第64話「模擬戦」
「これから・・・どうする?」
こう切り出したのは、樹。昼過ぎ、召喚術師全員がリビングに集まっている。
因みに流駆は、炎や楓など寝てた面々に一通り、大丈夫かと言われた。
「アスタロトとアスモデウスを倒して、繋がりを閉じるんだろ?」
「そうだけど、どこにいるか解らないでしょう。どういう風に動くか、それを樹は言ってるんでしょ?」
「うん。流駆も目が醒めて、全員いつでも動ける状態にはなってるんだし・・・ねぇ、流駆?」
樹が、頬杖をついてどこか上の空な流駆に尋ねる。
「・・・流駆?聞いてる?」
「ん・・・あぁ、悪い。聞いてたけど、ちょっとボーっとしてた・・・。」
「ま、病み上がりだからしょうがないわね。で、流駆に意見はあるの?」
「と言われてもな・・・。どう動くとしても、動きようが無いだろ。」
全員が考え込む。だが、次に出たのは、麻耶の意外な言葉だった。
「皆さん、私に提案があるんですが・・・少し、六皇子を探すのをお休みしませんか?」
全員、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になる。
「どういうこと?」
「言葉通りです。今現在の状況でアスタロト、そしてアスモデウスの居場所が解らないですよね。
それなら、動くよりはここでじっとしてたほうがいいんじゃないかと思うんですよ。」
「でもよ、探し回れば、それだけ早く見つけられるかもしれないぜ?」
「・・・多分、私たちの疲れが溜まるだけだと思います。同じ疲れるなら、せめてスペルの練習や、私や流駆さんなら、力の応用に使った方がいいと思うんです。」
珍しく多弁な麻耶。すると、あらぬ方向から声がかかった。
「私は、悪くは無いと思うわ。」
「リュカ・・・。」
「少なくとも、アスタロトは両腕を失ったのでしょう?すぐには動けないはず。なら、その間にこちらの能力を底上げする。次勝てる確率は上がるわ。」
全員を見渡しながら、リュカは言った。
「・・・やっぱり、駄目、でしょうか・・・?」
「いや、そうしよう。正直な所、まだ俺も本調子じゃないしな。」
「でも、それならそれで何するの?とりあえず、ここ数日さ。」
再び、全員が考え込む。そして今度は、また別の方向から声がした。
「僕にいい案があるよ。」
「デクス。案って?」
「・・・今日よりは明日、かな。今日じゃちょっと遅いかな?」
そして次の日。
流駆たちは、アスタロトと戦った場所を再び訪れていた。
「で、何をするんだ?」
「模擬戦さ。君たち召喚術師のね。」
『模擬戦?』と、6人の声がハモった。
「簡単に言えば、籤引きなり何なりで組み合わせを決めて、勝負するのさ。審判は・・・リュカに頼もうか。」
「私が?まぁ、構いませんが・・・。」
「ルールは簡単。召喚無しで、他は何でもあり。相手を追い詰めたら勝ち。」
「追い詰めたらって・・・下手したら死なないか、それ?」
「そうなりそうになったら、僕たちが止めるよ。皆も、とばっちりを食わないように気をつけて。」
首を傾げる流駆。セネスの剣はしっかり持ってきている。
「ねぇ、組み合わせだけど、私が決めていいかしら?」
リュカが口を挟んだ。
「いいわよ、別に。」
「なら、まずは火と水で、炎と雫。次に風と土で、楓と樹。最後に聖と魔で、流駆と麻耶。」
「・・・つまり、反属性との勝負、というわけね。」
「じゃあまずは・・・。」
「俺と雫だな!」
炎と雫が、少し距離をとって向かい合う。
「2人とも、準備はいい?」
「いつでもいいぜ!」
「こちらもよ!」
「なら・・・始め!」
リュカの掛け声と共に、炎が先制でフレイム・ストライクを放った。
「単純ね・・・!『デフレクション』!」
雫の前に、氷の壁が現れた。しかし炎は、慌てない。
「甘いぜ、雫?・・・上へいけ!」
炎が叫ぶと、炎の槍は軌道を変えて雫の真上に飛ぶ。
「降り注げ!」
更なる声。フレイム・ストライクは、ファイア・ブラストへと姿を変えて雫に迫った。
「昨日はあんまり出来なかったのに、今日は・・・でも!」
雫が念じる。それに答えるように、デフレクションの壁が伸びる。そして、ファイア・ブラストを防いだ。
「やるな!」
「そっちもね!」
炎と雫、2人がニヤリと笑う。
「な、何だ今の・・・!?」
「スペルが・・・変化したんですか!?」
傍らで見ていた流駆と麻耶。驚きのあまり、口が半開きである。
「2人とも、炎たちの一昨日の頑張りを知らないからね。」
「いや、あれは頑張れば出来るって代物じゃないだろ・・・。」
「そうでもないんだよ。これ、留守番のルインから借りてきたんだけど。」
デクスが、「COMBAT SPELL FOR EXPART」を、流駆に手渡す。
「・・・こういう使い方、ありなのか?」
「あの2人が、現実だよ。」
「今度は、こちらから行くわよ・・・!」
雫が、灼熱のウィップを炎に向かって振るった。
「何だよ、お前だって単純じゃねぇか!」
イグナ爆裂筒で迎撃体勢に入る炎。だが、雫の声が響いた。
「『スマッシュ』!」
水を武器に纏わせて破壊力を増幅するスペル。それが、灼熱のウィップにかかった。
「まだよ、『紅の束縛』!」
こちらは、灼熱のウィップの力。炎で敵をなぎ払う技だが、その炎がスマッシュの水と触れた。
ジュウウウウウッッッ!!
「な、何だ!?」
突然の音に、炎が立ち止まる。そして次には、視界が閉ざされていた。・・・炎と水によって生み出された、霧によって。
「凄い・・・こんなことまで!」
「でもこれじゃ、多分雫も見えないはずだ・・・!」
流駆が言うように、この霧はここにいる全員の視界が閉ざしていた。
「へっ!イグナ爆裂筒で、霧を吹き飛ばしてやるよ!」
言うが早いが、炎が爆裂筒を撒き散らした。その爆風で、みるみるうちに霧は吹き飛んでいく。
「そら、もう一丁・・・」
「この勝負・・・私の勝ちね。『マリン・フラッシュ』!」
炎の背後から、声が聞こえた。炎が振り向いた瞬間、猛烈な水流が炎の視界を覆った。
「うおおっ!」
「『サンド・カーテン』!」
デクスの声が響き、炎はどうにか難を逃れた。
「勝負ありね。雫の勝ちよ。」
リュカの声が、静かに響いた。
「マリン・フラッシュかよ・・・油断したな。」
「ふふ。した貴方が悪いのよ。」
「次は・・・私と。」
「僕だ!」