TOE小説
「セイファート高校」第24話
〜借り物は騎馬(違)〜
「続いての競技は、借り物競争です。代表者、集まってください。」
放送が響き渡る。
「じゃあ皆さん!行ってきます!」
チェルシーが1−2の面々に敬礼し、グランドへと走っていった。
「・・・なぁキール。」
「何だ?」
茶をすすっているキールに、同じく茶をすすっているリッドが話し掛ける。
・・・どこから出した?つーか、ジジくさいぞ?
「ナレーションは黙ってろ。・・・この借り物競争、どんな物を借りに来ると思う?」
「何言ってるの。普通に、帽子とか靴とかでしょ?疑い過ぎだって。」
ファラが割り込んできた。
「ファラ・・・本当にそう思うか?今までの競技を見て、本当にそう思えるのか!?」
「大丈夫だよ、イケるイケる!」
ファラの言葉に、言葉を失うキール。
「・・・まぁ俺が出る訳じゃねぇからいいけど・・・。」
「リッド、次は騎馬戦だな。頑張るな!」
いつの間にかすぐ傍にいたメルディに言われ、表情が硬くなる。
「そう言えば・・・勝てばベアのにく1年分!」
そっちしか頭にないか、やはり・・・。
「あ、借り物競争始まるよ!」
「どれ?・・・おいおい、全員一度に走るのか?無茶だぞ・・・。」
キールが言うように、各クラスの代表者が全員同時にスタートラインに立っていた。
借り物競争というよりも、マラソンの雰囲気に近い。
「では位置に着いて・・・よーい、スタート!」
スタート、と同時にフォッグがバーニングフォースを天目掛け発射する。
一斉に走者は走り出し、お題が書いてある紙が散乱しているエリアへと向かう。
「えっと、お題は・・・えっ?(汗)」
チェルシーはお題の紙を見た瞬間、固まってしまった。
他の参加者達も、長さはともかく硬直する。
「こ、こんなの持ってこれるか!」
「くそっ、別の紙を・・・!」
お題の紙が散乱しているエリアが、凄い騒ぎとなっている。
「・・・一体、何が書いてあるってんだ・・・お?」
リッドのところに、お題が書いてある紙が一枚飛んできた。
「どれどれ・・・は?(汗)」
「何?リッド、何が書いてあったの?」
リッドが手にしている紙・・・そこに書いてあったお題・・・それは、「ふゆトマト」だった。
「ふゆトマト・・・氷晶霊の山だったな?」
「あぁ。セルシウス先生が栽培しているトマトだ。」
「だけど先生が今この場に持っている訳がないから・・・取りに行くってことか・・・。」
4人は、この競技に参加したチェルシーの不運を哀れんだ。
「無理があるが、不可能ではない。いやでも取りに行かせる」・・・そういうお題ばかりが用意されていたのだ。
「時間が押している。各自、次に拾った紙で決定としろ。納得出来ないなら棄権するんだな。」
ゼクンドゥスの声が響く。その声に反応し、それぞれが紙を拾う。
「えーっと・・・リバヴィウス鉱?」
チェルシーが引いたお題は、本人が言うようにリバヴィウス鉱であった。
「・・・すいませーん!リバヴィウス鉱って、どこにあるんですかぁ?」
とりあえず近くにいた、マローネ会長に尋ねてみるチェルシー。
「リバヴィウス鉱か。インフェリアのレグルスの丘という所にある。リッドという1年が詳しい場所を知ってるはずだ。」
「リッドさんがですか?解りました、ありがとうございますぅ!」
説明をリッドに押し付けたな、マローネよ。
リッドに場所を聞いたチェルシーは、転送装置へと向かっていった。彼女のみならず、参加した全生徒が。・・・帰って来れるのだろうか。
「・・・帰ってくるまで待つのか?」
呆然としながらリッドが呟く。全生徒を待っていたら、日が暮れるどころか3日経ってしまう。
「待ってられないので、次の種目行っちゃいましょう!騎馬戦です!」
この運動会のメインイベントらしい騎馬戦。かなりの出場者がいた。
「うひゃ〜。ひでぇなこりゃ。」
「ホント・・・想像以上だね・・・。」
リッドとファラが、その人数の多さに圧倒される。
「リッド君?君たちも騎馬戦に?」
その声に4人が振り向くと、そこにはクレス、ミント、アーチェ、チェスターの4人がいた。
「あ、クレスさん。クレスさんも参加するんですか?」
「そーだよ!手加減しないかんね!」
クレスではなく、アーチェが噛み付いてくる。
「んな大袈裟な。騎馬戦だろ?」
「うん、騎馬戦なんだけど・・・気をつけてね・・・。」
妙にやりにくそうな表情を浮かべるクレス。
「・・・リッドも参加するのか・・・。」
遠くからリッドとクレスが話しているのを見つめているのは、スタン。
「ただの1年じゃない。あんなの軽いでしょ。」
「いや、あいつはかなり腕も立つ。・・・もちろん、クレスもな。」
「剣の腕がでしょ?どうでもいいわ。いい?落ちたら承知しないからね!?」
それだけを言い残し、ルーティは去ろうとする。
「・・・ま、騎馬戦だし、そんなに肩張る必要もないかな。」
と、スタンが考え直した時、放送が始まった。
「では、騎馬戦のルールを説明します。4人1組の騎馬を組み、武器を振るって戦ってもらいます。
使用武器、技、術は自由となっていますが、例によって時間停止は禁止とします。」
1年生と、元ラディスロウ校の生徒の動きが止まる。
「武器がないという生徒は本部まで来て下さい。籤引きを行い、使用する武器を決定します。」
2年、3年はすっと本部まで動くが、やはり1年、そしてラディスロウ出身の生徒は動けない。
「・・・リッド、そういえば武器は?」
「え?・・・あっ、やべ。ハンドアックス壊れてたんだった・・・。本部行って来る。」
とぼとぼと本部に歩き出すリッド。
「・・・大丈夫か?あいつ。」
「・・・微妙だなー・・・。」
一方、同じく焦っているスタン。
「お、おい、やばいぞ。武器、取ってこなきゃ・・・。」
『落ち着け、スタン!お前の腰にある物は何だ!』
慌てるスタンをどやしつけるディムロス。
「あぁ、そ、そうだった・・・。」
「ったく、大丈夫なの?」
呆れた感じで、ルーティが声をかける。
「だ、大丈夫に決まってるだろ!ハッハハハ・・・。」
思いっきり乾いた笑い声であった。
と、ここで籤を引きにいった面々が戻ってきた。
「リッド、どんな武器だった?」
「そ、それが・・・強力すぎて怖い・・・。」
リッドが引き当てた武器・・・それは、リバヴィウス鉱で作られた剣、ラストフェンサーであった。
「・・・リッド、殺すなよ?」
「自信ないぜ・・・。」
「ここで、心配している生徒のために連絡します。酷い傷を負ったとしても、ウンディーネ先生が全面的にバックアップをしてくれるので、気にしないで下さい。」
むごいぞ、司会。
「では、時間です。それぞれ騎馬を組み、スタート地点へと集まってください。」
ぞろぞろと、不安定なバランスで騎馬がやってくる。リッドたちも並ぶが、その横にいたのは。
「・・・あれ、リリス?」
「リッドさん、私も参加することにしました。お手柔らかに。」
おたまを持ったリリスは笑みを浮かべているが、その実力を知っているリッドの顔は引きつっている。
そして、それ以上に顔を引きつらせ、脂汗を流している生徒がいた。
「・・・リリスもいたのか・・・(滝汗)」
「あっ、お兄ちゃんだ。おーい!」
スタンの様子など露知らず、無邪気に手を振るリリス。
スタンの腕は肩ぐらいまでしか上がらなかった。その下では、騎馬になりながら溜息をつくルーティ。そして後ろにフィリアと、名も無きエキストラ。
「今年は、荒れそうだな・・・。」
「クレス、しっかりやれよ!」
騎馬の下から、スタンを励ますチェスター。
その隣にはミント、そして騎馬の前にはアーチェがいる。
「・・・今年の騎馬戦は、楽しめそうだな・・・。」
遠く離れた地点から、愛剣を片手に生徒を見回すマローネ会長。
こちらはレイス、ロエン、そしてウッドロウを騎馬にしている。
そして。
「・・・僕は、何でここにいるんだ?」
名も無きエキストラを騎馬にして、リオンが立っている。
「まぁいい・・・。勝って、マリアンへの土産話にしてやる。」
・・・闘志を燃やす理由は人それぞれだが、大乱闘(やや違)が始まろうとしていた。
ラストフェンサーがあるなら、どうしてチェルシーに教えてやらなかったのでしょうか?(笑)
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