第47話「vsダゴン」
『・・・?』
ダゴンが、流駆たちが乗るパール・ドラゴンに気付いた。
『何ダ、アイツラハ?』
『ダゴン様、あいつらは召喚術師です!・・・我々にお任せあれ!』
ダゴンの周りにいた、数体のギルマンが流駆たちに向かってくる。
「雑魚が来たわよ・・・引っ込んでいればいいのに。」
「賛成はするけど・・・雫って意外と毒舌だな。」
「本当のことよ。・・・構わないわ、パール・ドラゴン、突っ込んで!」
パール・ドラゴンがスピードを上げて、ギルマンの脇をすり抜けようとする。
『逃すか!』
ギルマンが1体、パール・ドラゴン・・・の上の、流駆に向かって突撃してきた。
「・・・頼むぞ、退魔剣!」
流駆は腰の退魔剣を抜き、突っ込んできたギルマンにカウンター気味に叩きつけた。
『ギャガッ!?』
「・・・うわ、やな感触。」
身体を断たれてカードへと戻るギルマンに対し、斬った感触に顔を顰める流駆。
「やるわね、流駆。退魔剣、使いこなせてるじゃない。」
「流駆は以前、サルガタナスとの戦いでも剣を使った事があるのよ。才能があるのかもしれないわね。」
「・・・お褒めの言葉、どうも。」
雫、リュカの賞賛に、おざなりに応える流駆。それを見ていたダゴンは。
『アイツラ、結構強イナ。ジャア、今度ハ俺ガ直接相手ヲシテヤロウ!』
ダゴンが、海底を蹴って流駆たちに迫った。
「・・・ダゴンが、いきなり来た!」
「さっきの君みたいに、カウンターをお見舞いしてやるわ!パール・ドラゴン、『熱湯のブレス』!」
パール・ドラゴンが、口から深海の水を切り裂くような熱湯を吹き出した。それはダゴンに直撃する。
「やった!」
「待ちなさい、ダゴンは・・・!」
と、リュカが警告を発しようとした瞬間。
『オオオオオ!』
雄叫びを上げながら、ダゴンが勢いを緩めずに突撃する。熱湯のブレスでは、全く傷を負っていない。
「そんな、津波耐性・・・なら動きを止める!『タイダルウェイブ』!」
雫が更にスペルを重ねる。海水が、激流となってダゴンに押し寄せる。
『・・・ア・・・ゲフッ!?』
タイダルウェイブの直撃を受け、ダゴンの勢いが止まる。
「パール・ドラゴン、それにリュカ、チャンスよ!」
雫の声を受け、パール・ドラゴンとその上に乗る流駆と雫、そしてリュカが一斉に攻撃を仕掛ける。
『ガ・・・ナメルナ!』
ダゴンが叫ぶ。その直後に流駆たちが攻撃を仕掛け・・・ダゴンの身体をすり抜けた。
「なっ!」
「今のは『ミスト』ね・・・流石にこう簡単には行かなかったわね。」
リュカが解説する。だがその間に、ダゴンが腕を振り上げていた。
「パール・ドラゴン、離れろ!やばそうだ!」
流駆が叫ぶが、一拍遅かった。ダゴンの腕が、衝撃波を生む。
「おわっ!」
「きゃあっ!」
海水が、大きな衝撃となる。リュカはどうにかやり過ごしたが、衝撃をもろに受けたパール・ドラゴンはカードに戻った。
「流駆!雫!」
リュカが、吹き飛ばされた2人を追う。2人とも無事だが、プロテクションの水泡はなくなっていた。
「怖・・・。雫、どうする?」
雫に話し掛ける流駆・・・だが、空気が無いので声が伝わらない。(物理的には伝わる、とかいう突っ込みは無しで。)
「・・・皆、行くわよ!」
雫は何枚ものカードを引き抜くと、一度に放つ。そこから現れたのは、マーマンにマーメイドの部隊。中には、ホエイルなどもいる。
「マーマン・マーメイド部隊・・・最初から呼べよ。」
流駆が突っ込む。
「これだけの面々に囲まれれば・・・!」
『囲マレレバ、ドウダト?』
唐突に響く声。雫と流駆が振り向くと、ダゴンが現れていた。
「くっ、『フルムーン・タイド』!」
『死ネ!』
雫が咄嗟にスペルを放つが、もろともしないダゴンは再び衝撃波を放った。
「・・・っくああっ!」
「や、やば・・・!」
流駆は退魔剣を構えて、吹き飛ばされるのだけは防いだ。しかし、雫は吹き飛ばされ、その勢いのまま海底の岩場に叩きつけられた。
「雫!・・・マーマン部隊は!?」
リュカが振り向くと、マーマン部隊は再度現れたギルマンの部隊と交戦している。
「リュカ、雫を頼む!あのままじゃあ死んじまう・・・!」
「でも、流駆は・・・いえ、解りました!」
リュカは雫を見て、すぐに向かった。雫の身体、そして頭部からは、血が滲み出していたのだ。
「とはいえ・・・ダゴン・・・。」
『勇敢ダナ、オマエ。ダガ、容赦ハシナイゾ。』
ダゴンが不敵に笑う。その時、流駆が何かを閃いた。
「・・・月に咲く天使・・・。」
『・・・流駆ですか?』
こちらは、麻耶たちと海上でギルマンの相手をしている月に咲く天使。
「思念を送ってるけど聞こえるか・・・。聞こえたなら、海中に月光浴を使ってくれ・・・。」
『月光浴を・・・?』
流駆の思念に、一瞬考えた表情になる月に咲く天使。だがすぐに、行動に移った。
『解りました。行きますよ・・・。』
月に咲く天使が、海に向かって手を翳す。その手から、淡い光が溢れ出すように海中に沈んでいく。
『行クゾ、召喚術師!』
ダゴンが、流駆に再度衝撃波を振るおうとする。この時、海中に光が降り注いだ。
「よし、来た・・・!」
流駆の口に、笑みが浮かぶ。ダゴンの攻撃は止まらず、衝撃が流駆を襲う。
「考え通りなら、退魔剣で・・・!」
流駆が退魔剣を翳す。その剣には、不思議な紋様が浮かび上がっている。そして流駆は、攻撃に耐えた。
「よし、行くぞ!」
流駆が、退魔剣を構えてダゴンへと向かう。ダゴンの攻撃を耐えた以上、退魔剣はダゴンを倒す力を宿している。
「フン、バカメ・・・!」
ダゴンは、再びミストで攻撃を避けようとする。そして流駆の攻撃は、再びすり抜けた。
『吹キ飛バシテヤロウ・・・ン?』
ダゴンが振り向くと、そこには剣を前に翳して、何かを呟いている流駆がいた。
「(本命はこっちだ・・・頼むから発動して、倒せてくれよ・・・!)」
流駆が行っているのは、スペルの詠唱だった。
「聖なる光よ、炎を成して邪悪なる者を滅せよ・・・四方に引き裂け!『クロスファイア』!」
流駆の詠唱は、ダゴンの体内から聖炎を迸らせた。
『グアアッ!?グ・・・コノ程度・・・!』
苦悶の声を漏らすダゴン。だが、クロスファイアの勢いは激しさを増すばかり。
『・・・グ、ギ・・・ァァァァ・・・ッ!』
ダゴンの声が次第に小さくなる。そして聖炎が消えると同時に、ダゴンもカードに戻る。そのカードも、崩れ落ちた。
『なっ・・・ダゴン様!?』
と、ギルマンは叫ぶと同時に消え去った。
「・・・何とか・・・なるもんだな・・・。」
流駆の表情は、疲労困憊といった様子だ。
「・・・雫は・・・。」
辺りを見渡し、リュカの姿を見つける流駆。ふらつきながらも、その元へ向かう。
「流駆・・・やったのね。」
「あぁ、ダゴンは倒せた。雫は・・・?」
流駆が気絶している雫を見る。海中なのではっきりとは解らないのだが、顔色が悪い。因みにこの会話、全て思念。
「思った以上に出血が酷くて・・・早く休ませないと。」
「『リジェネレーション』は?使ったんだろ?」
「えぇ、傷は塞いであるわ。でも、流れた血までは元には戻らないのよ。」
「・・・解った、一回戻ろう。ダゴンを倒したんだから、上も終わっているだろうし。」
流駆は雫を肩に担いで、海上へ向けて泳ぎだした。リュカも、それに続いた。