TOE小説
「セイファート高校」 第12話
〜そして夜は更けゆく〜




自炊が終了するほんの少し前。


「よっこいしょ・・・。へぇ〜ぇ。ようやく戻って来れたぜ・・・。」


背中に、捕らえたと思われる動物(魔物です)の肉を担ぎながらリッドが歩いてきた。


「あれ、リッド?今まで何やってたの?」


既に(灼熱)カレーを作り終えているファラが、リッドに話し掛ける。


「ファラか。実はな・・・。」




















1時間ほど時を遡る。
ここは、レグルスの丘深部。・・・過去、ノリスが気を違えた場所である。


「・・・いねぇなぁ、カンベラーベア。」


リッドはハンドアックスを片手にリバヴィウス鉱の洞窟内を歩き回っていた。


「やっぱり、丘を下ればよかったな・・・。」


ラシュアンの猟師であるリッドが、カンベラーベアのためにここへ入る方がおかしい。


しばらく歩いていると、遠くから何か音が聞こえてきた。


「剣戟の音?誰かいるのか?」


リッドが音のした方向へ走ると、そこいたのは恐竜の爪を剣で受け止めているマローネ会長。


「会長!?一体何やってんだよ!」
「見れば解るだろう。ダイナソアと戦っているのだ。」


リッドの問いに、マローネはあっけなく答えた。


「しかし妙だな。こいつは明らかにダイナソアより強い気がする・・・。」


と言いながら、マローネは改めて自分の相手の姿を見つめる。


「・・・今解った。こいつはダイナソアじゃない。」
「会長、俺でも一目でわかるのに・・・こいつは、レッドドラゴンだよ。」


リッドが呆れたように言う。
確かに、ダイナソアとレッドドラゴンは一目見れば違いはわかる。それに気付かなかった会長って・・・。


「普通、ここにはレッドドラゴンは出ないんだがな・・・。」


確かにそうだが、ここは演出で。
また、余談だが、レッドドラゴンはダイナソアより数段強い。


「どっちにしても、一人では分が悪いな・・・確か、リッドといったな。手伝え。」
「は!?俺、カンベラーベア獲りにきただけなんだけど・・・。」
「ここにはカンベラーベアはいない。いいから手伝え。仕留められたら半分お前の取り分だぞ。」


リッドは渋々ながらも、レッドドラゴン狩りに参加した。
しかしマローネはやはり強く、相手がレッドドラゴンであっても余裕が見える。


「フッ・・・これで止めだ!」
「あぁっもう!やけくそだ!」


2人の声が重なる。


『竜虎滅牙斬!!』


ダブルで炸裂する秘奥義に、レッドドラゴンは滅多斬りにされた。
その肉を、マローネは慣れた手つきで捌いていく。


「こんなものか。じゃあ約束だ。半分はお前にやろう。」
「・・・ど、どうも・・・。」
「私は地上に戻る。そろそろ日も傾く頃だからな。」


そう言い残し、マローネは去っていった。


「・・・なんか疲れたぞ・・・。」


そりゃ武器がハンドアックスだから。















「・・・って訳。」
「じゃあ、背中のそれはレッドドラゴンの肉?(汗)」


いつの間にか会話に加わっていたキールが、相当呆れたような顔をする。


「大体、レッドドラゴンって食べられるの?」
「さぁ。マローネ会長によれば、『ダイナソアが食えるのだから食えないはずは無い』らしいけど・・・。」


ファラの問いにリッドが答えると、その場にしらけた沈黙が流れた。


「そうだ、もうあんまり時間ねぇから、とにかくこれはどうにかして料理にする。何ならいるか?」
「いや、遠慮しておく・・・。」
「私も・・・料理は完成してるし・・・。」


リッドの提案に、2人は弱々しく、しかしきっぱりと言い切った。
そんな中、メルディだけは物欲しそうな目をしていた。


「ん?メルディ、この肉いるか?」
「はいな!ペスカトーレだけど、この肉も入れてみるよ!」


本当の所は、まだ鬼包丁を振り回したいのかもしれないがまぁ不問としておこう。



















日もとっぷりと暮れた。リッド達5人は円を描くように座る。


「・・・とりあえず、食べよう。まともな料理ができたのはファラだけか・・・。」


しみじみと言うな、キール。


リッド:レッドドラゴンの肉入りの特製肉鍋。灯りが無ければ闇鍋になるかも。いや、なる。
ファラ:カレー。ただし実際はしゃくねつカレー。
キール:当人曰くオムライスの黒の欠片。焦げただけとも言う。
メルディ:レッドドラゴンの肉入りペスカトーレ。何か血腥い。
コリーナ:サンドイッチ。パンに具を挟んだだけ。下拵えも何もなし。


・・・しみじみと言うのも致し方なしか。


「・・・誰から、行く?」
「そんなの聞く必要ないですよ。みんなで自分の作った物を一斉に食べましょう。」


リッドの問いに、コリーナが当然のように言う。


「じゃ、行くよ。せ〜の!」


ファラの掛け声に、一斉に自分の料理を口に運ぶ5人。


「・・・レッドドラゴンって、結構いけるんだな・・・。」
「辛〜い!やっぱりレッドソディのせいだ・・・。」
「・・・こんなの料理じゃない・・・。」
「ワイール!我ながらよくできたな!」
「・・・せめて、焼くぐらいすればよかったです・・・。」


2人は普通に食べられるようで、2人はどうにか食べることができるレベルで、1人は完全に失敗したようである。


「リッド・・・レッドドラゴンの肉はまだ余ってないのか?」
「何だ、キール。さっきは遠慮するって言ったのに。」
「うるさい!だったらこれを食べてみろ!」


キール、必死。
リッドもキールをいじめても仕方ないので、肉を切り分けてキールに渡した。


「・・・で、それをどうするんだ?もう料理している時間なんて無いぞ。」
「解ってる。こうする・・・ファイアボール!」


レッドドラゴンの肉に向かって、力をセーブした火球を飛ばす。


「これで、少なくとも食べられるようには・・・あ、あれ?」


炎が収まると、そこには焦げ目一つ無い肉の塊があった。


「・・・そうか。これはレッドドラゴンの肉だったな・・・。」


そう。レッドドラゴンは火耐性100%を誇っているのだ。


「しょうがないな・・・また指を詰めるギリギリで包丁を使わなきゃ・・・。」
「キール、どうしてウィンドカッター使わないか?」
「そ、そうか!感謝するよ、メルディ。ウィンドカッター!」


風の刃が、包丁で切るよりも遥かに綺麗にレッドドラゴンの肉を切り裂いた。


「・・・そのまま刺身で食べりゃいいんじゃねぇの?新鮮なんだし。」
「ダメだ!いくら新鮮でも危険度の方がよっぽど高い!でも、どうしよう・・・そうだ!メルディ、ライトニングを頼む!」
「はいな!ライトニング!」


メルディが手早く晶霊術を唱えると、超小規模な雷が肉に落ちた。


「・・・まぁ、食べられるだろう。味付けは・・・ファラ、少しカレーを分けてくれ。」
「すっごい辛いけど・・・いいの?後悔しないね?」


キールの夕食は、レッドドラゴンの肉のソテー・カレーソース風味となった。







この後、あまりのカレーの辛さにキールがのたうち回ったのは言うまでも無い。






















「ふぅ・・・ようやく出来たな・・・。」
「あぁ・・・でもまさか、材料を合わせてマーボーカレーが出来るとは思って無かったよ。」


クレス&チェスター。
クレスはカレーの、チェスターは麻婆豆腐の材料を持ってきていたらしい。
そこで、合わせてマーボーカレーを作ったということである。


「2人共、凄いんですね・・・。」
「いやいや、ミントの手際もかなりのものだぜ。」


実はチェスターが来るまでクレスに手伝わせていた、などということは一切口にしない。


「あ、アーチェさん呼んできましょうか?」
「放っとけって。今ごろ、一年生あたりに自分の料理を食わせてるんじゃねぇの?」
「・・・それじゃ、尚更呼んできたほうが・・・。」


クレスがそう言ったその時、遠くで悲痛な叫び声が聞こえた。
・・・アーチェが去っていった方向である。


「・・・どうやら遅かったみたいだな。」
「・・・TP残しておかないとですね・・・。」
「ミント、君も大変だね・・・。」




















最後に、教師陣。


「レム先生、このしぶずしはまた格別じゃのう。」
「もったいない言葉です、校長。」


レム作のしぶずしを食べているのは、校長と教頭、ウンディーネとシャドウにガレノス、、レム本人である。
その他は、ヴォルトが作っているフルーツサンドの完成を待っている。


「・・・カンセイダ。ふるーつさんどモデキタゾ。」


ヴォルトが器用にも、電磁力でフルーツサンドの盛り付けられた皿を運んできた。


「待ってました!いただきまーす!」


シルフが、いち早く手をのばす。
ヴォルトの料理は、完成までに時間が掛かるが、その分味は保証される。


「うん、おいしいわ。流石はヴォルト先生ね。」
「じゃあ、俺様も一つ頂こうかな。」


と言いながらイフリートも皿に手をのばした。


「イフリート先生。あなたが手をのばすと、せっかくの料理が消し炭になりますよ。」


セルシウスが、冷たい声で忠告する。


「じゃあどうしろってんだよ!」
「ワタシニイイアンガアル。いふりーとセンセイ、クチヲアケテクダサイ。」
「ん?こうか?」


イフリートが口を開けると、ヴォルトは再び電磁力でフルーツサンドを浮かべ、その口に放り込んだ。


「・・・ん、美味い!ヴォルト先生、もう一つ頼む!」
「ワカッタワカッタ・・・。」





















料理に失敗したり、食材を忘れたりしなかった生徒たちにとっては、平穏な夜であった。




マローネ会長は・・・ま、語るまでも無いでしょう。


戻る 第11話 第13話