基準だよ?」
意外そうな表情をする流駆と楓をよそに、太陽を睨む天使は話し始めた。
『召喚の才能はもちろんだが、その他にも何かの力を持っている必要があった。
それが何か、というのはわからん。だが、流駆は確かにその力を持っていた。・・・その剣が結果だ。』
カードの中から、淡々と話す太陽を睨む天使。
「じゃあ訊くわ、太陽を睨む天使。その場にいた私や炎にはその力は無かったの?」
『正直に言えば、無い。だが3人とも召喚の才能はずば抜けていた。
あえて言わせてもらえば・・・その3人の中で召喚の才能が最もあったのは楓、お前だ。』
「え、そうなの?」
思わぬ言葉に、目が点になる楓。
『お前は何の前触れも無くホワイト・イエティを呼び出した。これも普通はありえないことだ。』
その理由を聞いて、楓は納得いかないのか首を傾げる。
「・・・で、話を戻すけど・・・殲滅の後光を使える、というのが俺の力なのか?」
『いや・・・恐らく、それは力の一端に過ぎない。まだ何か秘めていると思われるが・・・詳しくはな。』
「ふーん・・・だってよ、サルガタナス。これでいいか?」
視線を、カードからサルガタナスに戻す流駆。
『理由は解った・・・。』
「じゃあ改めて質問に答えてもらうぞ。お前の魔力を断つには、どうすればいい?」
流駆の質問にサルガタナスは自嘲めいた笑みをこぼした。
『断つも何も、もはや我に繋がりを保持するだけの魔力はない。恐らく、それだけの魔力も回復できないだろう。』
「・・・何だ。じゃあこれ以上スペルを使ったりしなくていいんだな。じゃ次の質問に・・・。
『・・・待て・・・!』
流駆の言葉を、セネスの叫びが遮った。
『私は・・・こいつを倒さなければならない・・・!』
動くのも辛いはずだが、気丈にも剣を構えている。
「・・・ハァ・・・やめとけよ、セネス。」
『何故だ!?』
「お前は、手負いの相手を倒して喜べるのかよ。」
流駆は比較的静かに言ったが、セネスにはそれで十分だったようである。口惜しげに剣を鞘へと治めた。
『情けのつもりか・・・?』
「いや、質問がまだあるから。ずばり、他の六皇子の居場所だ。」
サルガタナスが話したのは、ベリアル、ダゴン、ベルゼブブのそれぞれの居場所であった。
『アスモデウスとアスタロトについては知らん。他が知っているかどうかは別としてな・・・。』
「解った。後は・・・ま、こんなもんか。皆、次行こうぜ。」
流駆が振り向き、出口へと向かおうとする。
『流駆・・・我の首を取るのではなかったのか?』
「・・・あのな、俺たちの目的は繋がりを閉じることであって、六皇子狩りじゃない。リュカたちに嘘を言った事になるが、問題は無いだろ。」
「まぁそうだな。我々としては、それと同時に元の人間へと戻りたい所だが・・・。」
流駆の言葉に、ルインが答えた。
「・・・そうだ、いい事思いついたぞ。」
流駆が更に振り返り、サルガタナスの方を向く。
「首を奪う代わりに、俺たちと一緒に行かないか?」
『・・・何だと?』
流駆の提案に、一同が唖然となる。
「その首や尻尾は、カードに戻って時間が経てば再生するだろ、きっと。
それに、繋がりを意地する魔力がなくなったとしても普通に戦えるだけの能力は・・・」
『・・・それは、出来んな。』
静かに、しかし強く否定するサルガタナス。
『我が六皇子である限り、同朋の道を遮ることは出来ん・・・!』
全員、沈黙。
「・・・まぁ、仕方ないな。じゃ、俺たちはこれで・・・と、最後に。」
流駆のサルガタナスを見る目が、鋭くなった。
「もし回復したとして、俺たちの道を塞ぐようなことがあるなら・・・痛い目に会うぞ。」
流駆は、それ以降サルガタナスのほうに振り返らずに仲間たちのもとへ行った。
「外の炎を連れて、次ヘ行こう。」
「サルガタナスは、どうするんですか・・・?」
「放っとく。目的は果たしたんだ、無駄に消耗することも無いだろ・・・。」
流駆たちは、アジトの外へと向かった。
「やっぱり、行くのね。」
『あぁ。私の考えは変わらない。』
外に出た流駆たちは炎と合流し、いざ出発と言う所で、セネスが自分の巨鳥を呼んだのだ。
『さらばだ。また会わないことを切に願っているぞ・・・。』
巨鳥に乗り、セネスは空高く舞い上がっていった。
「行っちゃった・・・。」
「そうだな・・・。それにしても・・・炎、お前は化け物か?」
「なぁに、このぐらい余裕だぜ!」
雑兵を相手にしていた炎とグラッドだが、流駆たちが外に出てみると丁度最後の一体を屠っている所だった。
「最も、ユニットは使い果たしちまった。グラッドも疲れたらしくてカードに戻っちまったし。」
「おいおい・・・お前のスタミナが無茶なんだよ。」
カードの中から、グラッドの声が聞こえる。
『・・・今のうちに話しておこうと思うのだが・・・』
突如聞こえてきたのは、再び太陽を睨む天使の声。
「何だよ、いきなり?」
『先程の話の捕捉だが・・・力を持っているのは流駆だけではない。麻耶もそうだ。』
「・・・わ、私がですか?」
素っ頓狂な顔の麻耶。
『アーク・デーモンに選ばれた時点で、お前に力があるということが証明されている。』
「でもどんな力かは解らないんですよね・・・。なんだか、怖いです。」
不安げな表情になる麻耶。だが、そこに流駆の声が響いた。
「・・・考えたってどうなるかは解らないんだ。あんまり心配する必要も無いだろ?」
「そう・・・なんでしょうか・・・?」
「そうなんだよ。さて、そろそろ行かないか?」
「よっしゃあ!次もやるぜ!」
「目的地がわかっているから、ペースも上げられるわね。」
「・・・あ、どこに行くんですか?」
「それは、空に浮かんでから考えようよ。」
「じゃあ・・・出発!」
ファイア・ドラゴンとスカイ・ワイバーンが、大空へと舞った。
同時刻・・・
『道を塞いだら痛い目に会う、か・・・。』
床に落ちていたダインスレイヴを拾い上げるサルガタナス。刃を自分の方へと向ける。
『我は、お前たちの行く末を・・・それこそ、冥界・・・いや、地獄で見ていることにするよ。』
サルガタナスは、なんの躊躇いも無く刃で自分の身体を刺し貫いた。
『・・・若き・・・召喚術師たちよ・・・お前たちの旅・・・道のりは・・・平坦では・・・決して・・・』
サルガタナスはそのまま崩れ落ちると、カードへと戻った。そして、乾いた音を立てて粉々に砕け散った。
残されたのは、これもまたカードに残ったダインスレイヴのみである・・・。