「起立!礼!」『さよーなら!』
「気をつけて帰ることね。」
まるで小学校のような挨拶が済む。
リッドたちのクラスの授業が終わり、たった今放課後となったのだ。
「キール、まだ保健室にいるよね・・・心配だなぁ。」
ファラが何かを言いたげな雰囲気でリッドを見る。
「おおかた、ファラが保健室まで引きずっていったから、貧血に加えて怪我でもしたんじゃねーの?」
「何それ!?失礼だなぁ!」
リッドの茶々に、ファラがむくれる。
一応断ってはおくが、ファラがキールを引きずっていったというのは事実である。
「ファラ、キールの様子見に行くんだな?メルディも行くよ。」
「あ、私もいっしょに行っていいですか?」
寄って来たメルディとコリーナが話し掛ける。
いっしょに走った、という訳で友情が芽生えたらしい。それぞれ歌と踊りが好きという面でも。
「じゃあみんなで行こう。私にメルディにコリーナにリッド。」
「を、をい、俺も行くのか?」
リッドは半分驚き、半分面倒臭がっている。
「当たり前でしょ?それでも幼なじみなの!?」
「・・・へいへい、解りましたよ〜だ。行きゃーいいんでしょ。」
リッドも渋々承諾し、4人で保健室へと向かうこととなった。
「失礼しまーす。キールは・・・キール・ツァイベルはいますか?」
「声でけぇよ。」
保健室に入るなり、大声で叫ぶファラ。
「ファラ・・・か?」
「キール?どこにいるか?」
メルディが保健室を見渡す。
所々に怪しいホルマリン漬けが置かれている以外は普通の保健室である。
キールは、どうやらベッドに横たわっているようだった。
「キール、大丈夫・・・どうしたのその格好!包帯ぐるぐる巻きじゃない!」
「・・・まるでミイラです・・・。」
キールの姿を見て、唖然とする4人。
キールは、顔が見えないほどに包帯を巻かれていた。
「どうしたんですか?」「理由聞きたいよ。」
メルディ、コリーナが同時に喋る。
キールは、一体どうしてミイラになってしまった(やや違)のか?
少し時を遡り、キールが倒れた直後。
「どうすんだ?倒れちまったぞ。」
「私、保健室まで運んでくよ。」
そう言って、ファラはキールを担ぎ上げた。
・・・しかし、担ぎ上げたのは足である。肝心の胴体、首はまだ地面と接触している。
そして、ファラはそのまま歩き出した。キールを引きずったまま。
「ファラ、保健室の場所解るのか?」
「大丈夫だって。イケる、イケる!」
もっと他に気付くべきことがあるだろう、リッド、ファラ・・・。
そして、ファラはキールを引きずったまま保健室の前までやってきた。
「ふぅ・・・ようやくたどり着いた。」
「・・・ファラ・・・ここまで来れば・・・後は一人で大丈夫だ・・・。」
ファラの足元から、キールのか細い声がした。
実は少し前から意識は戻っていたのだが、痛くて喋れなかったようだ。
「大丈夫?」
「任せてくれ・・・(これ以上余計な怪我を負いたくないんだっ!)」
「解った・・・じゃあね。」
ファラは、去っていった。
「さて・・・。」
キールはファラがいなくなったことを確認して、保健室のドアをノックした。
「失礼する。すまないが休ませてもらえないだろうか。貧血と怪我で・・・。」
と、キールがそこまで言ったとき。
ドドドドドドドドド!
保健室の奥から、4人の看護婦らしき人物が走ってきた。
「な、何だ!?」
突然の出来事に、驚くしかないキール。
その直後に、唐突に4人の看護婦に持ち上げられて、ベッドに運び込まれた。
「何するんだ・・・おい!ちょっと!」
しかし、看護婦たちはそんなキールの声に全く耳を貸さず、いきなり傷を消毒し始めた。
それがすんだと思ったら、今度は包帯を全身に巻きつけ始めた。もちろん、ひどい擦り傷がある顔から。
「・・・・・・!!(息が、息が出来ない!)」
もはや喋ることも出来ないキール。
程なくして、包帯は巻き終わった。
「危なかったですね。」
「危うく死ぬところでした。」
「・・・・・・!(あんた達に殺されるっ!)」
キールは、どうにか呼吸を確保しようとしているとき、そんな声を聞いた気がした。
「・・・とまあ、こういう出来事があったんだ・・・。」
話を聞いていた4人、言葉がありません。
「・・・で、でも一応傷の消毒はしてくれたんでしょ?よかったじゃない。」
「いいわけあるか!消毒の仕方は滅茶苦茶、包帯は見ての通り。来ない方がよかったよ!」
「・・・ところでよ・・・。」
怒り出したキールを横目に、リッドが話し出す。
「その、看護婦はどこに行ったんだ?見た感じ誰もいなそうだけど・・・。」
「・・・私たちはもう帰る、後は委員会がやってくれる、といって帰ったよ。」
と、キールが言ったとき、保健室のドアが開いた。