第9話「仲間たち」


「・・・ふう。終わった終わった。」

教科書を鞄の中につめる流駆。
ちょうど今、ホームルームが終了したところである。

「そういえば麻耶さん、家はどこにあるの?」

前の席から流駆の隣に座っている麻耶に声がかかった。
既に名前で呼ぶようになっている。

「ええっと・・・。」

麻耶が言った場所は、流駆たちのアパートの目と鼻の先にあるところだった。

「あ、近いんだ。じゃあ、これからは一緒に帰らない?」
「はい!」

楓の誘いに、嬉々として答える麻耶。

「・・・なんか、初めて笑い顔を見た気がするな・・・前の学校で、何かあったのか・・・・ま、いいか。」

そう小さく呟くと、流駆は麻耶のもう1つ隣の炎に声をかけた。

「炎、起きろ。授業終わった、帰るぞ。」

・・・こいつ、また寝てたのか。

「あ・・・そう?じゃあ帰るか・・・。」

流石の炎も、寝起きのときはローテンションのようだ。

「何やってんの炎。ほら、早く行くわよ。」

楓が急かしたてる。まるで手のかかる子を持つ母親のように。

「・・・あの、私先に玄関に行ってますね。」

3人のやり取りに入り込めていなかった麻耶が口を開いた。

「あ、わかった。・・・これについても聞きたいから、先に帰ったりしないでな。」

モンコレのデックをちらつかせながら流駆は言った。
麻耶は1つ頷くと、そのまま階段を下りていった。

「・・・さて。炎、楓、俺らも行こうぜ。」










「・・・麻耶さんは、何がきっかけで召喚術師になったの?」

帰り道の途中で、楓が麻耶に尋ねる。

「・・・信じてもらえないかもしれませんが、カードからいきなり絵に描いてあるモンスターが出てきて・・・。
それで、六門世界とこの世界との繋がりを見つけて、断って欲しいって言われて・・・。私は気が動転していて、はいと言ってしまったんです・・・。」
「なるほど。因みに、そのモンスターはなんだった?」

流駆がそう訊ねると、麻耶は怪訝な表情を浮かべた。

「・・・疑わないんですか?こんな夢みたいな話を、信じてくれるんですか!?」
「信じるも何も、俺達もほとんど同じようにして召喚術師になってるからな。」

僅かに、沈黙が流れた。

「私に語りかけてきたのは、このユニットです・・・『アーク・デーモン』!」

麻耶がカードを翳す。
カードから、描かれていた悪魔が現れた。
レベル6、5/5。アイテムワーク、魔のスペルワーク、オールスペルを1つずつ持っている。

「じゃあ、流駆さんたちは?」
「俺らは・・・こいつ。」

流駆の持つカードから、『太陽を睨む天使』が現れた。

『・・・アーク・デーモンか。久しぶりだな。』
『太陽を睨む天使よ、そっちもいい召喚術師を見つけることが出来たようだな。』

妙に親しげにして、2人(?)は話している。

「・・・知り合いなのか?」
『ああ。私たちは、この世界と六門世界が繋がったときに、
この世界の召喚術師を探し出して繋がりを断つという目的を持ってやってきた、いわば同志だ。』
「同志、ねぇ。」

太陽を睨む天使の話に首を傾げる流駆。

「私が召喚術師になったとたん、学校にモンスターが現れるようになって・・・。
私もまたモンスターを召喚して戦ったんです。その戦いには勝ったんですが・・・。」
「・・・ですが?」

話し始めた麻耶に、続きを促す楓。

「・・・その次の日から、私はクラスから疎外されるようになりました。」
「・・・」

「クラスメイトだけではありません。先生までもが私を避けて・・・。そして、学校にくるなとまで言われて・・・。」

麻耶の声は、途中から涙声に変わっていった。

「転校も・・・そのために・・・。」
「・・・なるほど。でも、よく考えるとうちの学校おかしいよな・・・。」

『え?』

流駆の言葉に、3人は同時に頓狂な声を上げた。

「だってそうだろ?リンドブルムが襲ってきた時だって、確かに恐れはしたけど、
それを撃退した俺達を疎外なんてしなかっただろ?するのが普通なんだよ。それなのに凄いだの何だの・・・。」

全員、二の句が告げない。

「そして、今日の大翼竜なんて、生徒はほとんど気にもしなかったし。」

沈黙。

「正論ね・・・。麻耶さん、あなたが転校先にこの学校を選んだのは正解だったようね。同じ召喚術師だって3人もいるんだし。」

楓が、沈黙を破った。

「はい!・・・でも、こんなこともあるんですね・・・。召喚術師となったとき・・・
いえ、召喚術を使って周りから迫害されたときは、私はどうしてこんなについてないんだろうって思ったんです・・・。」

麻耶の言葉に聞き入る3人。

「私はこの学校に来て、また召喚術を使うことになったら、また迫害されるんだろうと思っていました。
ですが、そこには同じ召喚術師の皆さんがいた。私を迫害するどころか、仲間として見てくれた・・・。
偶然の出会いとはいえ、私、嬉しかったです・・・。」

また、涙声になる。
しかし、その涙は悲しみの涙ではなかった。

『・・・偶然ではない。』
「え・・・?」

口を開いたのは、忘れ去られていたであろうアーク・デーモンだ。

『言っただろう。私と太陽を睨む天使は、共通の目的をもってこの世界へ来た。
互いに召喚術師を見つけられれば、出会ったほうが目的達成は早いはず。
つまり、太陽を睨む天使が彼らを見つけ、私がお前と出会った時点で、彼らとお前との出会いは必然だったのだ。』

また、沈黙。

「必然だろうが偶然だろうが、会えたんだからいいじゃん。ねぇ麻耶さん?」
「・・・そうですね。そうですよね。」

こちらも忘れ去られていたかもしれない炎の言葉に、頷く麻耶。

「・・・ところで、アーク・デーモン。どこに繋がりの手がかりはあるんだ?
召喚術師になったとはいっても、肝心のそれがわからないと手の打ちようがないんじゃ・・・。」

そう訊ねたときには、既にアーク・デーモンはカードに戻っていた。

「やっつけ仕事かい・・・。大体、日曜や祝日を使うったって、限度があるのに・・・。」

頭を抱える流駆。

「・・・あの、流駆さん。メールアドレスを交換していただけませんか?」
「・・・あ、ああ。いいよ。」

麻耶が流駆の様子を気にも留めずに話し掛ける。
その後は、モンコレに関する話は出てこずに各自の帰路についた。












「・・・駄目だ。全然引っかからない。」

パソコンに向かってぼやく流駆。
ダークネスの情報を集めようとしてネット上を検索しているのだが、見つからないのだ。

そんな時、一通のメールが届いた。

「・・・槌田のおっさんからだ!」

そう、送信者は槌田一樹だった。
そしてそのメールには、次のようなことが書いてあった。




ダークネスが作ったカードが、世界中にばらかまかれた。

中には勝手にカードから出てきたものもいる。

このまま放っておけば、世界中は大混乱の渦と化すだろう。

召喚術師の諸君、何とかしてやってくれ。以上。




「・・・本当かよ・・・?そうだとしたらあのおっさん、えらい適当な奴だな・・・。
・・・つーか、どうやって俺のアドレスを手に入れたんだ・・・?」






だが、その数十秒後にそれは本当だということを流駆は悟った。


窓の外でかなりの数、種類のモンスターたちが飛び交っていたからである。




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