TOE小説
「セイファート高校」 第18話
〜非常扉は1m〜
「なぁ、グランドって何処にあるんだよ!?俺見たことねぇぞ!」
適当な方向へ走りながら、リッドが叫ぶ。
「言いから・・・走れ・・・!あまり・・・時間も無いんだ・・・!」
既に、キールは息が上がっている。走った距離は・・・せいぜい50mか。
「だったら、キールさんが一番前を走ってよ。私たちは道知らないんだから。」
ファラと並んで前を走るリリス。息が上がる気配など微塵も無い。
「キール、大丈夫?」
「無論だ・・・。この程度・・・。」
「・・・どこをどう見たって大丈夫には見えないけどな。」
キールの心配するファラをよそに、皮肉を言うリッド。
「うるさい・・・!無駄話をしてる暇があるなら・・・」
キールの言葉は、突然の轟音によって遮られた。
「な、何!?」
「リリスさん、危ない!」
その言葉に、とっさにリリスは後退する。
その直後、それまでリリスがいたところで落盤が起こり、道が塞がった。
「ありがとうファラさん!」
「気にしない、気にしない!それよりも早くグランドへ・・・!」
と言いつつ、2人が振り返ると、リッドとキールが廊下の先で壁に突き当たっていた。
「リッド!キール!何この壁!」
「さっきの落盤で、今更非常扉が閉まったらしい・・・。どうするか考えてる所だ。」
キールが、非常扉を叩きながら言う。その音からして、厚さは有に1mはありそうだ。
「キール、どいてろ。こんなのは、力ずくでいくんだよ!・・・魔神剣!」
リッドが、取り出したハンドアックスで剣圧を飛ばす。アックスでは「剣」ではないが・・・。
「・・・うわ〜。少し傷がついただけかよ・・・。」
自らの技の効果を見て、ぼやくリッド。
「よーし、じゃあ今度は私が!・・・双憧掌底破っ!」
今度はファラが、掌で練り上げた気を扉にぶつける。だが、ほんの少し欠けた程度。
「キール!考えてないでお前も何かしろよ!」
「僕はこんな効率の悪いことをするつもりは無い。何か手があるはずだ。迂回するとか・・・。」
リッドの声にも、まるで動かないキール。
「迂回路なんて無いよ!何かやりなさい!」
「・・・お、怒るなよ!・・・やればいいんだろやれば!アクアエッジ!」
ファラに強要され、半ば切れたキールが放った水の刃も、あえなく砕け散った。
「ほら見ろ!」
「まぁまぁキールさん、怒らないの。じゃあ今度は私が!雷神拳!」
リリスが、稲妻を纏った拳を繰り出す。結果は同じだった。
「・・・どうしよう。これじゃいつまでたってもグランドなんて行けないよ・・・。」
「だから、迂回路を探そうと言ってるんだ!」
ヤケ気味に叫んだキールに答えたのは、そこにいた3人ではなかった。
「お前は本当に学士か?迂回路なんて何処にも無いぞ。」
その場に現れたのは、黒い髪に黒い瞳を持つ美少年。リオンである。
「な、なんだと!?」
「貴様等は効率も悪い。こういう壁は、こんなバラバラに衝撃を与えても無駄だぞ。」
壁を見ながらリオンが言う。確かに、リッド達が与えた打撃はその位置がバラバラである。
「なんだよ。だったらお前はこの壁を壊せるってのか?」
「フン。一撃では無理だが、そう難しいものではない。」
リオンは、剣を抜いた。細かい装飾がしてある細身の曲剣である。
「あ、シャルティエだ。」
「シャルティエ?」
リリスの一言に反応して聞き返すファラ。
「ソーディアンっていう、喋る剣だよ。リオンさんはその一つ、シャルティエの使い手なの。」
「剣が、喋るのか!?それは実に興味深い・・・。」
学術的興味をそそられたのか、キールの顔が明るくなる。
「いくぞ、シャル。」
「エ〜?全く、坊ちゃんは人使いが荒いんだから・・・。」
気の抜けるような喋り方のシャルティエ。
「・・・ずいぶん軽い喋り方だな。お前の剣は。」
「なっ・・・何だと!?」
リッドの何気ない呟きに、リオンが驚愕する。リリスもかなり驚いている。
「な、なんだよ。俺なんか変なこと言ったか?」
「き、貴様にはシャルの声が聞こえるのか!?」
「あぁ。それがどうかしたのかよ?」
一体何なんだ、といった顔のリッド。
「ソーディアンの声は、ごく僅かな例外を除けばソーディアンマスターにしか聞こえないんだぞ!」
「あ?じゃあ俺は例外なんだろ。やるならやるで早くしろよ。ここだって危ねぇんだから。」
リッドにとって、ソーディアンの声はどうでもいいことらしい。
リオンは舌打ちしながらも、晶術の詠唱に入った。
「ねぇリリスさん?リリスさんにもソーディアンの声って聞こえてるの?」
「聞こえるよ。私もリッドさんと同じ例外の一人なんだけどね。私のお兄ちゃんは例外じゃないけど。」
「その例外っていうのは、どういう基準で決まるんだ?」
ファラ、リリスが話しているところに、キールが割り込んできた。
「ん・・・ディムロスが言うところには、人間には例外なくソーディアンと会話する能力があるんだって。
リッドさんや私、それにマスターの皆さんはその能力がたまたま開花しただけみたい。」
微妙に話の内容が矛盾しているが、それにキールは気付かない。
「ディムロス?」
「シャルティエと同じ、ソーディアンだよ。」
何ぞと話しているうちに、リオンの晶術が完成した。
「・・・デモンズランス!」
リオンがシャルティエを掲げ、声高らかに叫んだ。
すると、宙に巨大な悪魔のシルエットが浮かび、そこから闇の高エネルギーで形成された槍が放たれた。
槍は壁を貫き・・・はしなかったが、その爪痕をくっきりと残した。
「チッ。まあいい、もう一度やれば済む事だ。」
「リオンさん待って!後は私がやる!」
リリスが名乗り出てきた。
「なんだと?僕が信用できないとでも言いたいのか!?」
「違うよっ!そんな大晶術、連発しちゃ疲れるでしょうが!」
「僕を甘く見るな!もう何発かは連続でいけるぞ!」
「リオン君!ここはリリスさんに任せようよ、ね?」
ファラが宥めて、ようやくリオンは静かになった。
「じゃあ全力でいこうかな・・・!サンダーソードっ!!」
突き出されたリリスの両の掌から、デモンズランスに匹敵するほどのエネルギーの束が放たれた。
その一撃で壁は崩壊し、道が開ける。
「す、凄い・・・。」
驚いて腰が抜けているキール。
「道が開けたな・・・。僕は先に行くぞ。」
「待てよ、一緒に行った方がいいんじゃねぇか?」
「他人と馴れ合うのは嫌いだ。・・・行かせてもらう。」
リッドの誘いにリオンはそう言い残し、廊下の向こうへと消えていった。
「・・・愛想のねぇやつ。」
「しょうがないんですよ。リオンさんですから。」
悟ったかのような顔はやめい、リリス。
リリスがそう言った時、再び爆音が響いた。
「まずい・・・急いだ方がいいな!」
リッドは、リオンのあとを追うようにして走り出す。
他の3人も、キールもどうにかその後に続いた。
あんまり、ギャグじゃないかも・・・。
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