TOE小説
「セイファート高校」第21話
〜クラス会議〜
「ねぇ、ちょっとこっちに注目してくれない?」
ある日の1ー2の教室。
放課後になった直後に、リリスが黒板の前に立って言った。
「なんだよ一体。」
「早く帰りたいんだけど・・・。」
クラスから起こる不満の声。リリスはまるっきり気にしない。
「ごめんね。実は、運動会があるらしいの。これから、その競技に誰が出るか決めたいんだ。」
クラス内にどよめきが生まれる。まぁ、年内予定などは当然配られてないから当然か。
「こっちで割り振っても良かったんだけど、せっかくだから皆で決めたいでしょ?」
まだ乗り気でない一部の生徒を宥めているうちに、キールが教室を出ようとする。
「キールさん、どこ行くのよ!?」
「悪いが、僕は適当に割り振っておいてくれ。どうせその日は学校には来ないだろうしな。」
流石は生粋の運動嫌い。
「あ、そう?じゃあ一番過酷な競技に割り振っておくわ。
その上で当日は同じラシュアン出身のリッドさんとファラさんに力ずくで引きずってきてもらうけど?」
キール、硬直。その横では、リッドとファラが任せろといわんばかりに笑っている。
「一応残ってよ。各競技の成績優秀者には何か賞品があるらしいし。」
言葉はやんわりしているが、口調は有無を言わせない。キールは、渋々ながら席に戻った。
「リリスぅ。メルディ質問があるけど・・・聞いていいか?」
「え、何?」
あらぬ方向からしたメルディの声に、びっくりするリリス。自分の席でなく、コリーナのすぐ傍にいた。
「今言ってた賞品って何か?」
同等の意見をもつ者はいるらしく、同じような質問が立て続けに出てくる。
「賞品について?うーんと・・・決まってる競技もあれば、記録に応じて賞品ランクが上がる競技もあるわね。」
生徒会から配布されたであろうプリントに目を落としながら喋るリリス。
「中身も、それこそ千差万別よ。ガルドだったり、薬草セットだったり、グミセットだったり。
まだ決まっていないなんて競技もあるくらいだから。」
次第に、クラスの生徒の顔が真剣になっていく。
「言い忘れてたけど、この運動会って学年対抗なのよ。1年対2年対3年。あ、教師連合もあるから計4チームね。」
「マジかよ?2年はクレス先輩やミント先輩、それにスタン先輩もいるんだろ?3年なんて会長がいるし・・・。」
もうやる気を無くしているのはリッド。リリスは完全無視。
「後、優勝した学年には賞品として「黄金のブッシュベイビー像」が各クラスに送られるみたいね。
会長に聞いた話だと、オークションに出せば普通のブッシュベイビー像の約2倍の値段で落札されるんだって。」
各クラス、という言葉が決定的だった。
一気にクラスの士気が高まり、競技決めに協力的な姿勢が整った。
「まぁ勝った後のことはこれぐらいにして、早速競技決めに移ろう!
じゃ、まずどんなものがあるかと言うと・・・って、リオンさん!少しは手伝って!」
それまで他人の振りをしていたりオンだったが、渋々書記として働くこととなった。
なにやらぶつぶつ言っているが、リリスとファラの一睨みでそれも途絶えた。
まずは決めやすい、100m走。
「誰か、やりたい人?因みに賞品は・・・タイムに応じるって。」
数人が手を挙げる。その中には、リッドも入っていた。
「あれ?リッド100m走やりたいの?」
「これをやって、もう後はやりたくないんだ。面倒だし。」
あくまで消極的なリッド。だが、次にファラが喋る前にリリスが口を出してきた。
「あのね、1競技出たからって他の競技に出なくていいということにはならないから。誰もいない場合は、推薦だし。」
リッド、手を引っ込める。結局、適当な人数が決定した。
「じゃあ次は・・・2人3脚ね。1位の賞品が好きな指輪。」
指輪、と聞いて女子生徒が手を挙げる。
「あ、もちろん2人1組で手挙げてね。」
リリスが付け加える。それでも、周りにいる適当な生徒を無理矢理ペアにして手を挙げる。
「指輪か・・・。ねぇリッド、私と組んでくれ・・・」
「やだね。俺指輪なんて興味ねぇもん。メルディとでも組めばいいんじゃねぇか?」
「はぁ・・・やっぱりね。じゃあメルディは・・・。」
メルディの方を見るファラだが、既にコリーナとペアを組んでいる。
「ん〜・・・あ、リリスさん!」
「何?質問?」
「そうじゃなくて。私とペア組んでくれない?」
唐突な言葉。しかしリリスはあっけなく、
「いいよ。」
と、承諾した。
「うーん、多過ぎるなぁ・・・。まぁいいか。じゃあ次、借り物競争。これは代表1人ね。」
「借り物競争だって!?子供じゃあるまいし・・・。」
呆れるキール。賞品は未定らしい。
「はい、それ私やりたいです!」
声高らかに叫んだのは、チェルシー。
「・・・そんなに叫ばなくても。他には誰もいないね?じゃチェルシーさんで。」
リオンが、黙々と黒板に書き込む。
「じゃあ次に、騎馬戦。賞品は相手の騎馬の撃破数に応じるって。あ、4人1組ね。」
何人かで話し合う姿が見られる。
「ねぇリッド、キールとメルディと4人で出ない?」
「はぁ?んな途中で崩れそうな騎馬になんか乗りたくねぇよ。」
これまた渋るリッド。だがそれを見たりリスが。
「リッドさん、賞品の中にはベアの肉1年分なんてのもあるみたいだけど?」
その瞬間、リッドの目に闘志の炎が燃え上がった。
「やるぜ、みんな!」
「じゃあその4人は決定ね。後は・・・。」
他の競技も、大方こんな感じで決定していく。
「一応これで全部ね。じゃあこれで提出するから。」
「あ、最後に質問なんだが・・・運動会の詳細な日程はどうなっているんだ?」
教壇からリリスが降りようとした時、キールが訊ねた。
「えっと・・・あれ?書いてない・・・。リオンさんのプリントにない?」
「僕のか?・・・何だって!?正気か!?」
「どうしたんだよ?」
リオンの困惑ぶりに、怪訝な声を出すリッド。
「・・・落ち着いて聞け。運動会は明日だ。」
1−2、凍りつく。
「運動会だからエルヴンブーツやジェットブ−ツの使用が認められている、ともある・・・。後は何も無いぞ。」
「な、何でもっと早く教えてくれなかったんだよ!」
「そう言われても、私たちもこのプリントをもらったのは昼休みだし・・・。」
クラス中が、沈黙に包まれる。
「と、とりあえず決めるべきことは決めたから・・・私、生徒会室に用紙を提出してくるね。」
「ぼ、僕も行く。こんな教室になんていられるか・・・。」
役員2人は、さっさと出て行った。
残された生徒たちも、まばらに帰りだした。全員、気を滅入らせて・・・。
彼らはまだ知らない。どのような運動会になるのかを。
次回から、運動会編始まります。多分(死)
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