第7話 『謎の組織』
「この『鋼の門』・・・どういうことなの?」
楓が、改竄の加えられている『鋼の門』のカードを手に取り、一樹に訊ねた。
「・・・。」
答えない一樹。
「教えろよ・・・おっさんは、一体何者なんだ?」
流駆が問い詰める。
一樹は、観念したかのように話し出した。
「お前ら、『ダークネス』って組織・・・知ってるか?」
首を横に振る2人。
「まぁ、知るはずも無いか・・・ダークネスは、こういうカードの改竄を秘密裏に行っている組織だ。
それを裏ルートで流せば、1部のプレイヤーから莫大な報酬を受け取ることが出来るのさ。」
「・・・ちょっと待って。そんなカードじゃあ他のプレイヤーには認められないわよ。」
一樹の言葉に、楓が疑問を投げかける。
「いいか、今普通のカードからモンスターを呼び出せる人間はほとんどいない。
だがな、ダークネスの作ったカードからだと、驚くほど簡単にモンスターを呼べるようになるんだ。」
「・・・それじゃあ、そのカードを使えば誰もが簡単に召喚術師になれるってことか・・・。」
顔をしかめる流駆。
「そういう事。俺みたいな奴ならまだましな方だが・・・、悪意を持った奴がこのカードを手にしたら大変だよな?」
意地悪く笑う一樹。
「で、おっさんはどうやってこのカードを手に入れたんだ?」
「・・・おっさんって呼ぶな。」
流駆の問いに、どうでもいいツッコミをする一樹。
「簡単だよ。ネット上のとあるページで買えるんだ。俺は妙にこの組織が気になって、直接コンタクトを取ったんだ。・・・どうした?」
唖然とした表情をしている流駆と楓を見た一樹が尋ねる。
「い、いや・・・おっさんは、実は結構こういうことを気にするタイプなんだと思って・・・。」
「・・・お前ら、俺を何だと思ってる・・・?」
「勝つことしか考えない大人気ないおじさん、と思っていたわ。」
かなりきついセリフをさらりと言う楓。
「まぁ、過去形だから。多分。」
「はっきり言っといて「多分」かい。」
よく解らないやり取り。
「・・・で、改造カードでは他にどんなのがあるんだ?」
流駆が話を戻す。
「そうだな・・・まだ、これといったものは作ってはいないな。
例えば・・・この『エンド・オブ・ワールド』。見るか?」
一樹が差し出したカードを受け取り、内容を確認する流駆。
『エンド・オブ・ワールド』は使用するために7つものストーン・サークルを支配していないといけない。
ただし、一度決まればその勝負には無条件で勝ったことになる。
そして、この改造されたカードテキストには。
「・・・使用条件のところが削除されている・・・。」
つまり、ストーンサークル1つで使用できるというわけだ。
さらに、『賢者の石』などの特殊効果でも使用できることにもなる。
「確かに、こんなカードが出回ったら・・・勝負もへったくれも無いな。」
改造されたカードを見て、苦笑する流駆。
しかし、楓の反応は違っていた。
「・・・まぁ、そうだけど・・・それはカードゲームの話でしょう?私たち召喚術師が、純粋にモンスターだけで戦うときって・・・意味あるの?」
その一言で、場の空気は凍りついた。
「・・・そういえば・・・そうだな・・・(汗)」
流駆が困惑した表情になる。汗が一筋、頬を伝っている。
「嬢ちゃん、あんたの言うことはもっともだが・・・。」
それに対して、冷静な表情の一樹。
「さっきも言ったように、ユニットのカードに魔力が込められたらどうなると思う?」
「でも、そのカードの実物を見てないのよ?」
「・・・じゃあ、これを見な。」
一樹は、懐からカードを1枚取り出し、楓に見せた。
「これは・・・『リンドブルム』・・・。」
第5話で、学校を急襲したモンスターだ。
「それもダークネスのカードなんだが・・・レベルの欄を見てみな。」
楓が言われるままにレベルを見る。そこに書かれている数字は『2』だった。
「・・・2レベルの3/4、イニシアチブ+2とチャージを持つ。さらに『大きすぎる翼』の能力もなくなっているわね・・・。」
本来、リンドブルムはその大きな翼のために『歩行』の進軍範囲には進軍できないのだ。
「それは最近手に入れたカードで・・・持ち歩いていたら急に何か・・・出てきて、どっか行っちまったんだよ。」
「・・・うちの学校に来たわ。ちょっと騒ぎになったんだから。」
「あ、そうか。歩いてて落ちてたのを回収したときは何があったのかと思ったが・・・そういうことか。悪かったな。」
大して悪びれた様子を見せずに謝罪する一樹。
「まぁ、それよりもそのリンドブルムは・・・ひょっとして即時召喚ができるってことか?それじゃ強すぎだって・・・。」
顔をしかめる流駆。
「・・・でも、実際にモンスターを召喚できることに気付かなければどうってことはないただの変なカードじゃないの?」
再び、楓のうがった意見。さらに続ける。
「はっきり言って、そのダークネスとかいう組織・・・無視しても支障は無いと私は思うわ。」
「・・・いいのかよ・・・。」
その楓の言葉に、滅入った表情になる流駆。
「・・・なかなか適当な娘だな・・・。」
一樹も呆れている・・・というよりも、面食らっている。
「ところで・・・そのとあるページのアドレス、教えてくれない?」
「・・・何故だ?無視するんじゃなかったのか?」
楓の言葉に、怪訝な表情を浮かべる一樹。
「決まってるでしょ。どんなカードがあるのか見たいのよ。」
単純明快な答え。
「・・・ほらよ。ついでに俺のメールアドレスも預けとくから、何かあったら連絡くれよ。」
「解ったわ。」
一樹からメモを受け取る楓。
「さて・・・俺は行くぜ。じゃあな。」
一樹は、去っていった。
「・・・さて、流駆?」
「何だよ・・・。」
振り返る楓に、無愛想な返答をする流駆。疲れているのだ。
「あなたの部屋に行きましょ。私んとこのパソコン、ネットに繋いでないから。」
「・・・じゃ、何でそのメモを受け取ったんだ?」
「もちろん、流駆の家で見るため。」
流駆の疲労の色が、一層濃くなった。
「おぉーい、流駆!楓!」
道の向こうから声が聞こえる。
「炎!何やってたんだ今まで?」
走ってきた炎に疑問を投げかける流駆。
「寝てた。」
「・・・は?」
「いや、だから寝てたんだってば。」
「・・・あ、そ。」
流駆は、軽い立ちくらみを覚えた。
「ところで、何やってたんだお前ら?」
「それがね・・・。」
楓が説明する。
「なるほどな。じゃあ早速流駆の部屋行こうぜ。俺パソコン持ってねぇからさ。」
「・・・お前らな・・・。」
流駆の疲労が絶えることは無さそうだ・・・。