第46話「海上戦」
「近くで見ると・・・」
「呆れるほど数が多いな・・・。」
語っているのは、楓とルイン。既に、ギルマンたちの船の上空まで差し掛かっている。
「語ってる場合かい?・・・来そうだよ。」
レーゼが、下に目をやる。船の上に、弓を引き絞るギルマンたちが多数いる。
『撃て!』
船長らしき風貌のギルマンが号令をかけると共に、無数の矢が下から飛んで来た。
「固まるな!散れ!」
ルインの叫びに、一同がパッと散開する。
「ホルス、攻撃を避けてくださいね・・・行きますよ、『アーク・デーモン』!『ストーム・ナイト』!」
麻耶が、ホルスの上から2枚カードを放つ。1枚からは、久々登場のアーク・デーモン。もう1枚からは、両手に剣を握る風属性のデーモン、ストーム・ナイト。
『久々の出番だ・・・存分にやらせてもらおう!』
アーク・デーモンが船の1つに取り付いた。甲板上のギルマンが応戦する。
「私も負けてられないわね。ハーピィたち、頼むわよ!」
楓が言い放った瞬間、楓の更に上空から女性の鳥人間・・・ハーピィの軍勢が急降下を仕掛けてきた。
『慌てるなよ!的確に撃ち落とせ!』
ギルマンの船長が叫ぶ。矢の中に突っ込んでいくハーピィ。落とされるものもいれば、かいくぐってギルマンを屠るものもいる。
「援護します!皆さんも宜しくお願いします!」
麻耶が、ギルマンの船の1隻に、ブレイズの矢を放つ。それはマストに突き刺さり、一気に燃え上がらせた。
皆さん、というのは楓たちのほかに、流駆が召喚しておいたワルキュリアやエンジェル、ガーディアンの部隊。
「私もやらなきゃね・・・『ライトニング・ボルト』!スカイ・ワイバーン、『ブルー・ライトニング』!」
楓が紫色の、スカイ・ワイバーンが、蒼い電撃を放つ。何人ものギルマンが巻き込まれた。
『主に存分に暴れて来いと言われたからな・・・!』
そう言うのは、ファイア・ドラゴン。灼熱のブレスに、ギルマンたちが次々と焼かれる。
「あたしだって!」
「私も便乗させてもらおうか・・・!」
ルイン、レーゼも、それぞれギルマンの船に取り付いて白兵戦を繰り広げる。
『フン。そう好き勝手にやれると思うなよ!』
ギルマンの船長がそう叫ぶと、その船に積んであった大砲が轟音を上げて火を吹いた。ハーピィ、エンジェルらが呑まれ、カードに戻る。
「あれは・・・『ギルマン大砲海賊団』・・・それが・・・見ただけで3隻の船にか・・・!」
ユニットの部隊を一撃で沈めるほどの破壊力を誇る大砲。だが、麻耶が果敢にも突っ込む。
「まずは、あの船を沈める・・・!」
甲板を目掛けて、ブレイズの矢を放つ麻耶。上手く当たり、甲板が燃える。
『く・・・あのホルスに乗っている小娘を落とせ!』
ギルマンの船長が叫ぶと、船員の1人が光に包まれ、ホルスへと飛来した。
「・・・ッ!」
光の矢と化したギルマンがホルスに当たる。大きくバランスを崩したものの、ホルス、麻耶共に無事だ。
『何をやっている!お前ら、突貫しろ!』
ギルマンの船長・・・『ギルマン魚雷海賊王』の檄が飛ぶ。それに押されるかのごとく、次々と光の矢が襲来した。
「・・・『トキシンの矢』!」
海賊王目掛けて、猛毒の矢を放つ麻耶。だが、それに対抗するかのごとく光の矢が飛び交う。
「麻耶、どきなさい!『レッド・インパクト』!」
上空からしたレーゼの声に、咄嗟に横へと動く麻耶。その脇を、紅い球体が通り抜けていった。そして、ギルマンの船の一部を破壊する。
「レーゼさん!」
「これであの船は沈む!次に行くよ!」
「はい!」
気が触れたかのごとく光の矢を放つ海賊王を放っておき、麻耶とレーゼは次の船へと向かう。一方。
「・・・減らないわね・・・。」
スカイ・ワイバーンの上から、竜騎士のごとく黄金の槍を振るう楓。何体ものギルマンを海へ叩き落したが、まだまだいる。
「そうでもないぞ・・・楓、飛び上がれ!」
ルインの声。スカイ・ワイバーンが飛翔すると、船に火の玉が何発も降り注がれた。
「炎ね・・・危なっかしいわねぇ。」
とは言いつつも、目は笑っている。
「じゃあ、次はあの船ね!」
「了解した!」
楓とルインが、次に目に入った船へと向かう。もちろん、弓矢が次々と飛んでくる。
「そんな矢じゃ、この黄金の盾は貫けない・・・っ!?」
楓が構えた盾に突如飛来した衝撃。その船にも乗っていた魚雷海賊王によるギルマンの魚雷が、黄金の盾を直撃したのだ。
「あっ・・・!」
バランスを崩した楓は、あろうことかスカイ・ワイバーンから落下してしまった。
「―――っ!?」
「楓!」
楓の、声にならない悲鳴。目の前に広がるは海。落ちるか・・・と言う所で、ルインが何とか追いついてその身体を支えた。
「・・・あ・・・ああ・・・。」
「楓、大丈夫なのか?」
よほどの恐怖だったのか、目の焦点が定まっていない。海賊王は好機と見たか、攻撃を激しくした。
「くっ・・・こいつら・・・!」
楓を抱えたまま、ルインが後退する。と、そこに麻耶が飛んで来た。
「これで・・・っ!」
麻耶が放ったやや大きめの矢・・・『ブラックオニキスの地爆矢』が、船の側面に命中し、炸裂する。穴が開いて、浸水し始めた。
「楓さん、大丈夫ですか?」
麻耶が、楓に話し掛ける。が、楓は俯き、何も話さない。
「あの、楓さん?」
「・・・あのギルマンたち、許さないわ。来て、スカイ・ワイバーン!」
急に楓が叫ぶ。すると、単独で戦っていたスカイ・ワイバーンが楓の元へと戻って来た。
「楓、余り固まると狙われるぞ?」
ルインの言うように、彼らに向いているギルマンたちの攻撃はかなり激しくなっている。
「心配しないで。・・・数を減らしてくるから。『ワール・ウィンド』!」
楓とスカイ・ワイバーンが風に包まれる。次の瞬間、物凄いスピードで船の1隻へと向かう。
「・・・楓、壊れたか?」
「さ、さぁ・・・。」
事情は聞いただけのルインと麻耶。どちらの頬にも、一筋の汗。
「・・・でも、大分倒したと思いますけど・・・数、減ってませんよね?」
「あぁ。恐らく、私たちが見逃した何体かは陸上に向かっただろうしな。」
「そんな!援護に行かないと!」
「あそこにはグラッドとデクス、そして樹がいる。その3人なら何とかできるだろう。それよりも・・・離れたほうがいいぞ。」
え、と麻耶が聞く前に、その横を火炎の槍が通り過ぎていった。
「今のは・・・炎さんですね。」
「そういうことだ。私たちはここで戦う。流駆たちがダゴンを倒すまでな。」
そう言うと、ルインは更にギルマンの船へと飛んでいった。
「私も・・・やらなきゃですね!」
麻耶も、ホルスに違う船へと向かうよう命じた。
『よぅし・・・ようやく陸上までたどり着けた・・・。』
そう言いながら砂浜へと上がってくるのは、『ギルマン海賊航海士』。
『後は、俺がナビゲートすれば陸上へなど簡単に・・・。』
「はい、お疲れ様。」
と、唐突に背後からした声。ギルマンが振り向くと・・・その足元が崩れ落ちた。
「残念でした。陸上には上がらせないよ。」
『ブライアー・ピット』でギルマンを仕留めた樹。だが彼女の前に、また別のモンスターが上がってきた。
『そいつで不満なら、このサレオス様が相手をしてやろうか?』
「・・・『怪腕の騎士サレオス』!?いきなり強敵だなぁ・・・。」
流石の樹も身構える。「怪刀」と呼ばれるその力は、モンスターを一撃で葬り去るほど。
『召喚術師とはいえ人間、俺の力に耐えられるか!』
サレオスの、怪刀の一撃。樹も、スペルカードを片手に対抗する。
「耐える!『サンド・カーテン』!」
樹の目の前で、砂が吹き上がった。サレオスは、その手から『滅びの粉塵』を放つ。
「滅びの粉塵なんかでスペルは・・・あれっ!?」
巻き上がった粉塵は、樹の腕にあるドルクレイの腕輪を破壊し、カードに戻した。
「甘いな、召喚術師!」
一撃が下る。樹は首から下げていた爆雷の角笛で受けようとするが、あまりに頼りない。
「うわぁっ!?」
『さらばだっ!』
樹の頭に怪刀が振り下ろされる・・・そのギリギリの瞬間、サレオスの動きが止まった。
「・・・あれ?」
『ぐ・・・お前か!?』
樹がサレオスを見ると、その腕には『魔法のロープ』が絡み付いていた。
「間一髪・・・といった所だな、樹。」
「オセ・・・デクス!ありがとう、死ぬかと思った・・・。」
魔法のロープを握っていたのは、豹頭の剣士オセ・・・即ちデクス。
『こんなロープ如きで、俺を押さえつけられると思ったら間違いだぞ!』
サレオスが、思いっきりロープを引っ張る。だがデクスは引き返さずに、そのロープを放す。
『何っ!』
「逝け、サレオス!」
一瞬サレオスの体勢が崩れる。そこへ、一気に間合いを詰めたデクスの剣が2度煌く。サレオスの身体に、十字傷が穿たれた。
『このっ・・・。』
「さっきのお返しだ!受けてみろ!」
傷を負ってもなお怪刀を振るおうとするサレオスに、樹が『爆音の雷撃』を放った。
『ガアアアアッ!』
雷撃に焼かれたサレオス。倒れ伏し、カードに戻った。
「ありがとう、デクス。本気で死ぬかと思ったよ・・・。」
「気にするな。それより、ドルクレイの腕輪が破壊されたのだろう。ストーン・バジリスクあたりを召喚しておくと・・・。」
デクスが言い終わる前に、樹は既にストーン・バジリスクを召喚して、その上に乗っていた。
「これで大丈夫だね。・・・ところで、グラッドは?」
「あそこだ。あちらには既に何体かギルマンが上陸している。そこをレーヴァテインで片っ端から倒しているのだろう。」
樹が見ると、炎が巻き起こっているのが見える。
「とにかくやるしかないね。流駆に雫、リュカがダゴンを倒すまで・・・!」
「そういうことだな。」
樹とデクスは、再度海面へと視線を向けた。
「ダゴンはまだか・・・?」
「そろそろよ。・・・覚悟はいいわよね。」
「当然。」
こちらは海中。パール・ドラゴンの上に、2つの人入り水泡。その隣には、採魂の女神。・・・考えてみれば、不思議な光景である。
「2人共・・・ダゴンの前に、前哨戦のようですよ。」
リュカの言葉に、前を向く2人。そこには、『大顎竜』が大口を開けて待っていた。
「肩慣らしにもならないわね。パール・ドラゴン、『フルムーン・タイド』!」
雫の声にパール・ドラゴンが放った津波は、海中であっても大顎竜を押し流すほどの威力だった。
『フルムーン・タイド』は、フレイム・ストライク、或いはタイダルウェイブと同等の破壊力を生み出すことができる、強力な津波のスペル。
「うわ、容赦無しだな。」
「する必要もないわ。それよりも・・・あれ。」
雫が指を差す。その方向を流駆が見ると、そこに見えるのは巨大なギルマンとも言うべき姿。
「あいつが・・・。」
「えぇ。『魔海神ダゴン』よ。」