TOE小説
「セイファート高校」 第19話
〜非常扉を破れ〜
非常扉を無理矢理砕いたリッドたちは、とにかく廊下の奥の方へと走っていた。
「前話でも訊いたけどよ、グランドって何処にあんだよ!?」
「知らない・・・!同じ事を・・・何度も言わせるな!」
リッドとその背中にいる息も絶え絶えなキールが言い争いを始めた。
「ちょっと、喧嘩してる場合じゃ・・・!」
「ファラさん、あれ!」
後ろを走っていたファラが2人を諌めようとした時、リリスが廊下の奥を指差した。
「あれ・・・人影じゃないかな!?」
「・・・ほんとだ!よし、合流しよう!」
その姿を確認するや否や、ファラはいきなりスピードをおよそ2倍に吊り上げた。
それまでもかなりのスピードで走っていたのに。
「ファラさん、待ってよ!」
リリスもまた、同等のスピードで走り出した。
それを呆然として見つめるリッドとキール。
「・・・キール、お前を置いていけば俺も追いつけなくもないかも知れないんだけどな・・・。」
「お前、そんなに薄情な奴だったのか?」
そのキールの言葉に溜息をついたリッドは、前方の女子2人に追いつくべくこちらもスピードを上げた。
どいつもこいつも、人間離れしている(キールは別の意味で。)
リッドが走り出す頃には、ファラは人影の所へとたどり着いていた。
「すいません、グランドは・・・あれ、クレス先輩!?」
「ファラさんか!よく無事だったね!」
そう、リリスが見つけた人影はクレスだったのだ。その横にはミントと、ファラは知らないがスタンがいる。
「それにミント先輩に・・・えっと・・・誰ですか?」
「あ、俺?俺はスタン・エルロン。ラディスロウからの転校生さ。」
スタンが自己紹介を終えたところで、リリスが走り寄って来た。
「おーリリス!お前も無事だったか!」
「お兄ちゃん!?・・・と、クレスさんにミントさん!」
リリスは面識があるのか、クレスたちの事を先輩付けで呼ばない。
ここでどうにか、リッドとキールも追いついた。
「ところで、クレス先輩やミント先輩ならグランドの道のりを知ってますよね?」
ファラが2人に訊ねると、2人は小さく首を縦に振った。
「まぁ、一応・・・ね。」
「その道のりが、厳しいんですよ・・・。」
「厳しい・・・って、どういうこと?」
スタンが訊ねる。クレスはゆっくりと話し始めた。
「リッド君たちは、1年生の教室からここまで来るのに分厚い非常扉を破っただろう?
あれが・・・そうだな、ここからなら連続で5枚はあるかな。あ、後いきなり天井が崩れてきたりするし。」
平然と喋るクレスに対し、げんなりした表情を見せるその他(ミントは除く)。
「で、でもこれだけの面子がいれば大丈夫だろ?なぁ、クレス?」
「スタン君・・・。そうだね。全員がそれぞれ1回ずつ最強の技を打ち込めばどうにかなるかな・・・?」
とんでもないことを言い出すクレス。
「イケるイケる!そのぐらい大丈夫だって!」
相変わらず先を考えないファラ。
「とにかく進みませんか?ここももう・・・危ない気がします・・・。」
「その通りだな・・・。よしリッド、行け!」
「・・・お前なぁ・・・。」
大きく溜息をつくリッドであった。
「非常扉だ!」
「じゃあまずは私から!はぁぁ・・・獅吼爆砕陣!」
獅子を象った闘気がファラの掌底から放出される。
非常扉は、壊れるか壊れないかの狭間にある。
「砕くわよ!サンダーソード!」
リリスが続けて技を放つ。その一撃で、扉は木っ端微塵になった。
「ヒュ〜・・・リリス、お前また腕上げた?」
「もっちろん!お兄ちゃんになんか、負けないんだから!」
スタン、唖然。
「また扉か・・・!」
先を行くリッドが呟きながらハンドアックスを構える。
「・・・やべ・・・(汗)」
リッドが冷や汗をたらすのもしょうがない。
先ほどの魔神剣で、使い込んできたハンドアックスはもはやボロボロ。2度と使えないだろう。
「リッド君、これを!」
と、クレスが一振りの長剣を放った。慌ててキャッチするリッド。
「サンキュ、クレス先輩!」
「はは。その呼び方しっくり来ないし、クレスでいいよ。」
と話しているが、次の瞬間2人とも目が真剣になった。
「・・・キール、お前も手伝えよ。あれで行くからな。」
「あれ?・・・あれか。解った。」
「ちょっと待った!俺も混ぜてくれ!」
スタンが走り寄って来た。
「頼むぞ、ディムロス!」
「任せろ、スタン!」
手持ちの剣・・・ソーディアン・ディムロスに語りかけるスタン。
リッドはもちろん聞こえているのだが、苦笑するに留める。
「せーの!」
『紅蓮剣(×4)!』
ものすごい炎が非常扉を包んだ。いかに耐火構造とはいえ、技そのものの衝撃もある。扉は崩れ去った。
「よっし・・・って、3枚連続!?勘弁してくれよ・・・!」
天を仰ぐスタン。その目の前には、平然と立ちふさがる非常扉。
「どいてくれスタン君!ここは僕が!」
クレスが扉の前に立つ。その身からは、かなりの闘気が立ち上っている。
「最終奥義!冥空斬翔剣!!」
巨大な剣閃を残しつつ、連続で3回斬りつける。扉が悲鳴を上げた。
「まだか!去年はこれ1発で砕けたのに・・・。」
「後は俺がやるぜ!必殺、皇凰天翔翼!」
スタンが巨大な火の鳥となって、非常扉を突き破った。その先で、4枚目にぶつかっている。
「いてて・・・。今度はリッド、お前の番だろ?」
「・・・ったく、しょうがねぇなぁ・・・!」
リッドが剣を構える。その瞬間、リッドの周りに光の地平線が発生した。
「これで・・・終わりだぁぁぁ!極光剣!」
リッドの身体の内に眠る極光が刃となり、非常扉を一気に切り裂いた。
「凄いじゃないかリッド君!何で初めから使わなかったんだい!?」
「・・・これ、疲れるんだよ・・・。」
既に座り込んでいるリッド。しかしその先には、最後と思われる非常扉が立ちふさがっていた。
「・・・キール、次はお前だぞ。」
「ぼ、僕!?あんな扉、晶霊術じゃ破れるわけないだろう!」
「ありったけの術ぶつけろよ。そうすりゃなんとかなんじゃねぇか?」
無責任である。
「・・・ええい、やってやる!エクスプロード!」
大爆発。しかし、扉は破れない。
「・・・サンダーブレード!」
電撃の剣も、傷一つつかない。
「・・・ファラ!雷閃拳でいくぞ!」
「うん、解った!」
キールの詠唱に合わせてファラが技を放つも、効果が無い。
「・・・お手上げだ!僕には無理なんだよ!」
「仕方ない、今年は彼女には頼らないと決めてたんだけど・・・ミント、頼めるかな?」
「はい、任せてください。」
すると、ミントは何やら法術を唱え始めた。
「クレスさん、法術に攻撃法なんて無いんじゃ・・・?」
「・・・見てれば解るよ・・・。」
ミントは、ゆっくりと手を前に出した。
「・・・ピコハン。」
その声と同時に、虚空からおもちゃのハンマーが表れ、非常扉を叩く。
すると、なんと扉はあっけなく砕け散った。クレスを除く一同、呆然。
「皆さん、行きましょう。グランドは近いですよ。」
そのミントの言葉にすぐ反応できたのは、クレスだけだった。
他の面々は、未だに呆然としている。
「皆・・・。これがミントの怖い所なんだよ・・・。」
クレスは力なく呟き、ミントの後について歩き出した。
リッドたちも、ふらつきながら歩き始めた・・・。
「・・・リッド、ファラを怒らせても彼女だけは怒らせるなよ・・・。」
「・・・解ってるよ・・・。」
聞こえないように用心しながら呟く2人であった・・・。
初めて、主人公3人が顔を突き合せました(笑)
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