第44話「新たな出会い」
「・・・見えた!海だ!」
スカイ・ワイバーンの上から、樹が歓声を上げる。
彼女らの前に見えたのは、当人が言うような海。ダゴンは、ここにいるらしい。
「海・・・か。」
「・・・楓さん、どうしました?」
「え?どうって・・・なんでもないわよ?」
やたら思慮深げにしている楓に、ふと訊ねる麻耶。
「・・・あ〜・・・そういや楓って・・・。」
「そういえば・・・そうだったな。」
しみじみと、昔を懐かしむように呟く流駆と炎。
『楓が、どうかしたのか?』
カードから、グラッドが訊ねてくる。だが2人は、苦笑して応えなかった。
「・・・あの砂浜に降りよう。どう動けばいいかも全く解らないしな。」
「いいな〜、海。泳ぎたいな・・・。」
「私は嫌よ。きっと海中にもモンスターがいるし。」
樹の言葉を無下に否定する楓。だが、樹は食い下がってきた。
「でもさ、こんなに静かな海だよ?本当にダゴンなんて・・・。」
「なら樹1人でどう?私はやらないけど。」
そのやり取りを聞いていた麻耶が、流駆と炎の方へとやってきた。
「あの、流駆さん、炎さん・・・何だか楓さん、いつもより冷たくないですか?」
「冷たい?・・・あぁ。あいつはそうなるだろうな。」
「海に対して嫌な思い出でもあるんじゃねぇか?」
妙に含みのある2人の言葉に、麻耶は首を傾げる。
『お喋りはそこまでにしろ・・・誰か来るぞ。』
ルインの言葉に、緊張が走る。流駆たちが見る方向から歩いてきたのは・・・ターバンをつけたエスニック風な少女。
『君たち、この海は危険よ。だからすぐに立ち去りなさい。』
「危険?」
『そうよ。なんせ、六皇子の1柱がいるくらいだから。いまやこの海は、ギルマンの縄張りよ。』
「ギルマンの縄張り・・・ダゴン!」
少女の言葉に、5人は大きく反応した。
『・・・どうしたの、そんなに大袈裟に驚いて・・・まさか、人間に見えるけどダゴンの手先!?』
「いや、違うって。俺たちは・・・」
『問答無用!ダゴンの手下なら容赦はしないわ!』
少女は手に、小さな松明のようなものを出現させた。
「その姿、まさか・・・!」
『喰らいなさい!』
少女が松明を翳すと、そこから炎が流駆たちに向かって飛んできた。
「・・・炎、任せた。」
流駆はそう言うと、いきなり炎を突き飛ばそうとした・・・が、既に自分から向かっている。
「俺に炎は効かねぇぜ!」
『『ヴァガンテの耳飾り』ね・・・なら『バーン・アウト』!』
「・・・何ぃっ!?」
思いっきりうろたえる炎。これを喰らえば、間違いなく死ねる。
「『反応陽光』。・・・『アルマンディン』、俺たちは手先じゃないっての。」
流駆のロザリオで、スペルは打ち消された。
『このっ・・・え?違うの?』
更に追撃しようとしていた少女・・・アルマンディンが、頓狂な声を上げる。
『アルマンディン』はスピリット種のモンスター。火と水のスペルワークを持ち、『燃える水』を放てる。
「あぁ、違う。むしろ、俺たちはダゴンを倒しに来たんだ。」
『ダゴンを倒すって・・・ちょっと待って。私の召喚術師がこっちにいるから・・・。』
と、アルマンディンが振り返った瞬間。
「アルマンディン、何をやってるのよ。」
『あっ、雫!』
多少離れた砂浜から、一人の少女・・・流駆たちと同年代程度・・・が歩いてきた。
腰ほどまでのロングヘアで、身長は高い。
「話は大体聞いていたわ。君たち・・・本当にダゴンの手先じゃ無いのよね。」
「あぁ。」
雫と呼ばれた少女の問いに、流駆が軽く頭を縦に振る。
「そう。なら同じ召喚術師として協力して欲しいんだけど。私もダゴンを倒すために、ここにいるのよ。」
「それは・・・こっちとしても有難いけど。なぁ?」
流駆が後ろを振り返る。
「おぉ、協力してくれ!」
「勿論、異論は無いわよ。」
「仲間が増えるのは、心強いです。」
「僕も、賛成!これで6人!」
召喚術師内に反対意見は無かった。リュカたちも、了解している。
「ということで、お互いに協力よろしく。あ、俺は聖 流駆だ。」
「俺は服部 炎だ!」
「草薙 楓よ。」
「渚 麻耶といいます。」
「僕は神奈 樹!僕も皆も、下の名前で呼び捨てでいいからね。」
「ありがとう。私は、陵 雫(みささぎ しずく)よ。私のことも、雫と呼んでね。」
肩にかかった髪を振り払いながら告げる雫。
「解った。ところで雫は、アルマンディンを使うなら、火属性使いか?」
「火も使うけど、実際に多用するのは水ね。さっきのアルマンディンと・・・。」
因みにそのアルマンディンは、カードに戻っている。
「こいつが、私の相棒よ!」
一枚のカードが海に向かって放られた。そこから現れたのは、『パール・ドラゴン』。
「なるほど、流石は火水使いね。」
「どうも。ところで君たちの相棒は?」
「相棒・・・か。俺は・・・この3人だな。」
流駆が一度に3枚のカードを翳す。そこから太陽を睨む天使、月に咲く天使、そしてリュカが現れた。
「雫といいましたね。私はブリュンヒルドのリュカ。よろしく。」
「リュカ?・・・流駆、君は名前を付けてるの?」
「いや。まぁ色々と事情が。」
と、流駆が言っている間に、グラッドたち4人が表れていた。
「あいつらの自己紹介の前に、今言った事情を話しておく。」
流駆が、繋がりの事とリュカたちのことについて語る。
「そう・・・私も繋がりについては聞いたことがあるけど、そんな人たちがいるなんてね。」
雫が溜息混じりの声を漏らす。
「俺たちが旅してるのもそういうわけだ。最近はリュカたちの家を拠点にして六皇子を叩きに行ってるんだけどな。」
「叩きに行ってるって・・・まさか、六皇子と戦ったことがあるの!?」
「あるよ。戦ったサルガタナスとベリアルは、とっちも倒したよ。」
樹が自慢気に言う。だが、流石に雫は驚きを隠せない。
「まさか・・・でも、嘘をついても何にもならないわよね。・・・心強いわ。」
と、雫が言った直後。
「流駆、あれ何!?」
樹が海面を指差す。そこには、エイに乗った半魚人・・・ギルマンがいる。その数、見えるのは3体。
「『ギルマン・ライダーズ』か・・・!あいつらは本当にダゴンの手先か?」
「間違いないでしょうね。」
「なら遠慮しなくていいな・・・太陽を睨む天使、月に咲く天使。頼む!」
『解りました。』
『任せろ!』
2人の天使が、上空からギルマンに向かってコンボを仕掛ける。
『何だと・・・やらせるか!』
ギルマンの一人が、特殊能力を封じる『魔法のロープ』を投げる。
「甘い!」
いつの間にか回り込んでいたリュカが、『ディヴァイン・ウェポン』で強化した採魂の炎を放った。
その速さに目を奪われた他のギルマンは、一瞬対抗を忘れた。
「流石、強いわね・・・。」
雫が感嘆の呟きを漏らすと同時に、太陽の槍が残りのギルマンを貫いた。
『ん・・・?』
『太陽を睨む天使、あなたにも見えますか。』
「私にも見えるわ。あれは・・・。」
3体のギルマンを屠った3人が共に見たのは、遠海で徒党を組んでいるギルマンたちだった。