第37話「虎頭部隊との戦い」


ベリアルがいるという場所。それは、流駆たちの街からかなり離れた場所にある山であるらしい。

「あの山って・・・確か火山じゃなかった?」
「えぇ。私たちが生まれる前から既に死火山だったらしいけど。」

樹の軽い疑問に、楓が応える。

「死火山か・・・。ベリアルは何を企んでいる・・・?」

ルインが神妙に話すが、誰も聞いてない。

「・・・。」
「あそこか・・・?」

黙ってしまったルインを横目に、流駆がある山を指差す。

「そうみたいね。じゃあ、行ってみま・・・!?」

リュカの言葉は、途中で中断された。いきなり、陸上からフレイム・ストライクが飛んできたからである。

「『反応陽光』!」

流駆がとっさに太陽のロザリオを翳す。フレイム・ストライクは消滅した。

「なんなんだ一体!?」
「下だ、流駆!」

炎の叫びに、とっさに下を向いて双眼鏡をのぞく流駆。

「あんなに火スペル使いが・・・。」
「流駆さん、危ない!」

麻耶の声にはっと気付くと、再び火スペルを放とうとしていた『オーク錬金術師団』がシャンヴァーの矢に貫かれていた。

「悪い、助かった・・・。」
「それよりも、まだ下にはかなりいますよ・・・。どうします?」
「ここは、あたしに任せな!」

突如した声に振り向く流駆と麻耶。そこには、キュベレイの姿となったレーゼがいた。

「そうだ、キュベレイの能力なら!」
「そういうこと!援護は任せたよ!」

レーゼは、空中から憤怒する大地を発動させた。だが、それに合わせて封印の札やら魔法のロープやらがまとめて飛んできた。

「そうはさせない!」
「やらせないよっ!」

麻耶、樹がとっさに対抗する。憤怒する大地は、見えるほぼ全ての魔物を一掃した。

「完全には仕留めてないわね。」
「『ラヴァ・エレメンタル』や『ラヴァ・キマイラ』なんかは残ってる。・・・こっち来たよ!?」

そのラヴァ・エレメンタルやラヴァ・キマイラたちが飛行能力で2竜に迫ってきた。

「焦ることもないわ。スカイ・ワイバーン、『ウィンド・カッター』を!」

冷静に楓が告げると、瞬時に真空刃がラヴァ・キマイラのうち1体を切り裂いた。

「もう2発!更に『バインド・ウィンド』!」

楓が、立て続けに真空刃を放つ。ラヴァ・エレメンタルやラヴァ・キマイラは一掃された。

「ふぅ・・・。」
「凄いね、楓・・・。あんなに連発するなんて。」
「その分疲れたわ・・・。」

楓の額には、いくつかの汗の玉が浮かんでいた。

「疲れたところで悪いが、ここで降りるぞ。」
「えっ?このまま行くんじゃないの?」
「目立つだろう。ヘマをしたら、また下から急襲されるぞ。」

ルインの声が響く。その意見は尊重され、2竜は陸上へと降り立った。






















流駆たちが陸上に降りる。リュカたちもカードから出て来て、総勢10名。

「ところで、ベリアルはどこにいるんだ?」
「ボスのお約束だ、山の頂上にいるだろ。」

と、流駆が歩き始めた時。唐突に飛来した火炎が、炎を直撃した。

「うおっ!」
「え、炎!?」

火だるまになる炎。だが、ヴァガンテの耳飾りのおかげで全く平気である。服さえ燃えていない。

「大丈夫か?」
「いや、流石に焦った。でも平気だぜ!」
「一体、誰が・・・?」

と、楓があたりを見回すと。

『ヴァガンテの耳飾りか・・・殺したと思ったが。』
『お前は生温いんだよ。俺が殺ってやるから、そこで見てろ!』

喋っているのは、『火吹きラクシャーサ』と『虎斬りラクシャーサ』。
その名が示す通り、どちらも虎頭人の種族ラクシャーサである。

「ラクシャーサ・・・!レーゼの一撃でカードに戻ってなかったのか!?」
『知るかよ!お前ら全員、俺の剣の染みになりやがれ!』

虎斬りラクシャーサが、剣を縦横無尽に振り回しながら突進してきた。
虎斬りラクシャーサの必殺技とも言うべき能力、『虎徹斬』。だが、この技は自分も傷つける。

「これは・・・皆、防御力上げとけ。そうすりゃ大丈夫だ。」
「じゃああたしが。炎とグラッドのスペルを借りて・・・『スパイラル・フレイム』を使うよ。」

炎の螺旋が、幾重にも流駆たちを覆う。虎斬りラクシャーサの剣は全く螺旋を貫けず、自らを傷つけるのみとなった。

『・・・バカ、な・・・。』
「あえて言わせてもらうが、馬鹿はそっちだな。」

ルインの呟きと同時に、虎斬りラクシャーサはカードに戻った。

「そして・・・そこのお前、2度も不意打ちするな!」

飛び掛ろうと隙を窺っていた火吹きラクシャーサ。だが、それよりも早くルインが『ライトニング・ボルト』を放っていた。

『グァァ・・・。』

火吹きラクシャーサも、カードに戻った。

「・・・さぁ、先を急ぐぞ。」
『・・・生憎だが、そうはいかん。』

ルインが1歩踏み出そうとすると、その先には全身の毛並みが真っ赤なラクシャーサがいた。

「『赤虎の鬼王』か・・・?」
『いかにも。ベリアル様の元へ向かうつもりだろうが・・・そうはいかんぞ。』

その声に反応するように、あたりからラクシャーサがざっと出てきた。『人喰い』、『鬼殺し』、『首狩り』、『兜割り』のラクシャーサが1体ずつ。
さらに、その後ろでは『姫巫女ラクシャーサ』がラクシャーサの素早さと攻撃力を上げる『虎の舞い』を舞っていた。

「けっ、御託はいい!かかって来いよ!」
『ならば・・・行かせてもらうぞ!』

グラッドの挑発と同時に、赤虎の鬼王は配下に攻撃を命じた。
まずは、人喰いラクシャーサがその『人喰らいの爪と牙』を振るってきた。

「ジャスティ・・・スは通じないか・・・防御力が上がってる・・・。」
「ここは私がやるわ・・・!滅しなさい!」

リュカが人喰いラクシャーサの動きに合わせて、ディヴァイン・ウェポンで強化した採魂の炎を放った。
首狩りラクシャーサが封印の札を構えるも、麻耶がゾルドイルの矢を番えている。対抗無しで、人喰いラクシャーサはカードに戻った。

『ならば!』
『これで、どうだ!?』

次にかかって来たのは、首狩りラクシャーサと兜割りラクシャーサ。
首狩りラクシャーサは攻撃を、兜割りラクシャーサは特殊能力『兜割り』を放ってくるという、変則攻撃。
しかも、首狩りラクシャーサは『虎の舞い』の力を受けてものすごい速度である。

「じゃこの2体は俺が・・・!『タイダルウェイブ』!『プラズマ・インパクト』!」

流駆が2枚のカードを同時に放る。刹那、津波が首狩りラクシャーサを、プラズマが兜割りラクシャーサを襲った。

『好きにはさせんぞ、小僧が!』

そこに飛び掛ってきたのは、鬼殺しラクシャーサ。捨て身の技『肉を斬らせて骨を断つ』。だが、赤虎の鬼王がいるので完全に捨て身にはならない。

「そうはいかないってば!『サンド・カーテン』!」

樹が作り出した砂の障壁が、鬼殺しラクシャーサの攻撃を止める。アイテムを使おうにも、矢を向けた麻耶がいる。
首狩りラクシャーサ、兜割りラクシャーサはカードに戻った。

『ここまでやるとは・・・!』
「悪いが・・・お前の命運も尽きているぞ。」

鬼殺しラクシャーサがその声に振り向くと同時に、背後に回りこんでいたデクスの双豹斬で2つに分かれた。それも、『追憶の護符』によって強化された。

「後は、お前だけだな。・・・かかってくるか?」
『・・・無論だ!行くぞ!』

赤虎の鬼王は、手に『黄金の戦鎚』を持って特攻してきた。『虎の舞い』により、素早さも高い。

『受けろ!我が一撃!』
「そんなに部下に頼ってばっかりで、俺たちに勝てるかよ!」

最後は、グラッドがレーヴァテインを振るって、赤虎の鬼王を炎に巻いた。

『ぐ・・・ベリアル・・・さ、ま・・・!』

赤虎の鬼王は、カードに戻った。姫巫女ラクシャーサは、いつの間にか姿を眩ましていた。

「・・・よし、終わりだ・・・進むぞ。」

一行は、ベリアルがいるであろう頂上へと再度歩き始めた。


戻る 第36話 第38話