TOE小説
「セイファート高校」 第4話
〜授業風景〜


入学式から一夜空けて。今日から本格的に授業が始まる。


「俺が勉強・・・未だに信じられねぇ・・・。」


と、リッド。


「お前はどうせ寝るだろう。僕だって高校の学習過程は既に終えているというのに・・・。」


こちらはキール。確かに、元ミンツ大の学生ならそれは当然である。


「まぁまぁキール、解らないようなことがあったら困るでしょ?」
「解らない事だって!?僕に高校までの学習過程の中で解らないことなんて・・・!」
「ないのか?」


ファラの言葉に逆上したかと思ったら、メルディの言葉には黙り込むキール。


「・・・魚の小骨取りは、解らないが・・・。でも、やったことないんだ!仕方ないだろう!」
「魚の小骨取りを教える高校って、どんな高校だよ・・・。」


ますます逆上するキールに、冷静に突っ込むリッド。


「メルディはどう?勉強は。」
「ん〜、やってみないと解らないな〜。晶霊学なら大丈夫だけどな。」


既にキールに見切りをつけてのファラの質問に、いつものような調子で答えるメルディ。
晶霊学が得意とは、この学校の晶霊学の先生に家庭教師を受けていただけのことはある。


会話はここで中断された。一時間目が始まろうとしていたのだ。




少し、リッドたちの授業風景を覗いてみよう・・・。





一時間目、数学。担任のセルシウス先生である。


「・・・で、こうなる、と。じゃ、この問題やりなさい。制限時間3分ね。」


さくさくと授業を進めている。進行速度は速いが的確に的を捉えている進め方である。


「・・・zzz・・・。」
「・・・寝てる人、起きなさい。」


早々に寝てしまったリッドを起こそうとするセルシウス。
しかし、全く起きる気配はない。


「・・・リッド、ね。起きなさい?」


二度目の呼びかけにも答える気配無し。


「・・・アイスニードル。」


ひゅひゅひゅっ


「わぁっ!なんだよいった・・・い・・・。」
「リッド?授業中に寝ないのは基本よ?次はフリーズランサーだからね?」


そういうセルシウスの顔は笑っていない。
リッドも引きつった笑みを浮かべて返事をした。


ファラも慣れない問題に苦戦しているが、キールとメルディはもう解き終わったようだ。


「じゃ終わった人に黒板でやってもらいましょう・・・キール問1、メルディ問2をお願いね。」
「ふん、この程度の数式、わざわざ黒板でやることもない・・・」
「フリーズ・・・」
「ごめんなさいやりますですハイ(汗)」


セルシウスにキールが脅されているうちに、メルディは問2を書き上げた。


「じゃあ遅いキール君はほっといて、先に問2を見ましょうか。」
「・・・・・・。」


キールは反論しようとしたが、フリーズランサーが怖いので止めにしたようだ。

メルディの解答はほぼ完璧な出来であった。


「・・・キール、問1は出来た?」
「当たり前だ!出来ないわけがない!」


半ばキレているキールは、問1の解答を黒板に書くと足早に席へ戻った。
この解答も、完璧なものであった。


「・・・よく解るですね、キールさん。」


キールの隣に座っているコリーナが小声でキールに言う。


「よく解る、だって・・・!?不等式なんて、小中学過程でやるものだろう!?」


・・・ここは、ほんとに高校なのだろうか・・・?
学校に通ったことのないリッドやファラ、コリーナはある意味しょうがないのかもしれないが・・・。




















二時間目、メルニクス語。
ウンディーネ先生の授業である。

この授業は、インフェリア人にとっては外国語の、セレスティア人にとっては国語の授業となる。

「では、この文の意味を・・・ファラさん。」
「はい!・・・・・・。」


勢いだけのファラ。


「ファラ、オージェのピアスしてるんじゃないのか?」
「してるけど・・・それでも難しい文なんだよ?」


この学校でオージェのピアスをつけているというのは、語学に有利に働く。
ただし、学校の売店で200ガルドほどで売っているので、誰でも手に入れられるのだが。


「・・・すいません、解りません・・・。」
「そうですか・・・。では、この文をとりあえず発音してみてください。教科書を見ながらで構いませんよ。」


ウンディーネに言われ、ぱらぱらと教科書をめくるファラ。


「えっと・・・What time is it now?
      (What   time    is   it  now?)


「じゃあ、もう一度意味を考えて下さい。一度発音すれば解るでしょう?」
「・・・わかった、『今何時ですか』ですね!?」
「その通りです。皆さんも、発音というのは大事なものなのでしっかり身につけてくださいね。では次の文章・・・。」

難しくも何ともない文章である。メルニクス語である以上しょうがないが。


この授業では、リッドはもちろんのことメルディまでもが眠そうな顔である。
メルディにとって、いやセレスティア人にとって、この授業は意味がほとんどない。
逆に、インフェリア人にとっては一つの壁になりうるだろう。流石のキールも辞書を片手に苦戦している。

いつしか、クラスの半分が眠りの淵に落ちていた。
しかし、ウンディーネは起こそうとしない。


「みんな、ちゃんと起きて授業受けたら?」


ファラが呼びかける。


「あ、いいですよファラさん、無理に起こさなくても。」


そう言ったのは、ウンディーネである。


「でも!」
「いいんですよ。起きてなくて解らないのは自業自得ですからね。」


そりゃそうだが、見方を変えれば職務怠慢である。




















3時間目、情報処理。パソコンを利用した授業である。
担当はヴォルト先生。


「・・・なぁキール。俺パソコンなんて触ったことないんだけど・・・。」
「安心しろ。僕だってない・・・。」


この授業は流石に全ての生徒が初体験であった。
あちらこちらで悪戦苦闘している。


「ヴォルトせんせー!ここどうすればいいんですカー?」


生徒の一人がヴォルトを呼ぶ。


「ミセテミナサイ。」


事務的・・・というよりは機械的に作られた音声で話すヴォルト。


「ココハ・・・ソコノきーヲウチナサイ。ソウスレバイイハズデス。」


口頭のみで説明すると、ヴォルトはさっさと行ってしまった。
常に放電しているヴォルトがパソコンに触るとえらいことになるためである。




「キールぅ。わかんねーんだけど・・・。」
「メルディもわかんないよ・・・。」
「私もわからないよ。」
「私もです・・・。」


リッド、ファラ、メルディ、コリーナが一斉にキールに聞く。
しかし、流石の彼も使い慣れないものには苦戦している。


「ちょっと待ってろ。もうちょっとで課題のプログラムが完成するから・・・。」
「いっから見せろよ、な。」
「ちょっ、リッドやめろ・・・っ!」


リッドがキールの画面を無理矢理見ようとする。


「離れろ・・・あっ!!」


リッドともみ合いになっていたキールの手が、ついマウスで左クリックをしてしまった。
さらに悪いことに、マウスのポインタは「新規作成」のところにあった。


「そ、そんな・・・うそだ・・・。」
「キ、キール・・・悪かった・・・。」


このプログラム作成ソフトにはアンドゥ機能がついている。
しかし、落胆モードに入っているキールはそれに気付かず、ひたすらにプログラムを打ち直していた。
そして、アンドゥ機能に気が付いたのはプログラムの再打ち込みがほとんど終わった頃であった・・・(涙)





続きます。



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